疲労の理由
「どうだった?」
「…ん~。多分、疲労かな?」
特に原因は見当たらないし、
病気ではないと思うのよね。
もう少し詳しい検査をしてみないと確かなことは言えないけれど。
今はしばらくは様子を見るしかないと思うわ。
「時間をおいて様子を見て、それでも回復の傾向が見られないなら、詳しく検査をする必要があるかも。」
「…疲労か。」
「ええ」
落ち込んだ表情で呟く御堂君に、
私は私の考えを告げることにしたわ。
「今はまだ推測だけどね。」
不慣れな魔術。
それも御堂君でさえ扱えないような高位魔術を使ったのよ。
「大魔術と呼ぶべき特殊な魔術を二度も発動させた反動かもしれないわね。」
あまりこういう言い方はしたくないんだけど。
医師としての判断をごまかすわけにはいかないのよ。
「おそらく…知識も経験も耐性さえもない成美ちゃんには魔術の反動に体が耐えきれなかったんでしょうね。」
『トールハンマー』と『ダイアモンド・ダスト』
どちらも並の魔術師では到底扱えない大魔術なのよ。
それほどの高位魔術を何の代償もなく使えるほど魔術は甘くないわ。
それ相応の技術と経験がなければ、
反動には耐えられないの。
だからこそ魔術の知識を一切持たない成美ちゃんに、
その反動は耐えられなかったんだと思うのよ。
…つまり。
「無理に魔術を使用した代償として、成美ちゃんの体に極度の負担がかかったということでしょうね。」
「…だとしたら、それは僕のせいだ。」
…って、言い出すと思ったから言い難かったんだけどね〜。
だけどそんなに落ち込まなくても、
あの状況なら仕方がないと思うわ。
「成美ちゃんが何もしなければ食堂にいた生徒達は全滅でしょ?きっと…数え切れないほどの犠牲者が出ていたはずよ。だけど成美ちゃんの疲労はゆっくり体を休めれば落ち着くはずだから心配する必要はないわ。」
こういう言い方も、どうかとは思うけどね。
成美ちゃんが何もしなかったら沢山の死者が出ていたのよ。
その可能性を考慮すれば、
成美ちゃんが体調を崩すだけで丸く収まるのなら決して悪くはない結果のはずよ。
もちろん成美ちゃんの苦しみを抑えるために、
私は私にできる最大限の努力をするつもりだけどね。
「成美ちゃんに関しては私が万全の処置を施すから心配しないで。」
気休め程度に宣言してから薬品棚に手を伸ばして必要な薬品を集めてく。
一応、前もって薬品の使用許可をもらっておいたから無断使用で怒られるなんてことはないわ。
「これとこれと…これも必要ね。」
薬学も極めた私に迷いなんてないわよ。
「あとはこれを使えば甘くなるから…。」
成美ちゃんの為に飲みやすい薬を調合することにしたの。
そんな私の手際が気になったのか、
救急班の人達がこっそり覗き込んでるみたいだけど。
今は周りの視線なんて気にならないし、どうでもいいわね。
「これで良し…っと!」
調合を終えてからすぐに粉薬を器に入れてコップに水を注いでみる。
軽く攪拌するだけで薬は水に溶けてくれたわ。
「あとはこれを成美ちゃんに飲んでもらうだけね。」
「もう出来たのかい?」
「この程度なら1分もかからないわ。」
使い慣れた器材ならもっと早く作れるし、
マールグリナの薬剤師なら誰もが作れる初歩的な薬なのよ。
まあ、初歩的と言ってもあくまでも睡眠薬だから薬品の使用許可がないと調合そのものが禁止される薬なんだけどね。
大まかに器材を片付けてからベッドに戻ろうとすると。
「僕も行くよ」
御堂君が追い掛けて来たわ。
「ええ、良いわよ。」
成美ちゃんが待つベッドに二人で戻ることにしたの。




