表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
THE WORLD  作者: SEASONS
4月5日
139/185

北条真哉の能力

《サイド:天城総魔》



…くっ!



北条の攻撃は一撃一撃が重く、

まるで鉄の塊が振ってくるかのような驚異的な重さがある。



…沙織とは真逆だなっ。



魔術の技量は平均よりも上程度でしかないように感じるが速さと力が圧倒的に上だ。



北条に関しては魔術師と呼ぶよりも戦士と呼ぶべきかもしれない。



それほど巧みな戦闘技術に対して驚きを感じてしまう。



…攻め方が巧妙すぎる。



一流の戦士の技量と言っても良いのではないだろうか。



これまで対戦してきた誰よりも戦い慣れている。


そんなふうに思える動きだった。



…純粋に押し負けるか。



防御に徹することで致命傷を避けてはいるが、

槍の間合いから抜け出せないせいで攻めることも距離を取ることも出来ずにいるからだ。



…何もかもが真逆だな。



沙織は相手の動きを封じるために様々な戦略を先読みしながら戦っていた。


だが北条は相手を逃さないために直感で判断して攻め続けてくる。



どちらも厄介だとは思うが、

感覚で戦う北条の動きを見切るのは難しい。


それこそ達人並みの技量がなければ槍の動きを見極めるのは不可能だ。



…せめて槍の間合いを崩せれば。



攻めるにしても、退くにしても、

間合いから抜け出さなければ何もできない。



…今は耐えるしかないか。



ただひたすらに槍の攻撃を耐え凌ぐ。


防御に徹し続けることで、

魔力を削り取りながら北条の能力を探り続ける。



その攻防の間に何度も霧を生み出しているのだが、

北条の一撃によってことごとく吹き飛んでしまう。



…やはり霧では北条を足止めできないようだな。



霧の内部を平然と突き抜けてくるからだ。


霧の能力で北条を無力化するのは諦めるしかないだろう。



その辺りの理由が不明のままだが、

突撃を繰り返す北条の姿に特別な魔術は感じられない。



純粋に突撃を続けているだけのように思えるからだ。



…だが、それはありえない。



それだけで霧を突き抜けることはできないはずだ。


本来なら魔力の量に関係なく瞬間的に全ての魔力が奪える。



霧の内部に入り込むのは裸で炎の中に飛び込むのと同等の行為になるからな。



…気合だけで耐え凌ぐのは不可能だ。



それなのに。


霧の内部でも行動できているという事実から考えれば、

何らかの能力が発動しているのは間違いないだろう。


問題はその能力が何なのか?という部分だが、

それがまだ分からない。



とは言え。


北条の戦闘方法そのものは単純明快だ。



槍に込めた魔力を破壊力重視の魔術に変えて自慢の体力で強引に叩き込もうとしているだけだからな。



最初こそ驚いたものの。


対処法はすでに確立している。



無理に押さえ込んだり弾き返すのは難しいが、

受け流すだけならそれほど難しいことではない。



槍の長さによる攻撃範囲の広さが厄介ではあるが、

耐え凌ぐだけなら無理に攻める必要はないからな。



時間を稼ぐためにはむしろ都合が良いとさえ言えるだろう。



攻撃を耐えるのは簡単だ。


だが北条の能力を解析しない限り、

俺も決定打にかける現状だった。



…互いに決め手に欠ける現状を打開するために対応を考える必要があるのだが。



どうするべきだろうか?


槍の長さを逆手にとって懐に攻め込むか?


上手く潜り込めれば一撃で試合を終えられるかもしれない。


だがこの手段はすでに却下済みになっている。



すでに失敗しているからだ。



…まさか槍術に加えて棒術まで極めているとは思わなかった。



いや、それだけではない。


格闘技も身に着けているのだろう。



単なる槍使いではなく、

戦闘技術全般を身に着けていると判断しておくべきだ。



…危うく致命的な攻撃を受けるところだったからな。



ギリギリ躱せたから良かったものの。


長さ3メートルの槍も、

中心を持てば左右1、5メートルのこん棒に変わってしまう。


その程度の長さなら小回りが効き。


前後左右、頭上から足元に至るまでのあらゆる角度から攻撃が迫って来る。



むしろ2メートル級の長さを持つ魔剣のほうが取り回しに手こずるほどだった。



…これが北条の実力か。



近接戦闘に関しては間違いなく強敵だ。



遠距離戦であれば沙織に軍配が上がるが、

近距離戦であれば北条が圧倒的に有利になる。



中距離を中心として前衛も後衛もこなせる翔子も十分に強いと思ったが、

二人に比べれば一段劣るだろう。



だからこその2位と3位。



北条と沙織の実力を改めて再認識したところで、

会場内の状況に少しだけ変化が起きた。



翔子と沙織の二人が試合場に接近してきたからだ。


こちらに向かって駆け寄る足音が聞こえてくる。



「総魔っ!」


「天城君!北条君!」



翔子と沙織が試合場を包む結界ギリギリにまで近づいてくる。


どうやら二人とも黒柳から解放されたようだな。



肝心の黒柳の姿は見当たらないが、

どこか離れた場所から観察しているのだろう。



本当に試合に興味を持っているかどうか疑わしいが、

西園寺が残っている以上は責任者である黒柳が先に撤退するとは思えない。



…推測でしかないが。



おそらくどこか離れた場所からこちらの様子を眺めているのだろう。



とはいえ。


どこにいるかわからない人物を探すよりももっと重要な問題がある。



今は北条を倒すことが最優先だ。



駆け寄って来た翔子達の姿を視界の隅で確認しながらも、

油断する事なく防御に徹し続ける。



心配そうにこちらを見つめる翔子や真剣な表情で試合を見守る沙織に問いかけてみれば答えはわかるかもしれないが、

目の前の北条を無視して話しかけられるような余裕はないからな。



とめどなく続く北条の攻撃を受け止めつつ、

自分で考えるしかない。



…北条の能力は何だ?



この状況で考えられる可能性は何だ?


自問自答しながら北条の能力を探ってみる。


攻撃に関する能力ではないはずだ。



その可能性は既に何度も考えたが、

どんな手段であっても霧を突き抜ける理由にはならないからな。



…だとすれば防御に関する能力か?



それも何かが違う気がする。


具体的な理由があるわけではないものの。


北条は間違いなく俺の攻撃を警戒している。



霧と魔剣を最大限に警戒しているように思えるからだ。


これまでの行動を見る限り、

防御能力を高めているようには見えない。



…だとすれば何だ?



考えられる可能性は限られてくる。


これまでの攻防を考える限り、

北条の能力の中で明らかに突出している才能があるからだ。



…それが答えなのか?



確かめてみる必要があるかもしれない。


もしも間違っていたら考え直せばいい。



…たどり着くまで何度でも確かめるだけだ!



それが俺の戦い方だからな。



…今度はこちらから攻める番だ!



「エクスカリバー!!」



北条の足元を狙って打ち出す風の刃。


この攻撃が通じるとは思っていないが、

瞬間的に足止めできればそれでいい。


そのための魔術だったが。



「邪魔だっ!!!」



期待通り一瞬だけ動きを止めることには成功したものの。


薙ぎ払われた槍の一撃によって即座に切り裂かれてしまった。



だが、これは予定通りだ。



あくまでも反撃に出るための時間稼ぎにすぎない。


流れを変えるために。


前へと踏み出すきっかけでしかない。



…ここからは予測が事実かどうかを確認する。



5分に及ぶ攻防によってたどり着いた仮説。


その事実を確認するためにさらなる一歩を踏み出す。



「行くぞ!」


「受けて立ってやるよ!!」



再び交差する槍と魔剣。



純粋な腕力の差は残ったままだが、

踏み出した分だけ魔剣の勢いは増す。



…このまま防御に徹して退くのではなく、攻撃のために前進する!



北条の能力。


もしもそれが俺の予想通りであれば単純な防御は愚策。


おそらく攻撃こそが最大の防御となるはずだ。



「このまま押し切る!!」


「ちっ!!」



退くのではなく進む。



ただそれだけで。


北条の攻撃が先程よりも弱まっているように感じられた。



…やはりそうか!



予測は間違っていなかったらしい。


だとすればこのまま突き進むのが正解だ。



「見切った!」


「…ちっ!俺に追いつくか…っ!」



動揺する北条にさらに踏み込む。


それだけで明らかに北条の勢いは弱まっていく。



…これは初見殺しだな。



北条の能力。


それはおそらく『強行突破』だ。



全力で突き進むことによって相手の魔術を突き抜ける能力とでも表現するべきか。



他にも考えられる可能性は幾つもあったが、

北条の行動を見る限り突撃そのものが能力だと思えた。



ルーンの能力は属性だけとは限らない。


俺の吸収の能力もそうだが、

特殊な能力は幾つでも考えられるからだ。



…現段階ではまだ仮説だが。



その仮説を実証する為に、

吸収した魔力を変換してもう一度翼を展開してみる。



「エンジェル・ウイング」



きらめく一対の翼。


その翼を見た瞬間に北条は後方へと身を引いた。



「…ついに出しやがったか。」



翼の攻撃を警戒して警戒する北条が動きを止めている間に魔術の準備を整える。



すでに一度構築した魔術だ。


発動に5分も必要ない。


北条が動きを止めたことで生まれたわずかな時間。


翼の発動から僅か10秒で魔術の圧縮は完成した。



「受けてみろ、アルテマ!!」



翔子に放ったアルテマと全く同じ構成。


沙織に放ったアルテマに比べれば半分程度の破壊力しかないが、

それでも即席の魔術としては十分すぎる威力があるだろう。



北条の攻撃を大きく上回る破壊魔術が発動したことで試合場が一瞬にして崩壊していく。



…威力は十分のはずだ。



だがもしも推測が正しければ、

北条はアルテマさえも突き抜けてくるだろう。



そんなふうに予測した直後に。



「うおおおおおおおおおおっ!!!!!」



粉塵が巻き上がる中心部から多少手傷を負ったという程度の北条が槍を構えたままで突進してきた。



「大した威力じゃねえか!!これ程の威力を喰らったのは久々だぜっ」



笑顔を浮かべてはいるが北条の目は真剣そのもの。


一瞬で間合いを詰めて来た北条は警戒していたアルテマさえも突き抜けられたことで自信に満ちた笑みを浮かべていた。



…やはり、通じなかったか。



即席とは言え最強の魔術でさえも破られてしまった。



ここまでは予想していた状況ではあるものの。


北条の強さは見事としか言いようがない。



…だがこれで確定した。



俺の予想通り。


北条は特別な力など使わずに強引にアルテマを突き抜けてきたからだ。



これで推測が確信へと変わった。


すでに北条の能力は読みきった。



一瞬で間合いを詰める瞬発力とどんな魔術も突き抜ける突破力。


そして試合場を崩壊させる程の破壊力を生み出すための原動力。



それらの示す答えは一つ。



北条の能力は純粋な『速度』だ。



他を凌駕する速さこそが北条の特性。


圧倒的な速度から放たれる一撃が本来の破壊力を増加させていたということだ。


どんな魔術も突き抜ける『速さ』こそが北条の力の秘密だと判断した。



だからこそ。


こちらから踏み出すことで北条の勢いをそぐことに成功していた。



…まだ確定ではないが。



もしも推測通りだとすれば北条もここまでだ。



俺の予測が正しければ、

この試合に勝つ事は容易い。


もはや警戒する必要はないだろう。



…あとはただ耐え凌げばいい。



北条の能力に気付いたことで持久戦で粘り続けることにする。



霧を生み出して徐々に北条を弱らせながら魔剣の力で槍を抑える。



その作業を淡々と繰り返すだけだ。



何度も突撃して来る北条の攻撃を防戦して凌ぎ、

動きを止めるたびに奪った魔力を変換してアルテマを発動する。


そんな消耗戦をひたすら繰り返すだけで、

北条の体力は確実に削られていく。



当然、その地道な努力によって互いの『魔力の差』は徐々に逆転していく。



俺はほぼ無傷の状態で魔力を節約して防戦を行っているだけだ。


対する北条はアルテマの影響で着々と体力を奪われながら攻撃の度に魔力も浪費している。



対照的な攻防だ。



疲労を蓄積していく北条は徐々に追い詰められていくことになる。



…もう少しで結果が出るだろう。



まもなく魔力の差が逆転する。



俺にとっては予想通りであり、

北条にとってはやっかいな状況となりつつある。



とはいえ。


北条もただただ突撃するだけの男ではないらしい。



防御に徹する俺を見て、

北条も『とある事実』に気付いた様子だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ