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THE WORLD  作者: SEASONS
4月4日
128/185

使い捨て

《サイド:天城総魔》



食事を終えて食堂の前で翔子と別れたあと。


寮の自室へと戻ってきた。


時刻はすでに午後10時を過ぎているようだ。



まだ眠るには早い時間だとは思うが、

食事を終えて身支度も整えたことですでに眠れる準備は整っている。



もう少し起きていてもいいとは思うが、

今日はかなり無理をしたからな。


早めに眠るべきだろう。


今は魔力を回復させることが最優先になる。



体を休めるためにベッドに横になってから、

少しだけ明日の試合について考えることにした。



…と、言っても。



現在の状況はかんばしくないな。



今日一日でほぼ全ての魔力を使い切ってしまったからだ。


時間の経過と共に少しずつ回復してはいるが、

まだまだ微々たる量でしかない。


沙織の魔法によって受けた傷の治療を行ったために再び多くの魔力が失われてしまったからだ。



現状では1割にも満たないだろう。



この程度の魔力量では魔剣を扱うことはできない。


弱体化した魔剣では高威力の魔術を斬る事はできないからな。


せいぜい中級程度の魔術に対応できる程度だろうか?


その程度では戦力として数えられない。



…魔剣も問題だが。



もちろん翼も使えない。


おそらく発動すら出来ないと思うが、

仮に発動出来たとしてもそれだけだ。


圧縮魔術の蓄積までは出来ないからな。


当然アルテマも使えない。



かろうじて霧は展開できるかもしれないが、

弱体化した霧では防御能力に期待は出来ないだろう。



格下と戦うのであれば特に問題はないが、

格上と戦う前提で考えればどの能力もまともに扱えないということになる。



この状況を改善させる方法は一つだけだ。


魔力が自然回復するのを待つしかない。



…まずは一晩ゆっくりと体を休ませるしかないな。



それは分かっているのだが。


一晩休んだ程度でどこまで魔力が回復するのかは分からない。



出来ることなら最大まで回復して欲しいとは思うが、

まず間違いなく完全には戻らないだろう。



一晩だけでは時間が短すぎる。


今の俺の魔力の総量を考えれば、

丸一日か、それ以上の時間が必要だと思われる。



だとすれば。



半日程度で戻る魔力は精々半分程度だろう。


その程度では北条には届かない。



「…魔力が足りないな。」



密かに抱えていた問題についに直面してしまった。


当初から警戒していたことではあるが、

魔力がなければ戦うことはできない。


だからこそ。


この状況に陥らないように魔力の吸収を繰り返していたのだが、

さすがに今日は無理をしてきたと思う。



翔子と沙織。



二人を相手に試合をしたこともそうだが、

その後の治療に魔力を使いすぎてしまった。



…だからと言って後悔するつもりはないが。



さすがにこの状態で戦い続けるのは無理だ。


北条の実力は未だに計り知れない。


実際に対面したことで魔力量だけは把握できているが分かるのはそれだけだ。



あくまでも推測でしかないが魔力に関しては沙織よりも下だろう。


魔術師としての実力はあまり期待できない。


魔術の技量は沙織が一番だと言っていたからな。


その点に関しては北条を警戒する必要はないだろう。



だがルーンを主体とした戦闘技術はこれまで戦ってきた誰よりも上のはずだ。


そうでなければ沙織よりも成績が上ということはあり得ない。



…だとすれば。



対するこちらの状況は圧倒的に不利だ。


魔力不足で魔剣が使えないという状況で北条と戦闘技術を競い合うというのは無謀でしかないからな。



そもそも過大評価されて莫大な魔力を持っているように思われがちだが、

実際の魔力量は沙織よりも少し下か同程度だと思っている。



…いや、今はまだ沙織以下と判断するべきだろう。



そこまで極端に魔力を持っているわけではないからだ。



翔子と沙織と北条。


そしてまだ名前すら知らない1位の生徒。


彼等が俺をどう判断しているのかは知らないが、

魔力の総量はそれほど多くはない。



もちろん学園に来てから数多くの試合を行ってきたおかげで、

それなりの実力を身につけた自信はある。



魔力と技術。



共に大幅に成長したのは間違いないだろう。



だがそれでも。


学園内において最強と呼べるほどではないはずだ。


幾つもの魔術を実現させてきたのは事実だが、

それと魔力の量は関係ないからな。



霧と翼と魔剣の展開。


そして翔子と沙織の治療。


さらに試合での魔力消費等々。



かなりの大魔術を連続使用してきたが、

それらは俺個人の魔力ではなかった。



実際には吸収という能力に頼ってきただけだ。


幾つもの試合で蓄えてきた魔力を消費することで勝ち進んできただけだからな。


本当の意味での実力ではなかった。


あくまでも多数の生徒から手に入れた魔力が膨大だったおかげで、

ここまで勝ち上がれたにすぎない。



蓄積してきた魔力を消費することで幾つもの大魔術を使用出来ただけだ。


吸収の能力を開発して以降、

俺自身の魔力はほとんど消費してこなかった。



だからこそ。


ここに大きな欠点がある。



吸収した魔力は一時的なものであって俺自身の魔力ではない。


食事によって栄養を蓄えるように、

吸収によって魔力を溜めていただけだ。



…対戦相手から吸収した魔力の蓄積と維持は出来る。



だがそれはあくまでも一時的な期間だけでしかない。



決して永続的なものではないからだ。


一定時間というわけではないが無制限ではない。



奪った魔力は使わない限り何日でも維持出来るが根本的には俺の魔力ではないからな。



使えば失われる一時的な余剰分でしかないのが実情だ。



俺自身の魔力は休憩さえとれば回復できる。


だが、吸収した魔力は回復しない。



消費すればそれまでの使い捨てだからな。



ごく単純に消費されるだけの魔力が使った分だけ回復するという事はない。


いずれは底をつく余剰魔力でしかないからだ。



それでも奇跡的な能力である事実に変わりはないと思うが余剰分は自然回復することがない。



…これまで蓄積してきた魔力の全てを今日一日で失ってしまった。



その事実が頭を抱える問題になってしまっている。



…吸収してきた魔力を全て失った状態だからな。



明日の北条との試合は自分自身の魔力だけで戦わなければならないということだ。



これこそが最大の問題となる。



あくまでも予測だが。


俺の魔力を10とすれば、

北条の魔力は6~7程度だと判断している。



とは言え、これは魔力が完全に戻った場合での話だ。



もしも魔力が戻らなければ減少した状態で戦うことになるだろう。



その場合の魔力の差は逆転して北条が上回ることになる。


その可能性を否定できないのだが。


たった一晩で全ての魔力が回復するとは思えないからな。


間違いなく万全な状態は期待できない。



…となれば。



必然的に魔力が低下した状態で北条と戦うことになってしまうだろう。



魔力の総量がそのまま試合の結果になるわけではないとはいえ、

それでもこの差は大きいとしか思えない。



…厳しい試合になるな。



北条達が俺の魔力をどう判断しているのかは知らないが、

おそらくは吸収した魔力も俺自身の力と考えている可能性が高いだろう。


これまでの行動で見せてきた魔力を考慮して、

莫大な魔力を持っていると考えている可能性が高いはずだ。



だが、実際は違う。



吸収した力は一時的なものでしかないからな。


俺自身の魔力とは言えない部分だ。



そのうえすでに吸収した魔力を全て消費してしまっている。



魔力の総量という一点で見れば、

俺と他の生徒との認識には誤差があるだろう。



実際の俺自身の魔力は決して多くはない。


試合後に治療を行った事で沙織に近い魔力量だったのは確認済みだが、

余剰分も使い切っての治療だったからな。



沙織を超える量ではないはずだ。



だから圧倒的と言えるような差はないということになる。



その辺りの判断の誤差が俺にとっては有利に働くかもしれないが、

その程度のごまかしで北条を倒すことは出来ないだろう。



あくまでも自分自身の力で勝利する方法を考える必要がある。



…そうなると限られた魔力でどうやって戦うのかが重要だな。



ギリギリの戦いになると思われる北条との試合を乗り越える事が出来るかどうかで、

俺の実力が試されると言っても良いい。



…おそらく正真正銘の真っ向勝負になるだろう。



ごまかしは通じない。


魔力の優劣は即座に見抜かれてしまうはずだ。



魔力が足りないという劣勢をどうやってくつがえすか?


その方法を考えなければ北条に勝つことはできない。



…まずはどの程度まで魔力が回復するかが勝負の分かれ目になるだろうな。



色々と考えなければならないことはあるが、

これからどうするにしても魔力が戻らなければ作戦の立てようがない。



今日はもう寝るか。



続きは明日の朝に考えることにしよう。


まずはしっかりと休息をとる事が重要だからな。



万全な状態でなければどんな作戦を考えても上手く立ち回れない。


あれこれと考えるよりも今は体を休める事を優先したほうがいいだろう。



明日の試合を乗り切るために。


今日も早めに眠ることにした。



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