趣味じゃない
何度も何度も激しく叩かれる扉の音。
その音に気づいた私と彩花は、
ほぼ同時に扉に振り返ったわ。
「どなたかおられますかっ!?」
切羽詰まった感じの問い掛けが聞こえてくる。
「いるけど、どうかしたの?」
とりあえずベッドから下りて外に繋がる扉へ近づいてみると。
研究所の職員が扉を開いて中に駆け込んできたのよ。
「突然のことで申し訳ありません。」
一旦謝罪してから理由を説明してくれたの。
「川島所長からの伝言です!現在、学園が何者かの攻撃を受けて混乱状態の為、緊急に協力を要請します、とのことですっ!!」
…はぁっ!?
「何者かの攻撃って…どういうことなの!?」
伝言を聞いて戸惑ってしまったんだけど。
「ふぅん。そうなの」
彩花は小さく首を傾げただけであまり気にしていない様子ね。
「ちょっと彩花っ!!ふぅんって何よ?もっと驚くべきでしょ!?」
もっともっと危機感を感じるべきだと思って怒ってみたんだけど。
「…そう?」
彩花の態度は変わらなかったわ。
「学園の教師と生徒。その何割かが戦争で不在だとしても、それだけで学園が落ちたりはしないでしょ?心配しなくてもすぐに片付くと思うわよ。」
…う。
…まあ、ね。
冷静に答える彩花の意見に異論はないわ。
でもね?
それはそうかもしれないけど。
それで良いの?
そんなふうに思う私の気持ちを察してくれたのか、
伝言を伝えに来た職員が彩花に説明してくれたのよ。
「期待に応えられずに申し訳ないのですが、敵の勢いが圧倒的で、残存する戦力ではとても食い止められません。主力と言える戦力が抜けている為に現状で頼れるのはみなさんしかいないんです!」
必死に訴えてくる職員だけど。
「人助けとか…趣味じゃないのよね。」
それでも彩花は動かなかったわ。
まあ、最初から彩花に人命救助とか求めてないけどね。
とりあえずそんなことはどうでもいいのよ。
「私は行くわよ!」
彩花が動かなくても私は行くつもりよ。
「どういう状況か分からないけど、放ってはおけないわ。」
学園を守るために動きだす。
そんな私を見ていた彩花が渋々動き出したのよ。
「乃絵瑠が行くのなら協力して上げてもいいけれど、私達が行かなくても終わると思うわよ?」
あくまでも他力本願。
…と言うか。
客観的な意見だけど。
私としてはどっちでもいいのよ。
「終わるなら終わるで良いけどね。だけど何もせずに傍観するのは、それこそ私の趣味じゃないのよっ!」
彩花の意見を無視して全力で走り出す。
一目散に地上を目指す私のあとを追って彩花もついてきてくれてるみたい。
さらにその後ろを追いかけて来る職員の女性と一緒に、
私達は地上を目指すことにしたのよ。
…でも。
その前に一つ気になることがあるのよね。
「そう言えばさ。他のみんなはどうしてるの?」
「奈々香は7番目に挑戦中よ。あずさは4番目。未来は3番目。3人ともまだ帰って来てないわね。」
…ふ~ん。
…そうなんだ。
「みんなちゃんと先に進んでるのね。」
私だけが出遅れてるみたい。
そう思うと落ち込んでしまうけれど。
「とにかく急ぐわよっ!」
ひとまず今は気分転換も兼ねて、
外の様子を確認することにしたの。




