叡智に至るための鍵
「あなた達は、何の為に力を求めるのですか?」
問い掛ける学園長の質問に対して、
私は笑顔を守る為と答えたわ。
そして4人の仲間達もそれぞれの想いを伝えたのよ。
「私はそんなに格好良いことは言えませんし、言うつもりもありません。ですが、ただ一つだけ願うとしたら、私は『親友』の為に力を求めたいと思います。遥の支えとなることが、私が力を求める理由です。」
美和子は親友の為と答えたわ。
「俺はこの町を守り抜く為の力が欲しいです。今までこの学園で努力して身につけてきた力が無駄だとは思いたくありませんが、今の俺では何も出来ないことを知りました。今のままでは町を守ることも家族を守ることも出来ないのです。だからと言って何も出来ないまま奪われたくはありません。なので、守り抜けるだけの力が欲しいです。もう二度と絶望しない為の力が欲しいと思います。」
新庄貴也は自分達の町を守る為にと答えたのよ。
「私はこの学園が大好きです。この町も…共和国も…大好きです。家族がいて、友達がいて、沢山の知り合いがいて、大切だと思える人が住むこの国を守りたいと思っています。戦う力がない人達の為に。そして幸せを願う人達の為に。私に出来ることがあるのなら、精一杯努力をしたいと思うんです。」
秋元景子は力の無い人々を守る為と答えてた。
「僕は何よりも仲間の為に強くなりたいと願います。5人の中では最も非力ですが、それでも自分にも出来ることはあるはずだと信じていました。ですが、結果は惨敗です。みんなを守るどころか、自分の身を守ることさえ出来ずに何も出来ないまま敗北したんです。だから…だから僕は強くなりたいです。大切な仲間を失いたくないから、戦場で生き抜く為の力を望みます。そして、みんなを守れるだけの力が欲しいんです。」
岡本渉は共に戦う仲間達の為と答えたのよ。
それぞれに想いは異なっていても、
真剣に答える彼等の気持ちに嘘偽りはないと思う。
『誓い』とも言える『願い』
5人の生徒の想いを受けて、
学園長は覚悟を決めた様子だったわ。
「良いでしょう。みなさんの想いを信じて、みなさんの行いが善であることを信じます。」
私達を信じると告げてから、
学園長は机の引き出しから『鍵の束』を取り出してくれたのよ。
「この鍵を上矢さんに預けます。あの場所で何を学んで何を得るのかは分かりませんが、決して悪用しないことだけは約束してくださいね。」
「はい!」
切実に願う学園長に力強く頷いてみせる。
「正しいと思える想いを貫く為に力を使うことを誓います。」
真剣な眼差しで応える私の瞳を見て、
学園長は笑顔を見せてくれたわ。
「良い瞳をしているわね。まるで80年前の私を見ているようです。上矢遥さん。私はあなたを信じます。あの場所で手に入れる力。それを善とするか悪とするかは、あなた次第です。どうかくれぐれも…そのことだけは忘れないでくださいね。」
「もちろんです。期待を裏切るつもりはありません。約束は必ず守ります。」
はっきりと宣言してから鍵を受けとる。
本来なら私が手に出来るようなモノではないけれど。
私を信じてくれた学園長の期待に応えるために、
私は私の信じる道を進むことにしたのよ。
「『魔導図書館』への鍵。確かに預かりました。」
しっかりと握り締める鍵の束。
これこそが共和国の叡智に至るための鍵なのよ。
「必ず正しいことの為に力を使います。共和国が築き上げてきた『知識』を決して悪用はしません。」
想いを心に刻み込んでから学園長に背中を向ける。
「行ってきます。」
挨拶を残して学園長室を出ることにしたわ。
そして4人の仲間達と共に次の場所を目指すことにしたの。
これから向かうべき場所は共和国の知識を封じた『魔導図書館』よ。
それは各学園に存在するような図書室とは違って、
エスティア魔術学園にのみ存在する立入禁止区域になるわ。
日高学園長が管理していて、
長年の知識を蓄えた共和国最大の図書館なのよ。
そこには共和国において確認されているありとあらゆる知識と技術が蓄積していて、
数千数万におよぶ魔導書が存在しているらしいわ。
もちろん魔術以外にも精霊やルーンに関する書物もあるけれど。
重要なのはそこじゃないわね。
その場所には共和国が『危険』と判断して使用を禁止した魔術。
『禁呪』も存在しているのよ。
術者の命を代償とする魔術や、
あまりにも強すぎる破壊力によって封印された魔術等々。
幾つもの封印された魔術が存在する施設。
それが『魔導図書館』なの。




