苦々しい表情
《サイド:黒柳大悟》
「全員下がれっ!!」
大声で叫んで指示を出す。
即座に動いてくれた前衛の部隊が一斉に後退したことで視界が一気に広がった。
…ここまでは予定通りだ。
襲撃者達の姿を捕捉して魔術を発動させる。
「ビッグ・バン!!!」
巨大な爆発を巻き起こして爆風を生み出すのは最上級闇魔術だ。
爆風に飲まれた襲撃者達の体が次々と吹き飛んでいくのだが、
相手も相当な魔術師らしく、
これほどの攻撃でも致命傷に至らないらしい。
「大吾でも倒しきれないか…相変わらずのバケモノだな。」
…ああ、そうだな。
苛立ちを見せる神崎慶一郎に歩み寄る。
「認めたくはないが…この状況は、あの時以来だな。」
「やはり竜の牙か?」
「…だろうな。」
「………。」
慶一郎は苦々しい表情を浮かべている。
敵の正体に気付いたことで、
かつての怒りを思い出したのだろう。
「5年前の屈辱を忘れたことは一日としてないっ!!」
怒りに燃える慶一郎の瞳は憎悪に満ちているように見えた。
…やはり忘れることは出来ないか。
かつての仲間達を皆殺しにされたことを忘れられないのだろう。
「復讐も良いが、今は生き残ることが最優先だ。」
憎しみをあらわにする慶一郎の隣に立って冷静になるように話しかけてみる。
「これ以上、俺を悲しませるな。」
同じ悲しみを知る者として説得しておいた。
そんな俺の気持ちが通じたのか、
ひとまず落ち着きを取り戻した様子だった。
「大丈夫だ。お前を置いて死にはしない。」
「ああ、それでいい。」
いつもと同じように微笑む神崎を見て、
俺も微笑みを返しておく。
これでひとまず慶一郎を心配する必要はないはずだ。
次に西園寺君に指示を出すことにしよう。




