どちらも
「………。」
学園長は何も言えない様子だった。
自慢の孫だと思っていた悠護さんと、
不肖の孫だと思っていた悠理。
どちらも戦争という名の戦いに挑んで戦場に散ってしまったからだ。
二人がどんな活躍を見せて、
どんな想いで死んでいったのかなんて学園長には分からない。
それは僕でさえ分からないことだけど。
それでも命懸けで戦ったという事実は本物で事実だと思っている。
その想いだけは忘れてはいけないんだ。
「悠理も最期まで戦い抜いたこと。その想いだけは分かってあげてください。」
心から願ってしまう。
悠理のことを知っているから。
悠理が近藤家に受け入れてもらえない存在だったことを知っているから。
だからこそ学園長に願ったんだ。
最期まで全力で戦った悠理を認めてあげてほしい、と。
悠理は決して落ちこぼれなんかじゃない、と。
認めてあげてほしかったんだ。
「僕は知ってます。悠理は落ちこぼれなんかじゃありません。悠理も立派な魔術師で、大切な仲間なんです。」
それだけは理解してほしいと願う僕を見て、
学園長は小さく頷いてくれていた。
「…申し訳ありません。」
学園長という立場を気にせずに、
僕に謝罪してくれたんだ。
例え戦争の内容を知らないとしても、
戦争を生き抜いた僕の言葉には十分過ぎる重みがあったのかもしれない。
だから…かな。
学園長は謝罪してくれたんだ。
そして同時に。
悠理を落ちこぼれだと決め付けて見放してしまったことを深く反省してくれていたんだ。
「私が至らないばかりに…ご迷惑をおかけしました。」
「い、いえ…。」
僕に謝罪されても困るというか、
そういうことを求めてるわけじゃないから対応に困ってしまう。
…だけど。
例え見込みは少なくても、
もっと真剣に向き合っていれば…?
あるいは戦力として十分な力を持たせていれば…?
悠理は死なずに済んだかもしれない。
そんなふうには理解してもらえたのかもしれない。
実際にどうかは分からないけれど。
学園長は素直に謝罪してくれたんだ。
「悠理のことは私の責任です。」
落ちこぼれと呼んで不要な存在と考えていたことを過ちだと認めてくれたんだ。
「申し訳ありません。」
何度も謝罪してくれる学園長だけど。
僕としては学園長を責めようなんて思ってない。
だけどね。
どうしてもこれだけはお願いしておきたかったんだ。
「認めてあげてください。今からでも遅くはないはずです。悠理も家族だと認めてあげてください。ただそれだけのことできっと…悠理は喜んでくれると思います。」
孤独な存在ではなくて、
家族に認められる存在であること。
ただそれだけを願うんだ。
「近藤悠理も近藤家の一人です。それだけは認めてあげてください。」
「…ええ、そうですね。」
一心に願う僕の言葉を聞いた学園長は涙を流してくれていた。
…そして。
何も言わずに。
何も語らずに。
涙を拭ってから僕と向き合ってくれたんだ。
「近藤悠護と近藤悠理の葬儀は当家で行わせていただきます。どちらも大切な家族ですので…。」
…どちらも、か。
学園長の言葉を聞いた瞬間に、
僕はほっと安堵の息を吐いていた。
想いは伝わると実感したことで安心出来たからだ。
「お願いします。」
学園長を信じて、
悠理の話を終えることにした。




