それぞれの旅立ち
《サイド:桜井由美》
…さてさて。
上矢遥が率いるエスティア。
冬月彩花が率いるカリーナ。
そして澤木京一が率いるグランバニア。
それぞれの学園の上位5名による3校の生徒が軍を離脱したわね。
それらの旅立ちを見送ってから、
救護用のテントがある方角に視線を向けて囁くように呟いてみる。
「こうなると、残るヴァルセム精霊学園の生徒達も更なる力を求めて旅立つかもしれないわね。」
「…どうだろうな?あの学園は現在『大塚義明』が倒れている状況だ。しばらく目覚めない大塚義明を置いて旅立つ覚悟を決められるかどうか。それが彼等の人生を大きく変える決断となるだろう。」
…まあね~。
進藤学園長の意見はもっともだと思うわ。
大塚義明に頼れない状況で残る4人がどんな決断を下すのか?
少々疑問を感じるところよね。
もしも大塚義明が健在だったら、
冬月彩花や澤木京一と同様にヴァルセムの生徒達も即座に行動に出ていたかもしれないわ。
だけど。
大塚義明は魔力を使い果たして倒れてしまっているのよ。
魔力が戻るまで数日間は目覚めることがないわ。
もちろん『魔力の供給』を行える人物がいれば即座に目覚めさせることが出来るけどね。
残念ながらそれが出来る人物はアストリア王国と共に消え去ったのよ。
『天城総魔』と『深海優奈』
二人の命は失われたの。
最終的な結果はまだ知らないけれど。
それでも少なくともこの場所にいないことは事実で、
大塚義明を目覚めさせる方法はないということになるわ。
この状況で残る4人はどんな決断を下すのかしら?
学園2位の『鳴瀬智久』
学園3位の『宮野晃』
学園4位の『金田敦子』
学園5位の『八木真奈美』
彼らが下す決断を待ちながらも、
進藤学園長はすでに次の行動を考えているようね。
「ミッドガルムの動きには今後も警戒を続けるしかない状況だが、さしあたってウィッチクイーンの動きにも警戒する必要があるだろう。」
…確かにね。
今となっては撤退を始めてくれたミッドガルム軍よりもウィッチクイーンの部隊の行動が気になるわ。
「そこなんだけど。私の部隊をウィッチクイーン捜索の為に共和国各地に派遣しようと思うんだけど、どうかしら?」
…と、言っても。
主力として期待していた冬月彩花や澤木京一等の優秀な生徒達が軍を離脱してしまったから、
戦力的にちょっぴり心許なかったりするけれど。
でもね?
まだまだ数万に及ぶ魔術師を指揮下においているのよ。
各学園から集まった生徒達や魔術師ギルドに所属する魔術師達。
そして自由に活動する冒険者ギルドの傭兵達など多くの魔術師が私の指揮下に集まっているの。
「ここでじっと傍観して待機してるよりも、役割を与えたほうが有意義だと思うんだけど?」
「ああ、そうだな。ミッドガルムは撤退を始めているからな。ここで全軍を待機させる必要はないだろう。」
進藤学園長も私と同じように考えてくれたようね。
「ミッドガルムへの牽制は陸軍だけでも可能だ。仮に戦闘に発展したとしても、部隊を再集結させる程度の時間はかせいでみせる。」
…うんうん。
頼もしい言葉だと思うわ。
「それじゃあ、私は部隊を率いてウィッチクイーンの捜索を始めるわね。ついでに各地の町と連絡を取り合って情報収集も進めておくわ。」
「ああ、頼む。可能ならば海軍とも連絡をとって互いの状況を確認しておくべきだろう。アストリアの現状やウィッチクイーンに関して出来る限り早急に話し合う必要があるからな。」
「ええ、そうね。」
アストリア王国が消滅したという事実はすでに乃絵瑠達の救助作戦時に確認済みだし、
ウィッチクイーンの存在も生徒達が確認してるわ。
ミッドガルムが軍を撤退させているという事実を踏まえたうえで、
セルビナや他国の動きも考慮する必要があるわね。
だからこそ。
一度『米倉宗一郎』と合流して話し合う必要があると考えたのよ。
共和国代表の『米倉美由紀』は現在消息不明。
アストリア王国と共に消え去ったのかしら?
それとも無事に脱出出来たのかしら?
それは私達にも分からないわ。
でもね。
だからこそ考えるの。
全てを知る為に。
最新の情報を集める必要があるのよ。
「ひとまず情報収集を兼ねながら、ウィッチクイーンの捜索も進めておくわね。」
方針を伝えてから歩きだす。
「あとのことは任せるわ。」
「ああ、ここは任せておけ。」
「ええ、よろしく。」
進藤学園長の返事を聞いてから、
部隊を召集して共和国各地への派遣を指示していく。
今回の目的は二つよ。
『ウィッチクイーン』の捜索と『各地の情報収集』
それらを指示してから私自身も動き出す。
海軍との合流を目指して、
一時的に国境を離れることにしたのよ。




