守るべきモノ
「話すと少し長くなるのですが…」
包み隠さずに全てを説明するために、
昨夜の出来事を話すことにしたの。
始まりは『謎の部隊』の追跡からになるわ。
カリーナの生徒達がミッドガルムとの国境に布陣する共和国の軍隊から離脱して、
アストリア方面へと探索に出たところから始まる。
私達を含むエスティア魔術学園と澤木京一を含むグランバニア魔導学園の生徒は、
ヴァルセム精霊学園の大塚義明の誘いを受けてカリーナ女学園との協同作戦に参加することにしたのよ。
作戦の目的はアストリア王国の国境付近で暗躍する謎の部隊の追跡調査。
結果から言えば部隊の詳細は不明のままだったけれど。
謎の部隊を率いているのがウィッチクイーンという女性であることは確認したわ。
学園に戻る前に桜井学園長からウィッチクイーンに関してはある程度の説明を受けたけれど。
それでもまだはっきりとしたことまでは分からないままになるわね。
ただ一つ分かっているのは、
ウィッチクイーンの実力は圧倒的で、
私達の実力では『到底敵わない』という事実だけ。
傷一つ付けられないどころか、
接近すら出来なかったのよ。
感じ取れた実力差は絶望的で、
前回の魔術大会に初参加していた天城総魔に匹敵するほどの魔術師だったわ。
『絶対に勝てない』と思わせるほど格上の実力者だったのよ。
そんなウィッチクイーンを前にして、
私達はぶざまなほどあっさりと全滅してしまったの。
こうして命が助かったことが奇跡的なくらい一方的な戦いだったのよ。
ウィッチクイーンが何を目的として共和国内を行動して、
私達の命を助けたのかは知らないけれど。
何も出来ないまま敗北したしまったの。
最終的に命を助けるという救済さえも、
今の私達にとっては屈辱的な出来事だったと思っているわ。
戦いを挑んで敗北しただけではなくて、
逆に命を助けられる結果になったという現実が私達の自信を打ち壊したからよ。
今の私達の実力では足手まといと判断するしかないくらい驚異的な存在だったの。
「強くなりたいんです。もう二度とぶざまな姿をさらさない為に…強くなりたいんです。」
「…そうですか。」
必死に願う私の想いを受け入れてくれたのか、
学園長は優しく答えてくれたのよ。
「力は使い方次第で善悪の価値を変えてしまうものです。ですから憎しみや悲しみの感情をもって力を望むのであれば、あなた達に教えることは何もありません。ですが、もしもあなた達が正しい行いの為に力を求めるのであれば解放しましょう。私の知識を保管した『あの場所』を…。」
…憎悪か?
…正義か?
何を目的として力を求めるのか?
その答えを求める学園長に、
誓いを立てることにしたわ。
「もちろん力を悪用するつもりはありません。ただ…今のままでは守るべきモノさえ守れません。今回は運よく助かりました。ですが次も助かるとは限りません。だから強くなりたいんです。守るべきモノを守れるように…その為に力を求めたいと思っています。」
ウイッチクイーンを倒したいと思う気持ちはもちろんあるわ。
だけどそれだけが目的じゃないの。
勝つための力よりも、
守るための力がほしいの。
私の願いはそれだけなのよ。
「それでは聞きましょう。あなたの守るべきモノとは何ですか?あなたは何を守る為に力を求めるのですか?」
私が守るべき対象。
それはただ一つ。
「私は『私の心』を守りたいと思っています。それは私が正しいと思える想いを貫く為です。」
共和国の為なんて言わないし、
世界の平和の為なんて言うつもりもないわ。
「私は私の周りにいる家族や仲間の為に戦いたいと思っています。」
大切な人達の笑顔を守り抜くこと。
「それが私の叶えたい願いです。」
ちっぽけでも確かな願い。
そんな私の想いを聞いて、
学園長は満足そうに頷いてくれたのよ。
そして仲間達にも問いかけていたわ。
「それでは、あなた方は?」
それぞれの想いを確かめる学園長に残る4人の仲間達も答え始めたの。




