キレる
…何が起きたっ!?
戸惑う俺と百花の視線が同時に動く。
…あれはっ?
ルーンを手に持ちながら渋沢東吾に駆け寄る男子生徒に気づいた。
「御堂っ!!」
百花から離れて御堂へと駆け寄る。
「淳弥!」
御堂も俺に視線を向けて問い掛けてきた。
「何があったんだ!?」
「あ、いや…まあ、な。」
倒れる生徒達と百花に怯える一同を見て疑問を浮かべる御堂の疑問はもっともだが、
俺もどう答えれば良いのか分からなかった。
「何だろうな…?」
どう説明するべきか悩んでしまう。
そもそも何があったのかは俺も知らないからな。
「…説明は難しいな。」
この場合、素直に百花に説明してもらうのが手っ取り早いと思うのだが、
俺の横を通り抜けた里沙が百花に駆け寄ってしまう。
「百花っ!」
里沙が心配そうな表情で百花に抱き着いた。
その瞬間に。
百花の体から放たれていた殺気が一瞬にして消滅したような気がした。
「あら?里沙、お帰りなさい。」
いつも通りの表情と口調だ。
空気が凍るかと思うほどの殺気が消えたことで、
御堂と里沙を除く誰もがほっと安堵の息を吐いている。
敵も味方も関係なく。
誰もが恐怖から解放されて緊張から解放されたからだ。
「恐すぎるだろ…。」
「何があったんだい?」
思わず呟いてしまったことで御堂が問い掛けてきたが、
あとでもめ事に巻き込まれるのは面倒だからな。
適当にごまかしておいたほうがいいだろう。
「んー?まあ…あれだ。知らない方が良いこともあるってやつじゃないか?」
「………?」
曖昧に答える俺の言葉を聞いて御堂は首を傾げている。
まあ、俺も良く分からない事態だから説明のしようがないんだが、
それでも一つだけ分かったことはある。
それはつまり。
『里沙に危害を加えようとすると、
百花は異常なほどキレる』ということだ。
渋沢東吾は百花と里沙に復讐しようとしたらしい。
おそらくそれが百花がキレた理由なんだろう。
…そういえば昨日の夜に。
『里沙に何かあったら…私が淳弥を殺してあげるわね。』
…なんて言ってたな。
それが冗談ではなくて本気だったことを知って深くため息を吐いてしまう。
…冗談抜きで、癒しがほしいな。
本気で願う俺に同情したのか、
御堂が愛想笑いを浮かべながら俺の肩をポンポンと叩いていた。
「いつか良いことがあるよ。」
…そうか?
御堂の同情に今はため息を吐くしかなかった。




