暗黒迷宮
「要するに研究所に行くつもりなの?」
前を歩く彩花に尋ねてみる。
そんな私に一度だけ振り返ってから、
彩花は質問に答えてくれたわ。
「今の私達に必要なのは力よ。魔術であり、ルーンであり、身体的な能力の向上でもあるけれど。どれを望むにしても研究所は色々と都合が良いのよ。」
再び前方に視線を向けてしまう彩花も、
結局のところ説明らしい説明はしてくれなかったのよ。
どうも話し合いは終わりっぽい。
…でもね?
目的地は理解出来ても、
そこで何をするのかまでは分からないままなのよ。
「だから、研究所で何をするの?」
「………。」
もう一度問いかけてみたけれど。
彩花は教えてくれなかったわ。
…っていうか、無視ってどうなの?
疑問どころか不満を感じてしまうわけだけど。
「まあ、結論から言えば研究所で特訓をして今よりも強くなりましょう…っていう話じゃない?」
そんな私を見ていた未来が苦笑しながら答えてくれたのよ。
…特訓?
…研究所で?
…出来るものなの?
何もかもが予想してなかった言葉だったわ。
研究所で一体何をするの?
そもそもどうして研究所なの?
…と言うか。
どんな特訓を考えてるの?
次々と疑問が思い浮かんでくる。
彩花や未来が言いたいことは分からなくもないんだけどね。
何をしようとしているのかがさっぱり分からないのよ。
そんなふうに疑問を感じてしまったことで、
研究所に続く道を歩きながらさらに質問を続けてみることにしたわ。
「結局、研究所で何をするつもりなの?」
「ん~。さあ?」
私の問い掛けに未来は答えられないみたい。
「私は知らないわ。」
未来も知らなかったからよ。
そして苦笑いを浮かべる未来に続くかのように。
「私も知らないですぅ♪」
無邪気な笑顔であずさも断言してくれたわ。
そんな会話の流れから、
一応、背後にいる奈々香にも振り返って尋ねてみる。
「奈々香は知ってるの?」
地下施設と言っていた奈々香なら何か知っていると思って問い掛けてみると。
「…暗黒迷宮。」
いつも通りの無表情な顔でぽつりと呟いたのよ。
「………。」
再び黙り込んでしまう奈々香に説明を求めるのは難しいわね。
色々と知っているみたいなんだけど。
説明してくれそうにはないのよ。
言いたくないというよりも、
そもそも話をしたくないっていう感じ?
でもそれは機嫌が悪いとかそういうことじゃなくて、
基本的に無口だから言葉を発すること自体が面倒っていう感じだと思う。
「暗黒迷宮って何なの?」
次々と生まれる疑問だけど。
「行けば分かることよ。」
彩花がさらりと会話を断ち切ってしまったのよ。
…まあね。
…確かにね。
…行けば分かるとは思うわ。
でもね?
その前に知りたいと思うのが普通じゃない?
個人的にそう思うんだけど。
「ふふっ」
彩花は怪しげな微笑みを浮かべるだけで何も教えてくれなかったのよ。
…う~ん。
…何て言うか。
普段が普段なだけに、
彩花の微笑みは私を怯えさせるのに十分な迫力を持ってるのよね。
彩花の笑顔を見ただけで頬に一筋の冷や汗が流れてしまうのよ。
「はあ…。」
結局、目的も内容も不明なまま。
研究所に向かうことになってしまったのよ。




