何をいまさら
《サイド:栗原薫》
静けさを取り戻した夜の街道。
ウィッチクイーンが乗り込んだ馬車はあっさりと暴走を止めて、
今はのんびりと街道を進んでいるわ。
「はぁ…。」
激しくため息を吐くウィッチクイーンの姿からは疲労感が漂っているわね。
…もしかして怒ってるのかな?
あるいは呆れてるのかもしれないけれど。
妙に静かなウィッチクイーンを見て、
恐る恐る話しかけてみることにしたのよ。
「あ、あの…。助けてもらって、ありがとうございます…。」
控え目に感謝してみたんだけど。
そんな私を見たウィッチクイーンはもう一度ため息を吐いてた。
「…ったく、もう。何回死にかけたら気が済むのか知らないけれど。自分の力で立ち回れないのなら無茶するんじゃないわよ。」
…うぅ。
やっぱり怒られてるみたい。
本気で呆れるウィッチクイーンを見て素直に頭を下げることにしたの。
「ごめんなさい…。」
ちゃんと謝ってみたのよ?
そんな私の態度を見ていたウィッチクイーンはまたまたため息を吐いてた。
「はぁ…。ったく…まあいいわ。それよりもこんなところで何をしてるのよ?まさか、ジェノスにでも向かうつもりなの?」
「あ、はい。そのつもりですけど、どうして分かるんですか?」
「どうしてって、なんとなくそう思っただけよ。」
…なんとなくって。
そんな理由で分かるものなのかな?
「まあ、実際にはそれが一番、可能性が高そうかなって思っただけなんだけどね。」
「そうなんですか?」
「ええ、そうよ。だって他の町に向かう理由って特にないでしょう?マールグリナに援軍を求めるつもりなら近場の町なんて幾つもあるわけだし。首都グランバニアに向かうには道が違うし。わざわざあなた達が直接行動してる以上はそれなりに重要な目的があるわけでしょうから、方角的に考えてジェノスに向かってると考えるのが妥当でしょ?」
…あ~、確かに。
ウィッチクイーンの予想は正しいのかもしれないわね。
…と言うか。
それ以外、考えられないかも?
…でも、あれ?
…と言うことは、もしかして?
「私達が襲われたのって、向こうも同じように考えたから?」
私達がマールグリナを出たことで、
ジェノスに向かうことは簡単に予測できたってことよね?
「当然でしょ?何をいまさら…」
…うわ~。
やっぱりそういうことなのね。
だとしたらこのあともまだ襲撃を受ける可能性があるってことよね?
「結構、危険な状況だったりします?」
「最初からそう言ってるつもりだけど。まだ分かってなかったの?」
「…すみません。」
「はあ…。」
またまたため息を吐かれてしまったわ。
ちゃんと忠告したつもりでも、
私が理解してなかったことで呆れてるみたい。
「まあ、いいわ。」
私との会話を諦めたのか、
今度は学園長に振り向いてた。
「でもまあ、実際それしかないわよね?」
「………。」
状況が把握出来ずに戸惑う学園にウィッチクイーンが核心を突く。
「米倉宗一郎と合流して、マールグリナに援軍でも貰おうって、ところかしら?」
「…うっ。」
あっさりと目的を見破られたことで学園長は言葉を失ってた。
あまり…と言うか、
ほとんど何も知らない人だけど。
ウィッチクイーンは私が思う以上に頭が良いのかもしれないわ。




