封じられた魔導書
《サイド:上矢遥》
エスティア魔導図書館の地下3階。
全ての鍵を解除したことで、
ついに最後の扉が開く。
『ギギギィィ…ッ!』と、
軋むような音を立てながら開く扉。
その向こう側には、
小さな部屋があるだけだったわ。
見た感じで言うと教室の半分程度の小さな部屋ね。
部屋の奥には本棚が『二つ』あって、
部屋の中央に作業用の机が一つあるだけの質素な部屋なのよ。
「ここに禁呪があるの…?」
室内に歩みを進めてみる。
仲間達と共に室内に入ってから、
ひとまず右側の本棚へと歩み寄ってみたわ。
そしてあっさりと発見したのよ。
禁断の魔術と記された魔導書をね。
全部で10冊あるみたい。
歴史から消し去られて、
使用を禁じて封印された魔術。
その内の一冊にホワイト・アウトも存在するけれど。
これに関してはどれだけ魔導書を解読しても身につけられる魔術ではないでしょうね。
前回の魔術大会の直後に新たに禁呪として加えられた魔術だけれど。
この魔術を使えるのは吸収の特性を持つ人物だけだからよ。
全属性を冠する常盤沙織と同様に、
万能という能力を持ってあらゆる属性を得意とする私でさえ、
吸収に関してだけは扱いきれない能力になるわ。
そういった特殊な魔術もあるから一概には言えないけれど。
全ての魔術を極めるのは難しいでしょうね。
禁呪の内で幾つの魔術を覚えられるのかは分からないけれど。
限られた日数で覚えようとするのなら、
一つか二つが限界だと思うわ。
全種類の禁呪を身につけるのは不可能なのよ。
もしもそれが出来るとしたら、
例の天城総魔や…それこそウィッチクイーンくらいでしょうね。
その事実が悔しいとは思うけれど。
今はそこを気にしていても始まらないの。
今は自分に出来ることを一つずつやっていくしかないわ。
そんなふうに考えながら、
他の魔導書にも視線を向けてみる。
他にも魔導書は沢山あるみたいだけど。
『秘匿』か、あるいは、
『極秘』と記されているわね。
『禁止』はしないけれど、
使用を『控える』という扱いの魔術よ。
米倉美由紀代表が扱うスパイラル・シャドウやマインド・ブレイク等。
精神を崩壊させるに足りる凶悪な魔術もここに含まれるみたい。
そしてその類の魔導書は合計で30冊ほどあるわ。
それぞれの魔導書ごとに一つの魔術を記載しているようで、
効果の内容や実験記録などの様々な情報が記されているみたい。
私が眺める右側の本棚だけでも、
合計40の魔導書があるのよ。
そして左側の本棚に視線を向けて見ると、
すでに仲間達が適当な魔導書を手にとって内容を確認している途中のようね。
「美和子、そっちはどう?」
魔導書の内容を問い掛けてみたことで、
本棚を眺めていた美和子が答えてくれたわ。
「こっちは『特殊魔術』と『犠牲魔術』。あとは『未確認魔術』に分類されてるみたいよ。」
…ああ、なるほど。
通常の理論とは異なる理論を持つ特殊魔術。
そこには通常なら圧縮魔術なども含まれるけれど。
一般公開されてるような魔術はここには含まれていないわ。
ここにある魔導書は一般には公開出来ない魔術で、
危険と判断された魔術だけのはずだから。
各学園の図書室では絶対に見れない魔導書ばかりが収められているはずなのよ。
そして犠牲魔術は術者の命と引き換えか、
あるいは何らかの代償と引き換えに発動する魔術になるわね。
北条家のシューティング・スターもここに含まれるわ。
…かつて一度だけ。
北条真哉の祖父が使用した記録だけが魔導書として残されてるらしいけれど。
ルーンが使えない私達にとっては必要のない魔術になるわね。
そして最後の未確認魔術というのは、
存在はしていても実験記録が存在しない未確認の魔術のことよ。
その類の魔術の中でも特に危険性の高い魔術に関しての魔導書がここに封印されているの。
存在は確認されていても詳細な記録のない魔術というのは、
魔術師ごとの独自の魔術が多くて詳細な記録が存在しないからよ。
天城総魔と美袋翔子の『アルテマ』や、
御堂龍馬の『オーバードライブ』。
それに常盤沙織の『アストラルフロウ』もここに含まれるわ。
調査を行う前に術者が亡くなるなどの理由で記録を残せない魔術がここに含まれるの。
そういった特に殺傷能力の高い魔術に関する魔導書が並んでるみたいね。
これらの魔導書に関しては目を通したところで身につけることは出来ないけれど。
今後の参考程度にはなると思うわ。
そんな様々な魔術を含めてみると。
二つの本棚に封じられた魔導書の数は、
全部で100冊を越えていたのよ。




