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THE WORLD  作者: SEASONS
4月19日
1132/1212

医術界の母

《サイド:栗原薫》



午後4時を過ぎたわね。



太陽が西の空へ傾き始める頃。


マールグリナ医術学園の生徒会室で行われている会議が終盤に差し掛かろうとしていたわ。



議題を進めるのは琴平学園長で、

生徒会長の私と学園の理事長を務める稲垣世津子いながきせつこさんの3人が主な代表よ。



他にも生徒会に所属する生徒達が30人ほど集まってる。



この学園にも風紀委員は存在するけれど。


他の学園と違って戦闘技術に長けた生徒はあまりいないから、

特別風紀委員という部署は存在しないわ。



だから全ての決議は生徒会によって行われるのよ。



さしあたって今回話し合っている内容は突如発生した戦闘に関してなんだけど。


町の状況確認と今後の方針に関してになるわね。



マールグリナの町の全域で起こった戦闘に関する被害状況の確認とか死傷者の数とか、

幾つもの報告を行いながら各病院との連携や葬儀の段取りに関しても話し合っていたのよ。



一応、この学園にいる生徒は将来的に医師を目指してるわけだしね。



医者の卵とも言える人材ばかりなのよ。



他の学園ならそこまで話し合うことはないんだけど。


この学園では病院との連絡や葬儀の段取りなんかも学園の教育の一貫として組み込まれているから。


大きな事件や災害が起きた時は生徒会主導で行動するように町の条例で定められているの。



だから今回の案件も生徒会が引き受けることになるんだけど。


現在でもまだ共和国は戦争中だし、

いつまた謎の部隊が攻め込んで来るかも分からない状況なのよね~。



あまり突き詰めて考えられるほどの余裕がないせいで、

ある程度の流れだけを決めてしまって、

あとのことは生徒会に一任する方向で学園長が話を進めていたわ。



「…それでは、通達は以上です。」



被害報告を受けてやるべきことを考えてくれた学園長が生徒会に指示を出す。



「町の復旧作業と死者への葬儀に関しては通常通り、生徒会に全て一任します。早急に段取りを整えられるように迅速な行動を期待します。」



指示というか委任だけどね。



「理事長もそれでよろしいですね?」



方針を定めた学園長は最後に稲垣世津子いながきせつこ理事長に確認してた。



「ええ、全てお任せします。」



特に不満を口にせずに状況を見守ってくれている理事長はすでに70を越える年齢らしいわ。



この医術学園の創設者でもあるらしいんだけど。


初代学園長で『医術界の母』とも呼ばれるくらいの実力者だったみたい。


今では現役を引退して平穏な日々を過ごしているらしいけどね。



「今回の事件に関しては本当に残念としか言いようがありません。…ですので、くれぐれも落ち度のないように懇切丁寧に葬儀を進めてあげて下さい。」


「もちろんです。」



切実に願う稲垣理事長に頷いてから、

学園長が生徒達に指示を出したわ。



「町の犠牲者の葬儀と並行してアストリア王国で戦死した仲間達の葬儀も行います。同時に『栗原徹』と『琴平愛里』の葬儀も行いますので準備をよろしくお願いします。」



海軍から届いた知らせによって合同葬儀を行うことになったのよ。



葬儀自体は各町ごとなんだけどね。



派遣した1000名の傭兵部隊と『栗原徹』『琴平愛里』『三倉純』『朱鷺田秀明』の4名に、

アストリア王国の諜報活動の為に派遣していた学園の生徒達。



さらには国境警備隊の3000人の魔術師および、

『鞍馬宗久』『近藤悠護』『岸元克也』『雨宮奈津』等の幹部の葬儀もマールグリナで行うことになっているわ。



「葬儀の人数が多い為に大変かとは思いますが、よろしくお願いします。」



生徒会に一任してから、学園長は席を立ったのよ。



「申し訳ありませんが、私はしばらく学園を留守にします。その間のことは理事長にお任せしてもよろしいでしょうか?」


「構いませんが、どちらへ行かれるのですか?」


「ジェノスに向かうつもりです。今後に関して米倉元代表と話し合う必要があると思いますので。」



…ああ、なるほど。



確かに情報交換は必要よね。



…でも、そうなると。



「学園長。もしもジェノスへ行かれるのでしたら、私も連れていっていただきたいんですけど、ダメでしょうか?」


「いえ…それは構いませんが、何か理由でもあるのですか?」


「あ…はい。ちょっと会いたい人がいるんです。」



会いたいというか、

逢いたいというかは微妙だけど。


一応、約束だしね。



「たぶん、待ってくれてると思いますので」


「ふむ。この状況で生徒会長不在というのはどうかとも思いますが、栗原さんにはいつもお世話になっていますからね。どうしてもということであればいいでしょう。ですが2、3日は帰って来れませんよ?それでも宜しいですか?」



…う~ん。



しばらく帰って来れないっていうことはつまり合同葬儀に参加出来ないっていうことよね?



「その…。今はまだ…葬儀という気分ではありませんので…。」



兄貴と愛里。


二人の生存を願うからこそ、

葬儀に参加する気にはなれなかったのよ。



「今はただ…。自分に出来ることをしたいと思います。」



現実から目を背けてるだけかもしれないけれど。


それでもまだ葬儀には参加したくなかったの。



「私もジェノスに連れて行ってください。」


「ええ、良いでしょう。」



改めて願う私の気持ちを受け入れてくれたのか、

学園長は笑顔で頷いてくれたわ。



「早速ですが馬車を用意しますので、準備を整えてから校門まで来てください。」


「あ、はい。分かりました。」



生徒会室を出る学園長に続いて、

私も部屋を出ようとしたんだけど。


その前に理事長に挨拶だけはしておくことにしたわ。



「すみません、理事長。あとのことはよろしくお願いします。」


「ええ、こちらは任せてください。」


「ありがとうございます。」



稲垣理事長と挨拶をしてから、

生徒会室を出ることにしたのよ。



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