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THE WORLD  作者: SEASONS
4月19日
1168/1212

絶対に離さない

《サイド:フェイ・ウォルカ》



セルビナ方面の国境付近。


北條辰雄の話が終わったあとで、

仲間達と共に撤退の準備を始めることになった。



戦争の中断によって軍を撤退させるという話になったからな。



北條辰雄が率いる国境警備隊だけを残して、

多国籍軍は国境を離れるという流れになった。



ランベリアの学園長であるリン・ラディッシュの指揮によって着々と進む撤退準備。


その途中で。


俺と共に戦争に参加していたマリアが話しかけてきた。



「セルビナからも停戦の書状が届いたらしいわよ。これで戦争は終了ね。」



…ああ、そうだな。



1対1での戦争になればセルビナが不利だからな。


早々に停戦を申し込んで来るのは当然だろう。



相手がセルビナ単独なら、

共和国の抱える軍事力で十分に抵抗出来る。



圧勝とまでは言えないとしても、

まず間違いなく勝利はできるだろう。



…だからこそ。



本格的な『戦闘』に発展する前に、

停戦を申し込んで来るのは妥当な判断になる。



「だけど…これで本当に終わるのかしら?」



…さあな。



これからどうなるかは分からないが、

停戦は終戦ではない。



勝敗が決したわけではないからだ。



「決着がつくまで油断は出来ないだろう。」



あくまでも停戦だ。


終戦ではないと考えてマリアに答える。



「しばらくは両国共に警戒が続くだろう。」



それに。


再びミッドガルムが動く可能性も否定出来ない。



「まだ終わったとは言い切れない。」


「ええ…そうよね。まだ終わったわけじゃないのよね…。」



不安そうな表情を見せるマリアだが、

落ち込むほど深刻な状況ではないとも思っている。



「楽観は出来ないが、よほどのことがない限り戦争が再開されることはないはずだ。それほど心配する必要はないだろう。」



マリアを安心させるために声をかけてから、

周囲で撤退の準備を進める仲間達にも視線を向けてみた。



『カーター・ベルナンド』


『ジェリル・ジョナ』


『ピーター・フロンド』



マリアも含めて仲間達は直接的には戦争に参加していなかったが、

共和国を守る為の壁として俺や国境警備隊の後方を守ってくれていた。



「全員が無事で良かった。それだけでも十分な結果だ。」


「ええ、そうね。」



マリアも納得してくれたが、

それは俺に対して言いたかった言葉だったようだ。



「私達はともかく。危険な場所にいたのはあなたのほうなのよ?怪我はしてない?大丈夫なの?」


「ああ、大丈夫だ。」



最前線に参加していたからな。


不安にさせていたのは俺のほうだろう。



だからこそ心配してくれるマリアに感謝しながら笑顔で答えることにした。



「怪我はない。このルーンが俺を守ってくれていたからな。」



視線を向ける手元にはラングリッサーがある。



…どういう経緯で俺の手元に届いたのかは分からないがな。



北条真哉が守ってくれている限り。


俺は決して敗北しない。



俺を想う友の願いが在る限り。


俺は決して倒れない。



北条真哉の想いが込められたルーンが在るからこそ誰にも負ける気がしなかった。



「理由も意味も…価値も力も…関係ない。」



ここにルーンが在り。


俺と共に在る。


それだけが重要だった。



「ねえ…。フェイは北条真哉も…常盤沙織も…亡くなったと思う?」



…ああ。



残念だが、否定は出来ない。



「おそらくそうだろうな。もちろん認めたくないと思う気持ちはあるが…真実から目を逸らすつもりはない。」



俺は全てを受け入れて生きていくつもりだ。



「そしてそれは…おそらく北条真哉も願っているはずだ。俺はそう信じている。」



どんな事情があるとしても。


北条真哉の意志を受け継いで生きていくと心に決めている。



「例え戦争が終わっても俺の戦いは終わらない。俺の人生が続いていく限り、俺は戦い続ける。いつまでも…このルーンと共にな。」



改めてラングリッサーを握り締める。



…友が遺した力だ。



本来ならラングリッサーは俺自身のルーンではないからな。


通常のルーンのように自分の意思によって自在に発動と解除を行うことは出来ない。



だが…だからと言って邪魔だとは思わない。



そもそも重量が存在しないからな。


大きさはともかくとして、

持ち歩く事に関して負担にはならない。



「北条真哉の意志を受け継いで俺も共和国を守り抜く。その為なら、どんな戦場でも駆け抜けよう。」



それが俺の本心なのだが、

マリアにとっては望まない願いなのかもしれない。



「…私はね。フェイが無事ならそれでいいの。他には何も望まないわ。私はあなたに生きていて欲しいのよ。」



俺の無事を願ってくれるマリアにとって、

俺が戦場に立つのは不安でしかないらしい。



「心配するな。俺は決して死にはしない。お前を残して死にはしない。」



共にこの国に逃げた伸びたあの日から、

守り続けると決めているからな。



マリアを残して先に死ぬようなことは絶対にしない。



「例えどれほど絶望的な状況に追い込まれたとしても、俺はお前を絶対に離さない。」


「…ええ。信じているわ。」



守り続けると誓う俺の手に、

マリアがそっと手を重ねてくれた。



その瞬間に。


マリアの体を引き寄せて力強く体を抱きしめる。



「約束する。俺は決してお前を離しはしない。これからもずっと、お前を守り続ける。その想いは永遠に変わらない。」



素直に。


そして正直に。


想いを伝える。



そんな俺の想いに触れて、

マリアは小さく頷いてくれていた。



「愛しているわフェイ。だから…だからお願い。無理はしないでね。」


「ああ、そのつもりだ。」



互いに想いを重ね合わせる俺とマリアだが、

この時の俺達はまだ迫り来る危機に気付いていなかった。



これから始まる本当の戦い。



命を賭けた『戦い』の訪れが、

もうそこまで迫っているということに。




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