大きな膨らみ
《サイド:文塚乃絵瑠》
…ふう。
「いいお湯だったわね~。」
奈々香と二人でお風呂に入ったことで、
髪と身体を綺麗に洗い流して、
さっぱりした気分でお風呂から上がったわ。
…それは良いんだけどね〜。
お風呂に入れたのは素直に嬉しいのよ。
…でもね?
私の表情はホンの少しだけ落ち込んだ表情を見せているかもしれないわ。
…だって、ね?
どうせ私なんて…って思うからよ。
そして自嘲気味に笑みを浮かべてしまうの。
そんな私の行動が気になったのかな?
珍しく奈々香から話しかけてくれたわ。
「どうかしましたか?」
…くぅぅ!
無表情で問い掛けてくる奈々香のせいで、
泣きそうな表情を見せてしまったわ。
…でもね?
…だけどね?
自分が情けなさ過ぎて、
落ち込んでる理由を話すことは出来なかったのよ。
「な、何でもないから…気にしないで…。」
ボソボソと答えるのが限界だったわ。
そんな私を見た奈々香は小さく首を傾げてる。
だけど深く追求するつもりはないようで、
特に気にした様子もないまま両手に持つタオルで髪の毛の水分を拭き取り始めてた。
「………。」
一言も話すことなく髪を乾かす奈々香の隣で私も髪を乾かしてみる。
………。
「………。」
お互いに会話はなくて、黙々と作業が続いてく。
そんな状況で私は悲しみに暮れていたのよ。
…まあ、ね。
…自分でも分かっているわ。
…分かってはいたんだけどね。
…でも、ね。
そっと視線を下げる。
そしてさりげなく隣へと視線を向けて、
再び視線を落としてみる。
…はぁぁぁ。
小さく左右に首を振りながら、
心の中で歎き続けてしまったのよ。
…奈々香が羨ましいわ。
自分自身に絶望する瞬間だったわね。
…ダメすぎるのよ。
言葉には出来ない悩み。
この悩みはきっと奈々香には理解出来ないと思う。
だからこそため息を吐いてしまうのよ。
…何が足りないの?
色々と努力はしてるつもりだけど。
結果には反映されないのよね〜。
その悩みを心に抱えて悲しみに暮れてしまったのよ。
…どこかに幸せになれる魔術がないかな?
なんて思った瞬間に、
余計に虚しさが押し寄せてしまったわ。
…もうやめよう。
考えれば考えるほど、
虚しくなってくるからよ。
現実から視線を逸らすことにしたの。
気にしなければ、気にならないはず…よね?
無理に思い込もうとしても思いきれない自分に嫌気がさすけれど。
ここで落ち込んでいても解決なんてしないのよ。
…さっさと服を着よう。
複雑な心境で制服に手を伸ばしてみる。
隣にいる奈々香はまだ髪の毛を乾かしているようね。
身体に巻かれたバスタオルの上からでも分かる大きな膨らみ。
その膨らみを羨ましく思いながら逃げるように着替え終える。
「先に出るからね~。」
「………。」
声をかけた私にちらりと視線を向けた奈々香は小さく頷いてくれたわ。
それだけの仕種を見せて作業を再開する奈々香から目を背けた私は、
現実から目を逸らすために脱衣所から逃走したのよ。




