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THE WORLD  作者: SEASONS
4月19日
1141/1212

真の敵

《サイド:進藤輝彦》



午後6時を過ぎたようだな。



カリーナ方面の国境にて、

太陽が完全に姿を隠して空が夜の闇に包まれ始めた頃。



国境付近で陣を構えている共和国軍は、

完全に撤退したミッドガルム軍の跡地を眺めていた。



「…ふう…。」



深く…深く吐くため息。



この手にある『停戦の書状』を強く握り締めながら、

隣に立つ楠木に話しかけてみる。



「ミッドガルムは停戦を申し込んできたが、これで本当に終わったと思うか?」


「個人的な意見としては終わったと信じて良いと思います。少し楽観的だと思われるかも知れませんが、これ以上戦争を続けても両国共に被害が増える一方です。」



…確かにそうだな。



「アストリアの消滅によって、こちらは多数の戦力を失いましたが、敵対する敵国の数も減少したことによって戦力の集中化が行えます。守るべき場所が減れば攻める為の戦力が増える。そうなれば、ここに今まで以上の戦力を集めることが可能です。」



アストリア王国に送り込んだ戦力は失われたが、

アストリア王国の動きを警戒して防衛の為に割いていた各町の戦力をここやセルビナに送ることが可能になる。



3ヵ所に分けていた戦力を2ヵ所に集中させれば、

共和国軍の戦力は確実に強化される。


そうなればミッドガルムも不用意には攻め込めなくなるだろう。



無理に攻め込めば共和国を滅ぼす前にミッドガルム軍が瓦解しかねないからな。



アストリア王国の消滅に伴って領土の一部を失うほどの被害を受けた状態で無理に戦争を続けようとすれば国力の低下は避けられない。



それはミッドガルムにとっても危機的な状況に陥ることになるだろう。



…それに、だ。



アストリア王国が兵器と軍事力を駆使して力付くで共和国を攻め落とそうとしなかったように、

ミッドガルムにも全軍を共和国へ送り込めない事情がある。



アストリアも。


ミッドガルムも。


そしてセルビナもそうだが。



本当に恐れている敵は共和国ではない。



真の敵は『自由解放軍』なのだ。



別名『竜の牙』と呼ばれる魔術師の組織なのだが、

その組織に所属する魔術師の総数は1万を越えると言われている。



もちろん人数だけで見れば1万という数は決して多くはないだろう。



少なくとも国家を相手にするには物足りない数だ。



だが、その実力は共和国の軍事力に匹敵する脅威なのだ。



敵対する各国の暗部で行動して、

常に命懸けの戦いを生き抜いている解放軍の実力は共和国の魔術師を大きく上回っている。



その代表格とも言えるウィッチクイーンも強敵だが、

彼女のような魔術師を多数抱える解放軍の実力は国家を怯えさせるに十分な影響力を持っているのだ。



その脅威は軍事国家ミッドガルムと言えども決して軽視出来る存在ではないだろう。



無理に共和国と戦争を続けて国力を低下させれば、

その隙を突いた解放軍が容赦なくミッドガルムへと襲い掛かるはずだからな。



解放軍を撃退する為の戦力として周辺諸国からの救援が間に合えばいいが、

もしも間に合わなければミッドガルムは滅びることになる。



『解放軍という脅威』



その危険性が在る為に、

アストリアもミッドガルムもセルビナも、

全軍を共和国に向けることが出来ないのだ。



自国を存続させる為には防衛力を残さなければならない。



「共和国とも敵対している存在とは言え、解放軍の影響力のおかげで戦争が終わると言う状況が、何とも皮肉な話だな。」



世界との協調を求めて和平交渉を進めようとしている共和国の軍事力よりも、

世界中を敵に回してでも自由を勝ち取ろうとする小数の魔術師の組織が恐れられているという現実。



現在は思想の違いによって敵対関係に在るが、

解放軍という存在のおかげで戦争が終わるという事実は否定できない。



それが共和国に突き付けられた現実でもあるのだ。



…とは言え。



解放軍という名の脅威が存在する限り、

和平の交渉がいつまでたっても成立しないというのもまた一つの事実だがな。



「このままここへ軍を留めるわけにもいかないだろう。ミッドガルムに敵対意志がないことを示す為にも軍を下げる必要がある。」


「こちらも全軍撤退ですか?」


「いや…。もしもの可能性がある限り、全軍を下げるにはまだ早いだろうな。」



しばらく様子を見る為に国境警備隊はここに留めるべきだ。



なにより近藤隊長の帰還を待つ必要もある。



「陸軍だけ撤退させる。国境警備隊の基地に戻って部隊を待機させよう。数日の間、様子を見て何も起こらないようであれば軍を解散させればいい。」


「分かりました。ですが、念のためにミッドガルムに偵察部隊を派遣して情報収集を行いましょうか?」


「…そうだな。」



出来る限りのことはしておくべきだろう。



「情報を集めて様子を見よう。」


「了解です。それでは部隊を編成してミッドガルムに潜入させます。」


「うむ。2、3日ほど様子をみる。」



今後の方針を定めたことで、

国境警備隊にあとを任せて陸軍を率いて撤退を始めることにした。



「全軍、後退するぞ!」



陸軍を率いて国境から離脱していく。


ひとまず連合軍との戦争は休戦という形で終わりを告げたのだ。



あとはこのまま終戦協定が結ばれるのを期待するばかりだった。




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