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THE WORLD  作者: SEASONS
4月19日
1139/1212

勝利の代償

《サイド:北条辰雄ほうじょうたつお



セルビナ方面に布陣している共和国軍の本陣に戻ってきた。



そして最前線から国境警備隊を後退させた俺は、

本陣に待機していた各部隊の召集を行って全ての仲間達に事実を告げることにした。



「先程、ミッドガルム方面に布陣する進藤元帥から伝令が届いた。」



その内容こそが俺の心境を複雑にさせる原因となっているのだが、

全ての者達に事実を知る権利があるからな。


俺の一存で情報を封鎖するわけにはいかない。



さきほど受けとったばかりの伝令内容を、

この場にいる全員に聞こえるように大きな声で読み上げることにした。



「アストリア王国の滅亡によってミッドガルムは全軍を退却させたのちに停戦の書状を送ってきた。これによりミッドガルムとの戦争は終結となる。セルビナも軍を下げ次第、共和国は戦闘を終了せよ!」



これが伝令の内容において最も重要な部分となる。



つまり、戦争が終わったということだ。



「セルビナは軍を下げた。これにより戦争は終結とする!!」



『終戦』を宣言した。



その瞬間に。


多くの仲間達が歓喜の声を上げたのだ。



「共和国の勝利だーー!!!」


「俺達は国を守り抜いたんだぁ!!」


「終わったーーっ!!!」



口々に喜びを分かち合う仲間達だが、

その状況にあって俺だけは重苦しい雰囲気を放っている。



…だからだろうか?



本陣で軍を指揮していたランベリア多国籍学園の学園長であるリン・ラディッシュが

俺の雰囲気に気付いて話しかけてきた。



「何か問題でもあったの?」



…問題か。



あったどころの話ではない。



致命的と表現する以外にない情報が伝令に含まれているからだ。



「…聞きたいか?」



隠す理由はないのだが、

念のために聞いてみる。



「もう一つの情報を知りたいか?」


「…そんなふうに言われると聞きたくなくなるんだけど。聞きたくないって言っても、どうせ知ることになるんでしょ?」



…まあ、そうだな。



俺が口に出さずとも数日中に知ることになるだろう。


何故なら国を代表する人物が死亡したという情報だからな。



噂にならないわけがない。



「伝令には続きがある。」



あまり口に出したくはないが、

伝令の続きを読み上げることにする。



「アストリア王国領土の『完全消滅』が確認された。それに伴い、アストリア王国に進軍していた共和国軍3万5千の部隊は全滅したと思われる。当然、米倉美由紀率いるジェノス魔導学園の生徒も全員行方不明だ。現時点での生存確率は0%であり、部隊の犠牲と引き換えにして戦争は終結した模様…。」



…くっ!



伝令の全てを読み終えたことで、

思わず伝令を握り潰してしまっていた。



「これが勝利なのかっ!?多くの仲間を犠牲にして、大切な家族を失い!悲しみを残したこの戦いがっ!こんなものが勝利だと言うのかっ!?」



指揮官としては喜ぶべきなのだろう。



だが。


一人の人間としては悲しみしか感じない。



「これを勝利と呼ぶのか…?」



悔しさを滲ませる俺の表情を見ていた全ての仲間達が一斉に沈黙してしまっていた。



みな、知っているからだ。


いや、経験していると言うべきか。



この場に集まっている魔術師達の多くは他国から集まった異国の出身だ。



魔術師狩りによって国を追われ。


逃げ場をなくして共和国にたどり着いた者達がほとんどで、

誰もが大切な人々を失う経験を持っている。



だからこそ。



誰もが俺と同じ悔しさを知っているのだ。



友を失う悲しみ。


家族を失う悲しみ。


愛する人を失う悲しみ。


それらを誰もが経験しているのだからな。



「戦争は終わったかもしれん。だが、残された悲しみに終わりはない…。」



俯いて落ち込んでしまう。



進藤元帥が送ってくれた伝令は、

終戦という喜びと同時に多くの仲間の死を告げる内容だったからだ。



当然その中の一人には、

たった一人の息子である真哉も含まれている。



あまり面倒を見てやれることはなかったが、

それでも俺にとっては大切な家族だったのだ。



妻に先立たれ、

たった一人の家族だった息子を失ったのだ。



悲しみによって涙を浮かべてしまうのは我慢のしようがなかった。



「戦争など、2度と起こしてはならん…っ。」


「「「………。」」」



吐き捨てるように呟いた俺の言葉を聞いて、

誰もが深い悲しみを感じている様子だった。



そしてそれは…フェイ・ウォルカも同じ様子に見えた。




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