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THE WORLD  作者: SEASONS
4月20日
1343/1402

冷却魔術

《サイド:御堂龍馬》



燃え上がる校舎。


閉じ込められた生徒達。



消せない炎を目の前にして、

僕達はただただ状況を眺めることしか出来なかった。



どうやら里沙と百花の魔術だけだと、

消火が追い付かないようだ。



栗原さんの魔術は二人に劣るだろうし。


僕の魔術だと消火は出来ない。



それどころか下手をすれば中に閉じ込められている生徒達にまで被害が出かねないと思う。



「…うーん。」



現状だと手段が何も思い浮かばない。


身動きの取れない状況になってしまっているんだ。



一刻を争う状況なのに、

消火方法が思い付かなかった。



こういう時に彼がいてくれれば。


総魔がいれば難なく救出できると思うのに。



それが望めないんだ。



…総魔はもういない。



残された僕達だけで解決しなくてはいけないんだけど。



僕達の実力では火事の消火が出来ない。



…せめて沙織がいれば。



そんなふうに思う自分が情けなくなってくる。



誰かに頼るんじゃなくて、

僕達の力で解決しないといけないんだ。



それなのに良い方法が思い付かない。



もっと強力な魔術があれば。


もっと有効な方法があれば。



そうは思うけれど。


何も思い付かなかった。



『メキメキッ』と、

校舎の崩壊が進む音だけが周囲に響き渡る現状。



僕達に出来ることは本当に何もないのだろうか?



…いや、ダメだっ!



…諦めればそこで終わる!


…まだ諦めるには早い!



…僕達にはまだ出来ることがあるはずなんだっ!



必死に自分に言い聞かせながら炎に視線を向け続ける。



『炎を消し去る方法』



それは水か氷の魔術になる。


それも最上級を超えるほどの大魔術が必要だ。



あるいは数を集めての一斉攻撃でも良いんだけど。


周囲を逃げ惑う生徒達の協力は望めそうにない。



…何かないか!?



強力な魔術が存在しないか記憶をたどってみる。



例え僕が使えなくても、

栗原さんや里沙と百花がいるから発動出来る可能性はあるはず。



そう考えてあらゆる魔術を思考する僕の記憶が…『とある魔術』の名前を思い出した。



今ここで『その魔術』を使える人物がいるとすれば?



僅かな可能性に賭けて成美ちゃんに歩み寄ってみる。



「…成美ちゃん。」


「はい…?」



不思議そうな表情で僕を見上げる成美ちゃんの瞳を見つめながら、

僕は僕の考えを告げることにした。



「もしかすると成美ちゃんなら出来るかもしれない。」



もしも本当に翔子の力を受け継いでいるのなら。


きっと成美ちゃんには出来るはずだ。



「翔子の魔術ダイアモンド・ダスト。成美ちゃんなら、その魔術を使えるんじゃないかな?」


「…ダイアモンド・ダスト?」



魔術名を呟いた瞬間に、

成美ちゃんの左目が僅かに光り輝くのが見えた。



「え?あれ…?」



戸惑う様子の成美ちゃんだけど。


僕はそんな成美ちゃんを見て確信したんだ。



「大丈夫。成美ちゃんなら出来るよ。」


「…あ、はい。」



成美ちゃんは小さく頷いてくれた。



「…何となくですけど…。分かる気がします。たぶん…きっと…。」



曖昧な返事だけど。


両手を突き出して校舎に向けてくれたんだ。



その間にも瞳の輝きは強さを増していて、

成美ちゃんの両手に『力』を与えているように思える。



「行きます!」



詠唱も何もなく。


成美ちゃんの両手が輝きだす。



「ダイアモンド・ダスト!!」



魔術名を宣言する成美ちゃんの両手の指先から幾つもの冷気の『核』が現れる。


そして里沙と百花の横を通り過ぎたんだ。



食堂の入口に降り注ぎ。


『パキパキパキ』と一瞬にして凍りつかせていく。



炎そのものを凍らせるほどの冷気によって、

校舎の入口から炎が消え去った。



…まるで炎の彫刻だね。



氷像という表現が正しいのかもしれないけれど。


校舎の入り口を燃え上がる炎ごと凍りつかせたんだ。



その直後に。



「出口だっ!!!」


「逃げろーーーっ!!!!」



食堂の内部に閉じ込められていた生徒達が一斉に脱出を開始した。



「早くっ!!急いでっ!!」



里沙と百花が先導して、

生徒達を外に脱出させている。



だけどその間にも他の場所で燃え上がる炎が校舎を燃やし尽くそうとしているようだ。



「もう一度、魔術を…」



火事を食い止めるために、

成美ちゃんに振り返ってみる。



そして成美ちゃんにお願いしてみようと思ったんだけど。



「……ぁ……っ?」



何故か成美ちゃんは胸を押さえながら苦しそうな表情を浮かべていた。



「な、成美ちゃん!大丈夫かい!?」



慌てる僕の言葉を聞いて、

栗原さんも成美ちゃんの様子に気づいたようだ。



「ちょっ、成美ちゃんっ!?」



胸を押さえて苦しむ成美ちゃんに、

栗原さんが手を差し延べている。



「ちょっとごめんね。」



成美ちゃんの胸に手を当ててから次に額に手を当てていた。



「うわ~っ。結構な熱があるわね…。心臓の鼓動もかなり早くなってるし…。これは急いで休ませたほうが良いかも…。」



今にも倒れそうな表情で苦しむ成美ちゃんの様子は明らかに異常だ。



さっきまで平然としていたはずなのに。


今では流れ落ちるほどの汗まで流している。



「成美ちゃん…っ!?」



このままだと危険なことは素人の僕でもわかる。


この症状は単なる病気なんかじゃない。



「医務室に行こう!」



成美ちゃんの手を引いて、

急いで成美ちゃんの体を背負う。



「すぐに休ませてあげるからね。」


「私も行くわっ!」



慌てて駆け出す僕を栗原さんが追い掛けてくる。



…燃え広がる食堂も気になるけれど。


…今は成美ちゃんが優先だ!



僕と成美ちゃんと栗原さんの3人で医務室に急ぐことにした。




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