帰港
《サイド:御堂龍馬》
…ふう。
気が付けば午後10時を過ぎているようだ。
これほど長時間、船に乗り続けたのは今回が初めてじゃないかな?
深夜に救助されてからすでに20時間近くが経過している。
僕達が乗る軍船はほぼ一日をかけて、
旧アストリア王国から港町ジェノスへと帰港したようだ。
…なんだか懐かしいかな。
港に入って接岸する船の様子を甲板から眺める。
懐かしいジェノスの風景は以前のまま何も変わらないね。
戦争の被害に巻き込まれなかったジェノスは数日前のままだった。
…それなのに。
たった数日間、離れていただけなのに。
すごく懐かしい気がしてしまったんだ。
「…本当に帰ってこれたんだ。」
出来ることならみんなと一緒に帰ってきたかった。
だけど帰ってこれたのは僕だけだった。
そのことがすごく寂しく思えるんだけど。
それでも僕の傍には淳弥がいるし。
里沙や百花もいる。
特風の仲間達と共に、
ジェノスの町を眺めているんだ。
「ジェノスか…。」
船から眺める町はとても静かで、
とても懐かしく感じてしまう。
この気持ちはなんだろうか?
何故かすごく長い間、離れていたような…そんな気がするんだ。
まるで何年も離れていたかのような感覚にさえ思えてしまう。
…どうしてかな?
第2の故郷とも呼べるジェノスの町並みを見ているだけで、
こみあげてくる何か感じてしまうんだ。
ホンの一週間ほど前までは沢山の仲間達と共に過ごしていた学園での生活。
…なのに。
それが今ではもう失われた日々だから…なのかな?
天城総魔。
常盤沙織。
北条真哉。
美袋翔子。
深海優奈。
近藤悠理。
武藤慎吾。
大切な仲間を失って、僕は独りになった。
楽しかった日々は思い出になって、
共に高みを目指した仲間達はもう…どこにもいない。
「この町に帰ってこれたのは僕だけ…か。」
生きて帰ってくると誓い合った仲間達はもう何処にもいない。
僕だけが助かって、
仲間はみんな亡くなってしまったんだ。
その事実を嫌でも思い知らされてしまう瞬間だった。
…もうこの町にみんなはいないんだね。
この町での楽しかった日々の思い出が僕の心を苦しめる。
『みんながいない町』
そう思うだけで、
見慣れたはずの景色がいつもと違って見えるんだ。
「これが…現実なんだね。」
絶望にも近い感覚。
孤独を感じる心が僕の心を悲しみに染めてしまう。
…もしも叶うのなら。
みんなで揃って帰ってきたかった。
そう思っても現実は変わらない。
だからこそ考えてしまう。
…総魔。
…きみが守り抜いたんだ。
…この町を。
…そして共和国を。
…きみがその命を賭けて守り抜いたんだ。
だから。
次は僕の番だ。
総魔が守り抜いたこの町を、
今度は僕が守ろうと思う。
この平和を誰にも奪わせはしない。
そしてこの町を失わせはしない。
…総魔が守り抜いたこの町を今度は僕が守り抜く!
ジェノスの町並みを眺めながら、
決意を新たに誓いを立てる。
失ったものは大きいけれど。
残されたモノの価値も大きいからね。
僕にはまだ守るべきモノがある。
僕にはまだ果たすべき役目がある。
「僕にはまだ…叶えたい夢があるんだ。」
自分自身に言い聞かせるように呟いてみる。
そんな僕の想いを、
隣に立つ淳弥は静かに見守ってくれていた。




