鍵の使い道
「どうだった?」
「…今の私ではギリギリでした。運が悪かったら失敗していたかもしれません。出来るならもう一度挑戦して、確実な攻略を目指したいと思います。」
…はあ?
…奈々香でギリギリって。
それってもう、私だったら完全に無理よね?
「もう一度行くのは良いけれど、その前に私が行ってきても良いかしら?」
「…はい、どうぞ。」
彩花の問い掛けに奈々香は疲れきった表情で頷いてる。
「…私は休憩をとって魔力の回復に努めます」
「ええ、そのほうがいいわ。ゆっくり休んでいていいわよ。」
奈々香との話し合いを終えた彩花は、
未来が用意してくれた食事と向き合っているわ。
「その前に食事かしらね。」
…う~ん。
さすが彩花ね。
ボロボロの奈々香を見ても全く不安を感じてないみたい。
でもまあ、今はそれよりも奈々香が心配よね。
「奈々香も食べる?食欲ある?」
「………………………………………………。」
…どうしてそこで黙り込むの?
「乃絵瑠さんが作った料理?以外なら食べます。」
…くっ!
奈々香は真顔で言い切ったわ。
「奈々香までそういうことを…っ。」
本気で泣きそうになってくるけれど。
泣いてもどうにもならないから、
しぶしぶ奈々香の夕食も用意してあげたわ。
その間に一言も話さない奈々香。
そして黙々と食事を進める彩花。
そんな二人の姿を見て思うことはただ一つ。
…なんか。
本気で保護者をさせられてる気がするわね?
学園長にも言われたけれど。
私は保護者として定着しつつあるみたい。
彩花と奈々香は協調性という言葉が欠落しているし。
あずさは特にそうだけど。
未来も基本的に人の話を聞かないから。
自己中心的と言うか、なんて言うか。
自由奔放な仲間達の中にあって、
仲間の為に食事の用意をする私は完全に母親の心境だったりするわ。
まあ、夕食を作ったのは未来だけどね。
それは一人分よりもまとめて作ったほうが楽だからという理由であって、
好意で用意してくれたわけじゃないと思う。
…あとはまあ。
私の作るご飯なんて食べたくないという理由でもあるでしょうけどね。
未来、彩花、奈々香。
3人に拒絶された私の料理。
あずさは何も言わなかったけれど。
もしも私が作ったと言ってたら死んでも口にしなかったと思う。
そんな仲間達からの扱いに複雑な心境になるんだけれど。
それでも私は奈々香のために食事を提供してあげたのよ。
「はい、どうぞ。」
不満を抑えて笑顔で差し出す夕食。
奈々香は言葉には出さないけれど。
両手を合わせて小さく頭を下げてくれていたわ。
奈々香なりの『いただきます』という仕種なのかな?
そんな仕種を眺めてから、
もう一度彩花に振り返ってみる。
「そう言えば、もう一つ聞きたいことがあったんだけど?」
「何かしら?」
「学園長から預かった鍵よ。あれって結局、何に使うの?」
まだ一度も使ってないはずよね?
地下に入る為の鍵だと思ってたのに。
扉のどこにも鍵なんてかかってなかったわよね?
「もしかして私が知らないだけで、もうすでに使用済みなの?」
私が気付かなかっただけで、
実はもう使ったあとだったりするのかな?
なんて思ったんだけど。
どうもそういうことじゃないみたい。
「この鍵は10番目の扉を開く時に使うのよ。」
…ああ、なるほど。
最後の扉を開く為の鍵なのね。
「最後の扉だけ鍵がかかってるの?」
「ええ、そうよ。学園長から預かったこの鍵と理事長の持つ鍵の二つが揃わないと最後の扉は開かないわ。学園長は留守にしてるから預かってきたけれど。理事長の持つ鍵は必要な時が来たら借りに行くつもりよ。」
…なるほどね~。
そういうことなら使ってなくても当然よね。
今だかつて米倉美由紀代表しか攻略出来てない最後の暗黒迷宮。
その迷宮に無謀な挑戦をさせない為の安全対策ってところかな?
ひとまずそう判断することにしたのよ。




