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THE WORLD  作者: SEASONS
4月19日
1148/1212

参加の意思

静まり返る室内で、

ひとまず川島所長に今回の目的を告げることにしたわ。



「ここに来た要件は一つ。暗黒迷宮をお借りしたいと思っています。」



ポケットから小さな鍵を取り出して川島所長に見せる。



これは学園長から預かり受けた物よ。



そしてこれこそが暗黒迷宮に入るための鍵になるわ。



「その為の許可を頂けませんか?」



学園長の許可を得たことを示しながら願ってみると、

川島所長は思っていたよりもすんなりと頷いてくれたのよ。



「許可ですか。それは良いですけれど…5人全員で行くつもりですか?あの場所は誰でも参加出来る場所ではありませんよ?少なくとも…そちらの子は難しいのでは?」



困ったような表情で視線を動かす川島所長が見つめるのは乃絵瑠よ。



私達の中で乃絵瑠だけが危険視されているようね。



「えっと、私が何か…?」



戸惑う様子の乃絵瑠には、

どうして自分だけが『難しい』と言われているのかが分からないでしょうね。



未来とあずさは何も知らないでしょうし、

私と奈々香は教えていないから当然だけど。



そのせいで乃絵瑠は直接、川島所長に尋ねていたのよ。



「あの…そもそも暗黒迷宮って何ですか?」


「ああ、それはですね。簡単に言えばこの地下室の更に地下にある『実験施設』のことですよ。」



文字通り光の射さない暗黒の迷宮よ。



「この研究所の技術の結晶とも言える実験施設なのですが、かの迷宮を最後まで踏破出来た『生徒』は今だかつて一人もいません。」



私や奈々香でさえもまだ半分まで、

それが最高記録になるわ。



「娘の由美でさえも最後までは辿り着けていません。ですが、ただ一人だけ。米倉美由紀代表だけが暗黒迷宮を踏破しています。」



歴史上でただ一人。


暗黒迷宮を攻略出来たのは、

この国の代表である米倉美由紀だけなのよ。



…とは言っても。



米倉美由紀はカリーナの『生徒』ではないけれど。



その話を聞いた乃絵瑠が質問を続けていたわ。



「何となく難しそうなのは分かりましたけど…。それって私だけは参加出来ないんですか?」


「…いいえ。」



川島所長もすぐに否定したけれど。


そういうことじゃないわ。



参加できないわけではないからよ。



「入れないわけではないですけれど、危険性は高いでしょうね。」


「危険性…ですか?」



乃絵瑠は戸惑っている様子ね。



警告の意味が何なのか?



悩み続ける乃絵瑠に川島所長が説明を続けたわ。



「暗黒迷宮は光の射さない実験施設です。ですから、あなたのように『光』属性を持つ人には対極の空間となります。最も得意とする光属性を封じられた状態で迷宮に挑むことになるのですから。」


「…うわ~。」



光属性を封じられるという話を聞いて動揺しているわ。



暗黒迷宮がどんな所かは不明でも、

光を封じられるとなると魔術は当然としてルーンさえも発動出来なくなる可能性があるからよ。



最も得意とする能力が『使えない』という制限がかかる状況で、

どんな場所か分からない暗黒迷宮に挑むという恐怖。



その意味に気づいて戸惑う乃絵瑠に川島所長が問い掛ける。



「あなただけは『闇属性』を苦手としているようですので、正直な意見を言うと暗黒迷宮を突破出来る可能性は限りなく低いと思います。ですがそれでも…それでも挑戦してみたいということであれば断る理由はありませんが、どうしますか?」


「いや、どうって聞かれても…。結局、暗黒迷宮って…どんな所なんですか?」


「文字通りですよ。『暗黒が支配する迷宮』です。もちろん、ただの迷路ではありませんけれど。」



さらりと答えているけれど。


それ以上の説明は避けているように感じるわ。



必要以上の情報は与えないと意図していることが感じられるのよ。



『暗黒迷宮』



そこがどんな場所なのかは入ってみるまで分からない。



それでも私達だけが参加して、

自分だけが『不参加』とは言えないでしょうね。



どんな場所か分からずとも、

未来とあずさは参加しようとしているからよ。



それは一々確認しなくても瞳を見れば分かるわ。



そして私と奈々香もそのつもりでいるのよ。



私達が暗黒迷宮の踏破を目指しているのに、

自分だけが不参加で仲間の帰りを待つなんて言えないはず。



もしもそうしてしまえば自分だけが成長出来ないまま、

仲間達の成長を見届けることになるからよ。



自分だけが仲間達から置いて行かれてしまうことになる。



その可能性に気づいた乃絵瑠は覚悟を決めたようね。



「参加します!どこまで出来るか分かりませんけど、黙って待ってるつもりはありません!みんなが参加するなら、私も行きます!」


「そうですか、それなら良いでしょう。」



はっきりと宣言する乃絵瑠に微笑みを返してから、

川島所長は席を立ったわ。



「それでは『全員参加』ということでよろしいですね?」



確認されたことで5人揃って頷く。



「分かりました。それでは地下へ案内します。みなさん、私について来て下さい。」



率先して部屋を出る川島のあとを追って、

私達も所長室を出ることにしたのよ。




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