素晴らしい高等技術
《サイド:文塚乃絵瑠》
…さて、と。
あずさの食事も終わって、
未来と私の分の食器も片付け終えたわ。
今は空いた時間で魔導書を読みながら一人きりで留守番をしてるところよ。
すでにあずさもいない。
夕食を終えたあずさは食後の休憩もそこそこに、
彩花の帰りを待つのを諦めて2番目の暗黒迷宮へと旅立って行ったからよ。
1番に入った未来。
2番に入ったあずさ。
5番に入った彩花。
6番に入った奈々香。
まだ誰も帰ってこない状況で暇を持て余してるのよね~。
「こんなに広い部屋に一人きりって、思った以上に寂しいわね。」
やることがなくて呟いてみるけれど。
応えてくれる仲間は一人もいないのよ。
…まあ、仮にいたとしても。
返事をしてくれるかどうかは疑問だけどね。
「暇すぎる~!!」
魔導書を読むのも面倒になってきて、
不満をぼやいてみた直後にまた扉が開かれたのよ。
「…ん?」
誰か帰ってきたのかな~?なんて考えながら視線を向けてみると彩花が立っていたわ。
「あ、お帰り彩花。どうだった?怪我はしてない?」
ようやく話し相手が出来たことで笑顔で問い掛けてみると。
彩花はいつものように妖しく微笑みながら頷いてくれたのよ。
「大丈夫よ。一度攻略した迷宮なんて暇つぶしにもならないわ。」
…う~ん。
なんか本当に遊んできたっていう感じよね。
余裕の表情で答える彩花に疲れは全く感じられなかったわ。
「それなら良いんだけどね~。それより未来が夕食を作ってくれてるんだけど…食べる?」
「ええ、乃絵瑠が作ったのでなければ頂くわ。」
…うっわぁ~。
はっきりと言い切られてしまったせいで言葉を詰まらせてしまったわ。
「彩花までそういうことを言うの?」
色々な意味で泣きそうになる心を気力で支えながら問い掛けてみる。
「味には自信があるのよ?」
必死の抵抗をしてみたの。
だけどね?
「そうね。人を殺せる『味付け』なんて、さすがの私でも真似出来ない素晴らしい高等技術だと思っているわ。」
…くっ。
ささやかな私の抵抗を一撃で粉砕してくれたのよ。
嫌みたっぷりの発言を受けて一撃で撃沈してしまったわ。
「ぅぅ…。もう良いわよ。どうせ私なんて…」
激しく落ち込んでしまったんだけど。
彩花は私の悩みなんて全く気にせずに笑顔を絶やすことなく問い掛けてくる。
「それよりもあずさと未来は?」
「えっと。あずさなら1番を突破してから2番に向かったわ。未来は空いた1番に挑戦中よ。ちなみに奈々香はまだ出てきてないわ。」
「そう。大体予想通りね。」
…そうなの?
まあ、確かに彩花の言ってた感じで進んでるような気はするけどね。
奈々香はまだ帰ってきてないし。
私の出番もまだだからよ。
「未来が迷宮を出てきたら、いよいよ乃絵瑠の出番よ。」
「…う~ん。さっきも聞こうと思ってたんだけど、私だけ扱いが違うんじゃない?」
彩花の夕食を用意しながら問い掛けてみると。
「ふふっ。それじゃあ少しだけ教えてあげようかしら?」
珍しく説明してくれる気になったみたい。




