僕が得たもの
校舎に向かって学園を歩く。
僕と並ぶ淳弥の後ろに、
里沙と百花がついてきてくれているんだけど。
こうして学園内を歩くのは何日ぶりだろうか?
戦争に参加しなかった生徒達が、
のんびりと学園生活を送っている姿が見える。
平和な風景だ。
楽しそうに日々を過ごす生徒達を羨ましく思ってしまう。
ついこの間までは僕もあんなふうに笑えていたはずなのに。
…それなのに。
今ではもう。
笑い方すら分からない。
ただただ悲しみを感じてしまうからだ。
だから…というわけでもないけれど。
自然と視線が下に向いてしまう。
そして僕の瞳は自らの両手を映し出してしまうんだ。
…今の僕にはもう。
あの頃の日々は望めない気がする。
両手を眺めながら、
失ってしまったものを考えてしまうんだ。
…僕は人を殺しすぎた。
…僕のこの手はもう血にまみれている。
幾千、幾万の命を奪ってきた。
必死に戦場を駆け抜けて。
ルーンを手に、魔術を駆使して。
アストリアの兵士達を殺し続けてきたんだ。
積み重なる死体。
広がる血だまり。
それらを踏み締めながら戦場を駆け抜けた。
米倉さんや黒柳所長は僕を英雄と呼ぶけれど。
だけど僕の心はその言葉を拒絶している。
どうしてかなんて…考えるまでもないよね。
数え切れないほどの人の命を奪ってきたからだ。
僕の体は傷を負い。
僕の手は血で汚れ。
僕の心は悲しみに包まれている。
それでも傷は魔術で消えるし。
血は水で流れてくれる。
だけど心を覆う闇は消えないんだ。
罪悪感とも呼ぶべき心の傷はなくなりはしない。
多くの人々を殺して。
多くの仲間を犠牲にして。
独りになった心の傷は、
決して癒えることはないんだ。
…僕は多くの罪を犯した。
僕の手は…僕が殺した人達の血で汚れているんだ。
だから僕は英雄なんかじゃない。
僕はただの人殺しだ。
戦争を生き残るために人を殺した。
その罪によって僕の心は暗く澱んでいる。
…今の僕はもう、彼等のようには笑えないだろうね。
罪を知らずに汚れを知らない生徒達を見て思う。
例え戦争に勝利しても。
この心に残るのは罪悪感だけだ。
大切な仲間を失い。
心が壊れ。
笑顔を失った。
戦争を生き残った僕が得たものは、
共和国の平和と人を殺せるだけの力。
ただ…それだけだったんだ。




