挙動不審
《サイド:天城総魔》
「………。」
黒柳が驚き戸惑っている。
その態度から俺の推測が正しかったと判断できた。
やはり黒柳達は結界の実験だけではなく、
魔力への干渉という実験を行っていたようだ。
…ここまで来た甲斐があったな。
『疑惑』が『確信』に変わったことで、
自然と微笑みを浮かべてしまう。
ここに来た意味があったからだ。
これで実験に関わることができる。
そんな俺の考えが分かるはずもない黒柳は、
なんとか状況を立て直そうと思考しているようだが、
出てきた言葉は苦し紛れのごまかしでしかなかった。
「い、いや…。一体…何の話だ?」
懸命に考えてもその程度の言葉しか思い浮かばなかったのだろうか?
西園寺つばめもそうだったが、
黒柳も嘘をつけない人間なのかもしれないな。
…これで所長が務まるのか?
現在の態度は明らかに挙動不審だ。
腹芸が全く出来ていない。
とても研究所の所長が務まるような人物とは思えなかった。
「まだごまかせるつもりでいるのか?素直に諦めたらどうだ?」
「そう言われてもな…」
こちらの宣告によって逃げ道を失ってもまだ
懸命に言葉を探しているようだ。
とは言え。
どう考えたところでこの場を乗り切る手段は
思い浮かばないだろう。
事実を否定するためにはそれ相応の根拠が必要になる。
もちろん知らない分からないで無理やり押し通すのも一つの手段だとは思うが、
それでは何も解決しないままだ。
俺の指摘を否定することさえできない。
「………。」
時間をかけても上手い切り返し方が思い浮かばなかったのだろうか?
完全に黙り込んでしまっている。
…もう一度攻めてみるか?
悩み続ける黒柳に、
もうひと押ししてみることにした。
「つまらない言い訳を聞くつもりはない。俺が言いたい事は一つだけだ。」
俺の言葉に耳を傾ける黒柳は実験の停止を訴えられると思ったのだろう。
だがその予想は次の瞬間に外れることになる。
「今回の実験に協力がしたい。」
ただそれだけを告げた。




