早口言葉のよう
「他にもまだいるのね…。」
大声で叫びながら近づいてくる人達を見た栗原さんの表情が険しくなっています。
「こんなふうに争ったところで誰も喜びはしないのに…。」
栗原さんは私を庇うように前に歩み出てから、
ブツブツと何かを呟き始めました。
私にはその内容が難しくてはっきりとは聞き取れないんですけど。
多分これが魔術の詠唱なんだと思います。
「…水が導く凍土の世界…。凍てつく大地の力において、全ての動きは閉ざされる…。」
まるで早口言葉のようです。
魔術の詠唱を行う栗原さんの後ろで怯えるだけの私に、
栗原さんは優しく声をかけてくれました。
「正直に言うと戦闘ってあんまり得意じゃないのよね〜。捕獲とか鎮圧とかはまあ…出来なくもないんだけど、攻撃は不得意なのよ…。」
それでも戦うつもりのようです。
栗原さんが何かの魔術を発動させました。
「アイス・フィールド!!!」
地面に向けて手を伸ばした直後に、
栗原さんの前方一面に氷が広がったんです。
『パキィィィ………ン。』と一瞬で凍りつく地面。
私達に迫っていた人達は、
氷に足を捕らえられて動きを止めています。
ですが足を止めただけでは魔術は止められません。
「バースト・フレア!!!」
「サンダー・ストーム!!!」
「フレア・アロー!!!」
幾つも放たれる魔術を止める方法はないんです。
「うっわぁ~っ!?」
迫り来る魔術を見て栗原さんが焦っています。
「詠唱が追い付かない~っ!!」
栗原さんが慌てて叫んだ直後に。
「成美ちゃん!?栗原さんっ!!」
御堂さんが急いで駆け付けようとしてくれていたのですが、
御堂さんも戦闘中なので間に合いそうにありません。
御堂さんが駆け付けてくれるよりも先に、
全ての魔術が私達に降り注いでしまうからです。
「…っ!?」
目をつぶって痛みに怯えました。
力一杯、栗原さんにしがみついてしまったんですけど。
………。
何故かいつまで経っても痛みは感じません。
…あれ?
恐る恐る目を開けて栗原さんに視線を向けてみると。
薫さんは驚いたような表情で、
ただじっと目の前の『現象』に視線を向けていました。
…どうしたのかな?
栗原さんの視線を追って周りを眺めてみると。
「…え…っ?」
不思議なことに。
全ての魔術が薄い光の膜に遮られて動きを止めていたんです。
「何が起きているんですか…?」
「これは…シールドよ。」
戸惑う私に栗原さんが一言だけ答えてくれました。
…シールド?
言葉の意味が分からないのですが、
魔術を防いでくれていることだけは私にも分かります。
「不思議~?」
不思議な現象を眺める私のすぐ側で、
栗原さんも不思議そうに光の膜を眺めています。
「…どうして?魔術の詠唱は間に合わなかったのに…?」
栗原さんが戸惑っている間に周囲の全ての魔術が消滅して、
広い範囲の景色が見渡せるようになりました。




