高熱
《サイド:栗原薫》
医務室の一画。
奥のベッドを借りて成美ちゃんを運び込んだあとで、
成美ちゃんの容態を調べることにしたんだけどね。
「…う~ん?」
…これはちょっとお手上げかも?
どう考えても手の施しようがない状態なのよ。
…せいぜい解熱剤を投与するくらいかしら?
これでも一応ね。
回復系魔術だけじゃなくて全般的な医療の心得があるから、
聴診器があれば医師がいなくてもちゃんとした診断は出来るのよ。
ただ、もちろんその為には服を脱いでもらう必要があるから、
ベッドの回りをカーテンで仕切って御堂君には離れてもらっているんだけどね。
…過労というか、疲労というか。
どちらにしても。
「とりあえず今は『安静にしてね。』としか言いようがないんだけど…。」
だけどね。
学園の各所で起きた襲撃によって医務室へ運び込まれてくる生徒達が数多くいるせいで、
安静とは真逆の騒がしい状況になっているのよ。
怪我の痛みに泣き叫ぶ生徒もいれば、
治療の順番を待ち切れずに怒鳴りだす生徒もいるみたい。
…ったく、うるさいわね~。
成美ちゃんの診断に集中出来ないことでイライラしてしまったわ。
…せめて医務室では静かにしてくれないかしら?
「調子はどう?まだ気持ち悪い?」
「…は、はい…。すみません…。」
青ざめて苦しそうな表情をしているわね。
脇に挟んでいる体温計の数字が少しずつ上昇しているのも見える。
…38度を越えて、もうすぐ39度になりそうね。
こうなるともう微熱どころの話じゃないわ。
上がり続ける体温。
このままだと数分後には40度も超えるんじゃないかしら?
成美ちゃんの体は熱をおびていて、
誰の目にも明らかな重病なのよ。
…原因は何なの?
単純な病気じゃないわ。
もっと別の何か。
…あるいは精神的なものかも?
疲労から来る影響と判断するのが無難に思えるのよ。
…だとしたら?
軽い睡眠薬でも処方して、
しっかりと眠ってもらったほうがいいかもしれないわね。
「今は苦しいかもしれないけれど、ゆっくり休めば楽になると思うわ。すぐに薬を用意するから、少し待っててくれる?」
「…はい。」
元気なく答える成美ちゃんの服を整えてからベッドを離れる。
医務室の各所で救急班が治療を行う側を通り過ぎながら薬品棚に向かう私に、
離れた場所で待機していた御堂君が歩み寄ってきたのよ。




