ここへ来たから
《サイド:御堂龍馬》
…さて、と。
走り去って行った翔子の後ろ姿を見送ってから残された書類に視線を落としてみる。
ここにあるのは翔子が理事長に提出した書類だ。
『天城総魔に関する報告書』
今は僕の手元まで回ってきているけれど、
ここに書かれているのは翔子が天城総魔と戦ったあとまでの情報になる。
一応、真哉が提出した昨日一日の情報も後半に記されてはいるけどね。
大半は翔子が調査した内容になる。
だから、と言って良いかどうかは分からないけれど。
今日の出来事はまだ知らない。
真哉が試合をしたことは知っているけれど。
報告は受けてないからね。
試合の結果はまだ聞いてないんだ。
…どんな内容だったのかな?
どちらが勝ったのかすら聞いてないけれど、
答えは聞かなくても分かってる。
翔子がここへ来たからね。
だから分かってしまうんだ。
試合の準備の為に翔子は来た。
その事実で真哉が敗れた事は分かってしまった。
試合の内容までは分からないけれど。
天城総魔は真哉を倒して最後の試合を目指しているということだ。
「…勝てるかな?」
自分自身に問い掛けてみる。
「真哉でさえ惨敗だったとすると、少し厳しいかな?」
それでも自信がないとは言わない。
どんな相手だろうと勝つつもりでいるからね。
だけど。
不安がないわけじゃない。
真哉が敗れたのなら僕でも勝てない可能性はある。
「彼に関する情報はあるけれど、情報しかないともいえるからね。」
天城総魔の試合を見た事は一度もない。
どんな戦い方で、
どんな能力を持っているのかな?
書類に書かれた情報だけでは、
全てを知る事なんて到底出来ない。
「警戒しておくべきだろうね。」
決して油断出来る相手ではないと自分自身に言い聞かせながら書類の束を握り締める。
「そう簡単に負けるつもりはないよ。」
誰に聞かせるでもなく。
一人きりで呟いたあとで、
午後の試合に向けて準備を始める事にした。




