蒼い光
《サイド:近藤悠輝》
…何だっ?
…何が起こった!?
自分自身でさえ理解出来ない事態が起きている。
だがそれでも、
今は悩んでいる暇がない。
200人を超える竜の牙に囲まれ、
たった一人で立ち向かわなければならない状況だからだ。
生き残る為には戦い続けるしかなかった。
「邪魔だーーっ!!」
聖剣を振りぬいて目の前の敵を切り伏せる。
「ぐぁぁぁっ!!!」
悲鳴をあげながら倒れる竜の牙の一人を斬り殺しながら戦場からの離脱を試みているのだが、
200対1では逃げられるはずもない。
確実に狭まる包囲網。
徐々に追い込まれる俺に死が迫っている。
…兄貴っ!
ここにいない存在に助けを願ってしまう。
だがそれは兄貴に来てほしいという意味じゃない。
聖剣に力を貸してほしいと思ったからだ。
どういう理由でこの剣が現れたのかは分からないが、
今は握り締める剣に願いを込めることしか出来ない。
…兄貴。
…俺を守ってくれ。
本来なら兄のルーンであるはずの聖剣アルビオンを握り締めながら必死に抵抗を続ける。
…それでも。
気力に反して、
体力と魔力には刻一刻と限界が近付く。
「くそっ!!」
がむしゃらに振り回す剣では思い通りに当たらない。
…敵が強すぎる!
さすがは戦闘集団と言うべきか。
一人一人が手練れと言える竜の牙が相手では、
強力なルーンがあってもそれだけで勝てるわけではない。
「駄目か…っ。」
いくら兄貴のルーンがあっても。
「俺一人では…っ!」
悔しさを感じて唇を噛み締めることしか出来なかった。
そうしてただただ絶望を感じる俺に、
竜の牙達が一斉に魔術の詠唱を開始してしまう。
「ここまでなのか…っ!」
絶望に染まる心。
迫り来る魔術を眺めながら死を覚悟するしかなかった。
「すまない兄貴。俺はもう…。」
心が諦めようとしていたのだが、
突如としてルーンが蒼く輝き始めた。
…何だっ!?
次々と起こる異変に理解が追い付かない。
戸惑うことしか出来ない俺に竜の牙の魔術が迫っている。
…だが。
『ズバンッ!!!!!!』と、
不意に響き渡る切断音。
その音に気付いて周囲を見渡してみると。
接近していた魔術の全てが消失しているように見えた。
「な、何が起きたんだっ!?」
何もかもが理解出来ない。
この状況で分かることは一つのみ。
突如として光り輝いた聖剣。
その次の瞬間に。
蒼い光が魔術を切り裂いたという事実だけだ。
「何が起きている?」
何も分からない。
何が起きているのかが分からない。
そのせいで戸惑うことしか出来ない俺に、
更なる奇跡が訪れようとしていた。




