奇跡を起こせる人物
《サイド:御堂龍馬》
「私の目が見えるようになったのは…二人がくれた最期の願いなんだと思います。」
成美ちゃんは自分自身に起きた出来事を説明してくれたんだ。
…なるほどね。
目が見えるようになった理由を聞いて、
何故か自然と納得することが出来る気がした。
…たぶんだけど。
そこにはきっと、
何らかの別の理由があるんじゃないかな?
さすがにね。
想いや気持ちだけで、
奇跡が起きるとは思わない。
成美ちゃんの気持ちは十分に理解出来るけれど。
想いだけでは奇跡は起きないと思うんだ。
…もしも本当に奇跡が起きるのなら。
世界中で奇跡が起きているはずだからね。
目が見えるようになった理由。
そこにはちゃんとした理由があるはずだ。
…だとしたら?
思い浮かぶ答えは一つしかない。
…きっとそういうことだよね?
沙織と翔子の想いを知って、
奇跡を起こせる人物なんて一人しかいない。
不可能を可能に。
そして。
あらゆる想像を創造できる人物。
それは一人しかいないから。
少なくとも僕にはそうとしか考えられなかったんだ。
…おそらく。
成美ちゃんの瞳を治療したのは総魔だ。
他の誰にもこんなことは出来ない。
…だからきっと。
死の間際に何らかの方法で、
奇跡を届けたんじゃないだろうか?
ジェノスにいる成美ちゃんに、
二人の想いを届けて瞳に光を宿す。
そんな奇跡にも近い力を持っているのは総魔だけだ。
もちろんそのための理論や方法なんて、
僕にも理解出来ないけれど。
それでも間違いないと言い切れる自信がある。
この奇跡は総魔以外に考えられない…ってね。
総魔の想いを受け継いで、
戦争を生き残った僕だけど。
…もしかしたら。
残された想いはそれだけじゃなかったのかもしれない。
沙織と翔子の想いを受け継ぐ少女がいる。
ただそれだけのことで、
少しだけ心に安らぎを感じることが出来たんだ。
…まだ全てが無くなったわけじゃない。
…まだ全てを失ったわけじゃないんだ。
仲間を失っても。
仲間が残してくれた想いは、
今もまだ残された人々の心の中に残り続けている。
僕と成美ちゃんの心の中にも確かに存在してるんだ。
そしてそれはきっと。
深海さんのご両親にもあって、
大切な家族や友人の心の中で、
仲間達は存在しているんだと思う。
例え命が失われたとしても残り続ける想い。
その想いを受け継ぐ誰かがいる限り、
終わりは決して訪れない。
…総魔。
きみが残した奇跡によって、
僕も成美ちゃんも生きていけるんだ。
きみが残した希望がある限り、
僕達は生きていけるんだ。
総魔が死の間際に残した希望。
それが本当に実在するかどうかなんて僕にも分からない。
でもね?
それでも僕は思うんだ。
総魔の残してくれた奇跡が、
僕達が生きていく為の希望なんだ…と。
総魔が残した想いによって僕は戦争を生き延びて、
成美ちゃんは瞳に光を宿した。
その事実を否定することなんて僕にはできない。
総魔は自らの命と引き換えに、
今でも僕達を守ってくれているんだ。
心から親友と呼べる存在。
総魔に感謝の気持ちを込めたいと想う。
…ありがとう、総魔。
きみが託した想いだけは、
決して無駄にはしない。
この想いだけは、
決して忘れはしない。
その想いを心に誓いながら。
改めて成美ちゃんと向き合うことにしたんだ。




