芹澤啓輔
《サイド:御堂龍馬》
「御堂…っ!!お前がいながら、この様は何だっ!!」
あからさまに不機嫌そうな声で怒鳴りながら駆け寄ってくる人物。
彼の声を聞いてしまったことで密かにため息を吐いてしまう。
「…はあ。この状況で…」
次から次へと問題児が集まってくるのはどういう理由なんだろうか?
ぼやくように呟いてしまった僕に、
怒りの形相で駆け寄ってくる彼の名前は芹澤啓輔だ。
校舎側から駆け付けた彼に気付いた瞬間の里沙の表情は、
捕まっているという恐怖以上の戦慄に染まっている。
彼の顔を見た瞬間に里沙の表情が真っ青に染まってしまったんだ。
「な、何で…ここにいるのよ…っ!?」
声を震わせながら呟く里沙を、
彼は苛立ちを込めて睨みつけていた。
「里沙っ!!お前はそこで何をしているっ!?」
「なっ、何って…?捕まってるのよっ!他にどう見えるって言うのよっ!?」
焦りと恐怖と不安で戸惑う里沙。
そんな里沙に視線を向けながら、
彼は一歩を踏み出してしまう。
「里沙ーーーーーっ!!!」
一見、心配しているように見えなくもないけれど。
実はそうじゃないことを僕達は知っている。
そしてこれから彼がとる行動を里沙も理解しているはずだ。
『ザッ…ザッ…』と歩みを進める彼の行動によって、
里沙を捕らえる男性が話し掛けようとしていた。
「動くな!動けば…」
「黙れ!」
里沙を殺すと告げようとする言葉を遮って彼が宣告してしまうんだ。
「お前にはさせない!里沙は俺の女だ!お前ごときが触れていいような存在ではないっ!!」
敵の警告を無視して魔術の詠唱を開始してしまう。
その様子を見ていた男性が里沙を捕らえる手に力を込めている。
「その大事な女が死ぬことになるぞ?」
冷静に告げる男性だけど、その警告は無意味だ。
何故なら。
「お前ごときに殺されるくらいなら…俺が里沙を殺す!」
芹澤啓輔自身が里沙に殺意を抱いているからだ。
襲撃者の警告を無視する彼は、
その手に炎を生み出してしまう。
魔術名『ダンシング・フレア』
炎系統の中でも最上級に位置する魔術を生み出して再び宣言してしまうんだ。
「里沙は俺のモノだ!誰にも汚させはしないっ!!」
強すぎる独占欲によって他の男性に里沙が触れられることを何よりも嫌う芹澤啓輔は、
里沙を手に入れるためなら里沙を殺すことも躊躇わない男だった。
「里沙は俺のものだ!他の誰にも触れさせはしないっ!!」
危険すぎる思想。
本当の意味で里沙が恐れていたのは女性としての身の危険ではなくて、
生命そのものの危険があったからだ。
「里沙に触れて良いのは俺だけだっ!!」
全力で叫ぶ芹澤啓輔の想いは歪んでいる。
「里沙を他の男に渡すくらいなら俺が殺すっ!!それが里沙の為だっ!!」
周囲の意見に耳を傾けない芹澤啓輔は、
生み出した炎をまっすぐに里沙に向けて放ってしまった。
「い…いや~〜〜〜〜〜っ!?」
恐怖に顔を歪める里沙だけど。
今の里沙には抵抗するだけの『力』がない。
力を封印した里沙に炎は防げないからだ。
それなのに。
放たれた炎は無抵抗な里沙を容赦なく包み込もうとしている。
踊るように燃え盛る炎が里沙に襲い掛かり、
同時に里沙を捕らえる襲撃者にも襲い掛かったんだ。
「ちぃっ!!」
襲撃者は里沙を炎に向けて突き飛ばして、
炎の射程から逃れようとしている。
だけど芹澤啓輔は襲撃者に目を向けることなく里沙だけに狙いを定めているんだ。
「里沙。お前が死んだあとに俺もお前を追いかける。」
まっすぐに里沙だけを見つめて告げる言葉。
その歪んだ愛に反論する余裕もないまま、
里沙が炎に飲み込まれてしまう…その直前になって。
密かに行動していた米倉さんが里沙を救出してくれたんだ。
『ブオンッッ!!!』と、
風を切る音を響かせた次の瞬間に。
芹澤啓輔が炎はあっさりと切り裂かれて消滅していた。
「…ふう。美由紀から聞いていた以上の暴走ぶりだな。」
里沙を庇う米倉さんの手には槍の形をしたルーンが握られている。
「あまり戦闘は得意ではないんだがな…。」
病によって体調を崩している米倉さんの表情にはすでに疲労が見えていた。
…まずいかな?
現状では米倉さんを戦力としては数えられない。
即座に判断した僕は、
急いで米倉さんに駆け寄ることにしたんだ。
「援護します!」
ルーンを生み出して二人の護衛につく。
光と共に生まれるルーンの名前はシャイニングソードだ。
総魔と共に歩み。
競い合いながらたどり着いた僕の最強のルーン。
こうして手に取るのはアストリア以来だね。
「手加減はしない!この町を守る為なら、僕は罪を重ねることを迷わない!」
聖剣を構えながら改めて竜の牙に対して宣告することにしたんだ。
すでに戦場において数えきれないほどの人々の命を奪った僕に迷いはない。
この町を守る為なら僕は簡単に人を殺せてしまう。
それが僕が手に入れた力なんだ。
だからこそ思う。
僕の力は決して『英雄』ではないんだと。
これは『殺人鬼』としての力だ。
僕は人を殺せる力を持って、
この町を守り抜くつもりでいる。
それが僕の『役目』だからだ。




