予想以下
会場を離れてからどれくらいの時間が過ぎただろうか?
何をするわけでもなく。
特に行く当てもないまま。
無言で学園内を歩き続けている。
今見えるのは桜ではないが、
広葉樹の並木道が続く歩道だ。
数多くの生徒達とすれ違う学園はとにかく広い。
新入生と上級生。
どちらの姿も確認できる。
もちろん今も背後からは何者かの視線を感じているのだが、
今はそんなことすら気にならない。
少し考え事がしたかったからだ。
先ほどの試合内容を思い返してみる。
…相手が昨年度の最下位だったとはいえ。
あまりにも弱すぎた。
これでは上級生の実力が判断できない。
さすがにこれが標準ではないだろうからな。
もしもそうなら期待外れもいいところだ。
…さすがに、な。
この程度のはずがない。
だが、少々成績が上の生徒を探したとしても、
どれほどの差があるのかは疑問を感じる。
今年度のように1000人単位で入学しているとすれば、
10や50程度上の生徒と戦ってもあまり変わらない気がするからだ。
…だとすれば。
一気に数百番上の生徒と戦ってみるべきか?
それはそれで対戦相手が強すぎて手も足も出ない可能性がある。
…さて、どうしたものか。
色々と思うことはあるものの、
すぐに答えが出るような問題ではないのかもしれない。
それでも思案を続けながら適当に歩いていると、
校庭らしき場所にたどり着いていた。
…良い場所だな。
手入れの行き届いた花壇が広がる庭園。
色とりどりの花が何百と咲き誇る様は圧巻だ。
…花に興味はないが、悪い気はしないな。
こういう場所もあって良いと思う。
検定会場と違って静かな場所だ。
昨日の昼頃に立ち寄った休憩所ほどではないが、
人通りが少ない静かな場所だった。
周囲を見渡してみても気になるものは何もない。
綺麗に整備された花壇には数多くの花が咲き乱れているが、
花の名前には詳しくないからな。
それが何の花かはわからない。
…どうでもいいか。
花壇から目をそらしてゆっくりと周囲を見渡してみる。
他に目に付くのはまばらに点在する生徒達だが、
楽しそうに語らっている姿が見えるくらいだ。
適当な会話に聞き耳でもたてていればそれなりに興味を惹かれる話が聞けるかもしれないが今はそれすらどうでもいい。
周囲の状況は気にならない。
今は心の中を渦巻く疑問を解決することが優先だ。
…これからどうするか?
ひとまず手近なベンチに腰を下ろして今後の方針を考えてみる。
…とは言え。
考える事はそれほど多くはない。
はっきり言って予想以下だった。
下位の生徒達がこの程度の実力しか持っていないのであれば、
まともに相手をする必要がないように思えてしまうほどだった。
強くなる為には弱い相手と戦っていても意味がないからな。
敗北の可能性が感じられるような生徒に戦いを挑み、
実力のある生徒と戦ったほうが確実に成長できるだろう。
上級生といえども全員が強いわけではない。
それはすでに確認済みだからな。
まあ、誰もが戦闘の実力を求めているわけではないから当然か。
知識だけを求める者もいれば、
得意分野だけを集中的に学んでいる生徒もいるはずだ。
そうなれば必然的に対戦成績が低くなる。
そんな生徒達と戦って勝っても意味はない。
自分と同じように上位を目指して努力している生徒と戦わなければ良い経験は得られない。
…やはりもっと上位の生徒と戦うべきか。
思考を中断して再び歩き出すことにした。
次に向かうべき場所はもう決まっている。
先程の会場の入り口で係員が言っていたからだ。
より上位の番号を狙うのなら
『隣の会場へ行くように』と言っていた。
その言葉を頼りにして1万台の生徒達に見切りをつけることにする。
さらなる実力者を探す為に。
より上位の生徒達と戦う為に。
次の検定会場に向かうことにした。




