未来の出番
『ガチャッ…』と、
小さな音を立てて開く扉に気づいた私と未来が視線を向けてみると。
「ただいまですぅ♪」
暗黒迷宮を無事に突破した様子のあずさが、
いつも通りの元気な笑顔で帰ってきたのよ。
「おかえり、あずさ。」
明るく元気に帰ってきたあずさを私も笑顔で出迎える。
そして尋ねることにしたのよ。
「それで、どうだったの?怪我はない?」
「楽勝ですぅ♪」
念のために聞いてみたんだけど。
見た目通り特に問題はないようね。
私の質問に素直に答えてくれたあずさだけど。
「………?」
室内を見渡しても目的の人物が見付けらないからかな?
小さく首を傾げていたわ。
「あれれぇ?お姉様はいないんですかぁ?」
彩花の不在に気付いて、
淋しそうな表情を見せているのよ。
…うぅ~ん?
彩花のどこに惹かれてるのか知らないけれど。
これってどう考えても依存状態よね?
彩花がいないだけで泣きそうとか、
どう接すればいいのか悩むわ。
「彩花なら5番目の部屋に入ったわ。あずさが迷宮に入ってすぐだから、1時間くらい前になるわね。」
「うぅ〜。寂しいですぅ。」
聞かれたから答えたのに、
泣きそうなのは変わらないみたい。
…でもね。
「まあまあ、それはそれとして。」
あずさが帰ってきたことで、
今度は未来が動き出したのよ。
「あずさが帰ってきたから、次は私の番ね。」
…ええ、そうね。
今度は未来の順番だから、
あずさと入れ代わりに扉に向かうみたい。
そしてそのまま暗黒迷宮を目指すのかと思ったんだけどね。
「…ああ、そうそう。」
あずさが出て来たばかりの扉を開いた未来は何故か私に振り返ったの。
「悪いけど食器は適当に片付けておいてね。それぐらい『なら』乃絵瑠『でも』出来るでしょ?」
…くっ!
…言いたい放題ね。
遠回しに馬鹿にされてるのがものすごく分かったわ。
でもね?
反論する気にはなれなかったから、
素直に引き受けることにしたのよ。
「別にいいけど、全部片付けていいの?」
「ええ、いいわよ。」
あっさりと答えたあとで、
未来は隣の部屋に歩みを進めて1番の扉に向かって行ったわ。
「それじゃあ、あとはよろしくね〜。」
私とあずさに見送られながら、
未来も迷宮に旅立って行ったの。
そんな未来の後ろ姿を見送ってから、
今度はあずさに話しかけてみる。
「未来が夕食を用意してくれてるんだけど、あずさも食べる?」
「食べますぅ♪」
迷わずに頷いてからお腹をさすってる。
…と言うことは、あずさもお腹が空いてるってことよね?
「それじゃあ、用意するわね。」
あずさを引き連れて食堂区画へ戻ることにしたの。
大人しく席に座って待つあずさに、
未来が用意してくれた食事を差し出してみる。
「はい、どうぞ。」
「いただきますですぅ♪」
笑顔一杯に食事を始める姿は見てる分には可愛らしいと思うわ。
悪意がないと言うか、無邪気と言うか。
場を明るくしてくれる雰囲気があるのよ。
これで彩花への依存がなかったら、
どこに出しても恥ずかしくない小悪魔的美少女なんだけどね。
彩花への依存が強すぎて、
その他への対応がぞんざいなのが唯一の欠点だと思うわ。
まあ、他人の感情に関してとやかく言うつもりはないけどね。
ひとまずあずさの様子を眺めながら、
暇つぶしに話しかけてみることにしたの。
「それで、暗黒迷宮って結局どんな所だったの?」
「行けば分かりますよぉ♪」
無邪気な笑顔で答えてくれてるけれど。
説明を放棄するに等しい発言よね?
…やっぱり彩花以外はどうでもいい扱いなのね。
結果的に何も教えてくれなかったんだけど。
「楽勝ですぅ♪」
…ということらしいわ。
とりあえず追求は諦めるしかないわね。
無理に聞き出さなくても、
もうすぐ嫌でも分かることだから。
ひとまず迷宮に関しては気にしないことにしたのよ。
「未来が帰ってくるまでまたしばらく待機になるわね~。」
それまで特にやることもないから、
食事中のあずさに視線を向けてみる。
「お姉様はまだかなぁ?」
目の前にいる私を気にせずに、
あずさは無邪気な笑顔で彩花の帰りを待ち侘びているわ。
隣の部屋へ続く扉に視線を向けるあずさだけど。
彩花も奈々香もまだ帰ってくる気配はないのよ。
「制限時間が8時間ってことは、それなりに時間がかかるのかな?最長『8時間』は帰ってこないのかも?」
何気ない疑問を口に出してみたんだけど。
それでもあずさは私を気にした様子もないまま彩花の帰りを待ち続けてる。
「お姉様ぁ♪お姉様ぁ♪」
どうあっても彩花以外に興味はないようね。
「…まあ、いいけど。」
上機嫌で食事を進めるあずさを眺めながら、
私もみんなの帰りを待つことにしたのよ。




