悠理と悠護
「さて…。それでは現状の説明から始めることにしようか。」
改めて全員に説明してくれるらしい。
「ひとまず現在の状況だが、美由紀が率いていた共和国軍の活躍によってアストリア王国は滅亡した。」
軍も王族も全滅。
その結果としてアストリア王国は歴史から消えることになる。
「だが、その戦闘によって派遣していた共和国軍は全滅。そしてアストリアの領土は消失して海となって消え去った。」
文字通りの意味だね。
単純に滅びたわけではなくて、
国そのものが失われてしまったんだ。
「現在も海上の捜索は続いているが、生存者の可能性は絶望的だろう。」
兵器が発動したためにアストリア王国は消滅。
そして生存者は一人もいない。
…僕を除いて、だけどね。
ここまでは僕も聞いている話だけれど。
初耳となる学園長は戸惑っている様子だった。
「皆…亡くなったのですか?」
「…ああ。」
まだ事情を知らない学園長に米倉さんが事実を告げる。
「あの状況ではそうとしか考えられない。残念だが、国境警備隊も含めた全員が死亡したと考えるべきだろう。」
「………。」
隠し事はせずにはっきりと答える米倉さんの説明を受けた学園長は小さくため息を吐いていた。
「それでは…悠護も倒れたのですね?」
「言い難いことだが、近藤悠理もだ。」
「………。」
僕からの説明を聞いて全てを知っている米倉さんが補足してくれた。
その結果として学園長の悲しみが増えてしまったようだ。
「…やはり、悠理も参加していたのですか。」
学園長は知らなかったらしい。
おそらく報告を受けていなかったんじゃないかな?
だけど学園内に悠理がいないことには気付いていたようだ。
だから考えていたのかもしれない。
…その可能性を。
悠理が戦争に参加している可能性を考えていたんだと思う。
「あの子は…悠理はお役に立てたのでしょうか?」
思い詰めるような表情で呟く学園長の質問に、
どういう期待が込められているのかは分からない。
だけど今となっては学園長の質問に答えられる人物は僕しかいないと思う。
「彼女は最後まで精一杯戦ったと思います。少なくとも僕と共に行動していた悠理は必死に生きようとしていました。みんなで揃って生きて帰ることを願っていたんです。その想いだけは理解してあげてください。」
「…あなたは生き延びることが出来たのですね。」
「はい。」
「悠護と悠理は…どうでしたか?」
………。
どう答えるのが良いんだろうか?
難しい質問だとは思うけれど。
事実をありのままに答えるしかないとも思う。
「アストリアの砦での戦いと陰陽師軍との戦い。そのどちらにも二人は立ち向かいました。」
悠護さんは最前線で、
悠理は後衛で、
どちらも生き残る為に必死に戦っていたんだ。
「僕は最後まで見届けることが出来ませんでしたが、別行動になる前に悠護さんが悠理を守ると約束してくれたんです。」
…だからきっと。
あの二人は心を通わせることが出来ていたんじゃないかな。
「お互いに支え合って、最後まで戦ったと思います。」
推測部分もあるけれど。
それが僕に答えられる精一杯だった。
陰陽師の軍との戦いの途中で戦闘を離脱した僕には、
そのあとの出来事が分からないから。
悠理と悠護さんが和解して共に助け合った事実を僕は知らない。
武藤君がどんな想いで悠理を守り抜いたのかも僕は知らない。
それでもね。
僕は思うんだ。
「陰陽師軍を足止めして僕達を守ってくれた二人には感謝しています。」
みんながいてくれたから、
僕は今も生きていられるんだ。
沢山の人達が命懸けで戦って、
みんなが道を切り開いてくれたから、
共和国が助かったんだと思っている。
だから。
悠護さんや悠理も共和国を守る為に。
そして今を生きる沢山の人達の為に。
「二人も全力を尽くしたと思います。」
「…そう、ですか。」
僕の言葉を聞いた学園長は、
言葉をなくして黙り込んでしまっていた。




