不確かな存在
「ねえねえ、成美ちゃんも魔術が使えるの?」
ついさっき鎌田という名前の男子生徒を倒した魔術。
あれはトールハンマーよね?
私も魔術大会には参加していたから見覚えがあるのよ。
…でもね?
だからこそ疑問が尽きないの。
あれは並の魔術師では到底発動出来ない超高位魔術のはずなのよ。
…最上級のさらに上。
分類上は特殊魔術に含まれるでしょうから、
誰もが使えるような簡単な魔術ではないはずなの。
それなのに。
成美ちゃんは詠唱すら行わずに魔術を発動させていたわ。
まるでルーンを媒体にしたかのように、
瞬間的に魔術を発動させていたのよ。
「もしかして沙織に魔術を教えてもらった経験があるとか?」
それしかないだろうな~なんて思いながら聞いてみたんだけどね。
「あ、いえ…。」
成美ちゃんは説明に困っていたわ。
「あの、その…。私は…何も…。」
…何も?
…と、言うことは?
何もしてないか、
あるいは何も分からないという感じよね?
…う~ん。
魔術を使えないのに魔術が発動したの?
…どうして?
「御堂君はどう思う?」
成美ちゃんの瞳を見つめながら問い掛けてみると、
御堂君は推測を答えてくれたわ。
「たぶんだけど…成美ちゃんの瞳に宿る翔子の魂が、成美ちゃんを守ろうとしたのかもしれないね。」
…う〜ん。
瞳に宿る魂ね~。
それってどうなの?
御堂君の考えを否定するつもりはないけれど。
魂という表現はどうも納得出来ないのよね〜。
…まあ、その考えでも不満はないんだけど。
そんな不確かな存在を理論的に説明なんて出来ないわ。
…そもそも論として。
魂が本当に実在していて、
成美ちゃんを守ろうとしているのなら。
あるいは、
成美ちゃんを守るという意志があるのなら。
他にも何らかの反応があっても良いはずよね?
…なのに。
さっきのトールハンマー以外は、
今のところ何も起きていないわ。
成美ちゃんの瞳に何が起きてるのかが何も分からないままなのよ。
もしも美袋さんの魂が実際に存在していて、
常に成美ちゃんを守っているのなら。
当然、もう一方の瞳には沙織がいるはずよね?
だからもしも成美ちゃんが沙織の力も発動出来るとしたら?
美袋さんの攻撃力と沙織の治癒能力を受け継いでいるのだとしたら?
…成美ちゃんの実力は。
私や御堂君を軽く超えるかもしれないわ。
だとしたら。
俄然、興味心が沸き起こるわよね。
…調べて見たいわね〜。
成美ちゃんの瞳の真実を…よ。
「一度、本格的に調べてみたほうが良いかしら?」
「えっと…。瞳を調べることが出来るんですか?」
…ん~。
…どうかしらね?
成美ちゃんも気になるみたいだけど。
「出来ないとは言わないけれど、どうすれば良いかまでは分からない感じ?」
「だったら研究所で調べるしかないんじゃないかな?」
「まあ、それが一番早いかもね。」
御堂君の指摘に異論はないわ。
むしろ私としてもそれしかないって思ってるしね。
「確かこの学園の魔術研究所の中にはルーン研究所があるんでしょ?」
「ああ、あるよ。」
「だったら調べられるんじゃない?」
成美ちゃんの瞳に秘められた力がルーンなのかどうか?
あるいは本当に魂なのかどうか?
もしくは別の何かなのか?
仮にルーンだとしても、
どうして本人が知らない力を発動出来るのか?
その辺りを調べてみたいとは思うわね。
「研究所に案内しようか?」
「それも良いけど、まだ戦闘は終わったわけじゃないんでしょ?」
「まあ、そうだね。」
「安定した実験を行う為に、まずは戦闘を終わらせることを優先したほうが良いんじゃない?」
「ああ。」
御堂君は小さく頷いてから、
私と成美ちゃんに話し掛けてくれたのよ。




