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THE WORLD  作者: SEASONS
4月20日
1245/1288

もしもあの時

「僕達は砦を出発してアストリア王国の王都を目指すつもりだったんだけどね。だけど沙織だけは砦に残ってしまったんだ。」



戦争の真実を知る為に。


そして世界の真実を知る為に。



沙織は砦に留まって、

敵の将と話し合うことを選択した。



『…ごめんね。上手く説明できないけれど…でもね。知りたいことがあるの。』



沙織は戦争が起きた理由が知りたかったようだ。



…僕としては。



戦争の理由よりも、

一日でも早く戦争を終わらせることが重要だと思っていたんだけど。



だけど沙織は、

敵であるアストリアとも向き合おうとしていたんだ。



『それはね。きっとここでしか知ることが出来ないと思うの。』



実際に戦っている人達から話を聞くために。


沙織は砦に残ることを選んでいた。



『どうして争う必要があったのか?私はアストリアの理由が知りたいの。』



死を覚悟してまで戦い続ける理由。


その意味を知ろうとしていたようだね。



『何も知らないまま先に進むことはしたくないの。』



戦争の理由と命懸けの争い。


その全てを知ったうえで、

自分で判断しようとしていたんだ。



『例え戦争の真実が知らなければ良かったことだとしても、私は全てを受け入れたいと思います。』


『それが私達が犯した罪へのつぐないだと思うからです。』



全てを知ることで、

多くの人々を殺した罪と向き合うことを望んでいたんだと思う。



『私はここに残ります。そして全てを知りたいと思います。それがきっと…私の役目だと思うからです。』



沙織は自らの進むべき道を選んでいたんだ。


ただ流されるのではなく、

自分の意志で現実と向き合おうとしていたんだ。



「沙織も生きて帰るつもりだったはずだ。翔子と一緒に…成美ちゃんが待つジェノスに帰ってくるつもりだったはずなんだ。」



それなのに。


沙織は戦場で散ってしまった。



アストリア王国が秘匿していた兵器の攻撃を受けて、

砦と共に消えてしまったんだ。



「帰りたいと思っていても帰れなかった。沙織はアストリアの攻撃によって、多くの仲間達と共に倒れたから…。」



全ての真実を受け入れようとしていた沙織は、

兵器の一撃によって死亡してしまったらしい。



『ごめんね…龍馬。わがままを言ってばかりでごめんね…。』



あの時、沙織はどんな気持ちだったんだろうか?



『この戦いはね。このまま…何も知らないまま終わってはいけないことだと思うの。』



確かにそうだったかもしれない。



だけど。



あの時の僕には何を答えればいいのかさえ分からなかったんだ。



そんな僕に沙織は想いを告げてくれていた。



決して向き合うことはせずに、

背中を向けたままで沙織の想いを聞かせてくれたんだ。



『龍馬…あのね。私…ね。あなたに出逢えて本当に良かったと思っているの。あなたと過ごした毎日が…私にとってとても幸せな日々だったと思っているの。』



それは僕も同じだと思った。


沙織がいてくれたから、

僕も幸せな日々を過ごすことが出来ていたんだ。



『だから…龍馬。私は…。私はあなたが好きです。』



背中越しの告白。



本当なら今すぐにでも返事をして、

沙織を抱きしめたいと思ったけれど。



沙織は答えを望まなかった。



零れ落ちる涙を見せないように、

声を抑えながら懸命に言葉を続けていたんだ。



『私はここに残るわ。例え何があっても…真実がどうであったとしても…私は全てを知りたいの。』



『これは私の我が儘だから、だから龍馬は先に行って…。そして彼を助けてあげて…。戦争を終わらせる為に。沢山の人々を守る為に。』



僕と共にいることよりも。


僕との別れを選んでいたんだ。



『私はこれからも龍馬と向き合っていたいの。だから今は…龍馬とは別の道を行くわ。』



決して涙を見せないように。



僕に背中を向けたままで。


沙織は別行動を選んだ。



『さよなら…龍馬。そしてもしも…もう一度出逢うことが出来たなら…。その時は、あなたの返事を聞かせて下さい。』



沙織が最後に残した言葉。



その願いを叶えることはもう二度と出来ないけれど。


僕との再会を願ってくれていたのは真実だと思っている。



『だから今は…さようなら…。』



それが僕が聞いた最後の言葉になってしまった。



沙織が願ってくれていた再会は叶わないまま、

沙織はこの世を去ってしまったからだ。



「僕もね…。この想いを伝えたかったんだ。」



だけどそれが出来なかった。



沙織が望まなかったからだけど。


それでも。


今でもそのことを一番辛く感じているんだ。



「どうしてあの時、僕は沙織を抱きしめてあげられなかったんだろうか?」



もしもあの時、沙織を一人にしなければ。


あるいは僕が側にいてあげられたのなら。


きっと淋しい想いをさせずに済んだんじゃないかな…ってね。



今でも思ってしまうんだ。



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