12の扉
《サイド:文塚乃絵瑠》
所長室を出た私達は地下研究所のさらに地下へと続く階段に案内されて、
問題の『暗黒迷宮』を目指すことになったわ。
どこまでも続くかのような長い長い階段。
まるで地獄まで繋がっているかのような重苦しい雰囲気が漂う階段を下り続けて、
ようやく研究所の最深部へとたどり着いたの。
「どうぞこちらへ…。」
先頭を進む川島所長のあとを追って歩き続ける。
そうして通路の奥にある扉に手をかけた川島所長がゆっくりと扉を開いたのよ。
扉の向こう側。
そこには広々とした空間が広がっているのが見えるわね。
だけどここはまだ暗黒とは無縁の明るくて綺麗な部屋だったわ。
大部屋をざっくりと区画分けしたような感じで、
住み心地を徹底的に突き詰めたような綺麗な生活空間なのよ。
複数のベッドが並ぶ一画や食器棚の並べられた食堂区画があって、
魔導書の詰め込まれた本棚が並んでいる区画もあるみたい。
軽く運動が出来るような広い区画もあるわ。
ざっと見た限りでも、
2~3週間は生活出来そうな感じの住み心地の良さそうな部屋だったのよ。
…すでに彩花と菜々香はここに来たことがあるみたいだけど。
私とあずさと未来は初めて見る場所なのよ。
「遠慮せずに入ってくださいね。」
ひとまず私達は室内に案内されたわ。
「早速ですが、あなた達にはしばらくここで生活をしてもらうことになります。」
足を止めることなく歩き続ける川島所長は、
部屋の奥へと真っ直ぐに歩き続けて次の部屋へと続く扉に手をかけたのよ。
「ここが暗黒迷宮の入口です。」
ゆっくりと開かれる扉。
その先にあるのは教室と同じくらいの広さを持った薄暗い部屋だったわ。
私達が今いるこちら側の部屋とは違って何も無い部屋なのよ。
薄暗いせいか冷たくて重苦しい雰囲気があって、
ひんやりとした空気さえ感じてしまうわね。
「改めて説明しますね。」
部屋の中へと歩みを進めた川島所長が、
正面の壁に並んだ扉に視線を向けながら説明を始めてくれたの。
「冬月彩花さんと矢島奈々香さんの二人はすでに内容を理解してると思いますが、あとの3人は初めてですので、少しだけ説明を聞いてもらえますか?」
「あ、はい。お願いします。」
私が代表して返事をしたことで、
川島所長の説明が始まったわ。
「この部屋にある扉は全部で12箇所。まずは正面に並ぶ10枚の扉ですが、それぞれの扉に割り振られた番号が暗黒迷宮の難易度を示しています。」
…難易度っていうことは?
1が簡単で10が最難関ってことかな?
「冬月彩花さんと矢島奈々香さんは共に5番まで攻略されていますが、その先の6番目で中断して攻略に失敗している状況です。」
彩花と奈々香でも中断して失敗?
それってどう考えても私だと攻略不可能よね?
…なんて。
そんなふうに考えていたら、
川島所長が室内の左側に視線を向けたわ。
「奥の扉は出口になります。入口としてどの扉を選んでも、たどり着くのは同じ通路です。その通路から戻ってきたら、あの扉にたどり着くことになりますので、道に迷うということはないでしょう。」
「…と言うことは、出た先の通路から別の迷宮に入ったりも出来るんですか?」
「いえいえ、扉は一方にしか開きませんので逆走は出来ません。ですので間違って別の迷宮に入ってしまうということはありませんので安心してください。」
…なるほど。
逆走は無理なわけね。
「そして最後は後ろの扉になります。この部屋の出入口ですね。」
…確かに、これも選択可能な扉よね。
全部で12か所と言う説明は何も間違っていないわ。
「ひとまず説明は以上です。」
全ての扉の説明を終えてから、
川島所長は彩花にあとを託したのよ。




