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THE WORLD  作者: SEASONS
4月19日
1135/1212

琴平の推測

《サイド:栗原薫》



…ふう。



随分とマールグリナを離れたわね。



ちょっと前までは町の一部が見えていたのに、

今ではもうかけらも見えないわ。



それでも目的のジェノスまではまだまだ遠いけどね。



とりあえず学園長と私が乗る馬車は、

ジェノスに向かって南部へと繋がる街道を進んでいるところよ。



二頭の馬が駆けるひづめの音と馬車の車輪の音だけが周囲に響き渡る静かな街道は、

時折、商人が乗る馬車とすれ違う程度で人通りは全くないわね。



今が戦争中ということもあるけれど。


夜も近いこの時間帯に出歩く人は少ないから仕方がないのかな?



そのせいか。



今のところ商人が乗る馬車以外は誰とも出会ってなかったりするの。



…う~ん。



これはこれで問題よね?



国内の流通が止まりかけてるという証でもあるからよ。



本来ならもっと人通りがあるはずなのに。


街道に誰もいないなんて。


物流も問題だけど観光業は大打撃よね。



各町の宿や飲食店は軒並み売り上げが低下するでしょうし。


下手をすれば営業そのものが出来ないということもあり得るわ。



そうなれば必然的に国力が低下するし。


自給自足率も確実に低下するでしょうね。



…はあ。



戦争なんて起きなければいいのに。


どうしてこんな面倒なことになったのかしら?



静かな街道で夕陽が沈んでいく空を眺めながら色々と考えてみる。



その結果としてため息が尽きないわけだけど。


ひとまず学園長に話しかけてみることにしたの。



「学園長。幾つかお伺いしたいことがあるんですけど…お聞きしても宜しいですか?」


「ええ、良いですよ。私で答えられることでしたら遠慮なく何でも聞いて下さい。」



快く応えてくれる学園長に感謝しつつ、

幾つか気になっていることを尋ねてみることにしたのよ。



「それじゃあ、一つ目ですけど。町を襲った魔術師達は何が目的だったのでしょうか?」


「目的ですか…どうでしょうね?」


「不明ですか?」


「ええ、捕らえていた数名の捕虜達は治安維持部隊の本部へ護送される途中で何者かによって全員暗殺されてしまったらしいです。」



…うわぁぁ~。



「私が見たのは遺体だけで、情報は何一つ得られませんでした。」



…うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。



この話は聞かないほうが良かったかも?



学園で戦闘終了の報告を受けた学園長は、

数名の魔術師を捕獲したという話を聞いてすぐに治安維持部隊の本部へ捕虜の尋問に出かけていたわけだけど。


その努力は無駄だったみたいね。



学園長が本部にたどり着いた時にはすでに捕虜は全員殺されていたらしく。


治安維持部隊の説明によると、

護送中に襲撃を受けて捕虜を殺されてしまったあとらしいわ。



その襲撃によって数名の治安維持部隊の隊員が死亡したという話もあったみたい。



「襲撃者は即座に逃亡して町の外へと脱出したそうです。追跡は失敗してそれ以降の消息は不明のようですね。他の逃亡者も行方不明のようでして、町の入口を厳重に警戒するように頼んではあるのですが、二度目の襲撃があった場合は正直に言って食い止める自信はないと思います。」



…ですよね。



学園長と揃って大きくため息を吐いてしまったわ。



アストリア戦によって魔術師ギルドから派遣されていた傭兵部隊は全滅。



治安維持部隊は健在だけど。


三倉父娘や魔術師ギルドの朱鷺田秀明さん等の優秀な人材を次々と失って、

マールグリナ知事の朱鷺田直道さんも亡くなってしまったのよ。



さらには魔術師ギルドや学園から優秀な人材を集めてアストリア王国に派遣していた多くの偵察部隊もアストリア王国の消滅と共に全滅してしまったせいで犠牲者の数は千人を優に越えているわ。



実質的にマールグリナが失った戦力は他のどの町よりも多いのに、

今回の襲撃によって町そのものまで大打撃を受けてしまったのよ。



「国境警備隊の基地が近いということもあって軍備を怠っていたことが裏目に出ましたね。」



…ああ、確かに。



医療の発展を最優先してきたマールグリナの北部には岸本克也さんと近藤悠護さんが率いる国境警備隊の基地があったのよ。



だからマールグリナは町の防衛をあまり考慮してなかったみたい。


軍事拠点が直ぐ近くにあったから、

わざわざ軍を常駐させる必要がなかったのよ。



…だから、まあ。



今からすぐに戦力を整えようとしても、

即座に解決出来るような簡単な話じゃないでしょうね。



その辺りの問題も含めて、

学園長は米倉元代表と相談して海軍の一部をマールグリナの護衛に回してもらえるように相談するつもりでいるらしいわ。



「残念ながら襲撃者達に関しての情報はありません。彼らの目的が何だったのかは分かりませんが、彼らが何者なのかという質問でしたら、おおよその推測はしています。」


「分かるんですか?」


「あくまでも推測ですが『竜の牙』と名乗る組織。おそらくはその組織の魔術師だと思います。」


「竜の牙…ですか?」


「ええ、そうです。共和国『国外』で活動する魔術師の集団になります。彼等と共和国は対立関係にありまして、過去には何度も戦闘に発展しているのですよ。和平を求める共和国とは違って、彼等は武力による制圧を目的としていますので、その暴挙を止める為に幾度も交戦しているのです。」



…へぇ~。



共和国に敵対する魔術師ね~。



その数は決して少なくないみたい。



全ての魔術師が共和国にとって味方というわけではなくて、

敵対する魔術師も数多くいるっていうことらしいわ。



その中でも最も近くに存在して最も恐れるべき存在なのが『竜の牙』という組織なのかな?



「実際のところはどうか分かりませんが、おそらく竜の牙の魔術師で間違いないでしょう。」



マールグリナの町を襲った魔術師達は『竜の牙』だと学園長は推測してるようね。



…そう言えば?



ウィッチクイーンも『牙』がどうとか言ってたような?



「他の可能性がないとは言いきれませんが、それらも踏まえた上で米倉さんと話し合うつもりでいます。」



…なるほどね~。



色々と問題があるみたい。



学園長の話を聞いたことで、

ひとまず1つ目の質問は終えたわ。



だから次に別の質問を問い掛けることにしたのよ。




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