力不足
《サイド:進藤輝彦》
カリーナの生徒達が学園を目指して動き出した数分後。
今度は俺の下に澤木京一が率いる生徒達が集まってきた。
彼らはグランバニア魔導学園を代表する生徒達だ。
予想はしていたが、
どうやら彼等も思うことがある様子だな。
「学園長にご相談があります。」
澤木君が率先して自らの決意を伝えに来た。
はっきりとした口調で話しかける真剣な表情を見れば話を聞くまでもないだろう。
すでにおおよその内容は理解できているのだが、
ここは彼らの意見を尊重すべきだろうな。
「話を聞こう。」
黙って話を聞くことにする。
「ありがとうございます。」
5人の意見を代表して、
澤木君が話をしてくれるらしい。
「今回の戦闘によって、僕達は自分達の力不足を感じました。」
…力不足か。
確かにそれはあるだろう。
だがそれは仕方がないとも思う。
ウィッチクイーンが相手では俺や桜井でさえ敵わないからだ。
共和国においてウィッチクイーンとまともに戦えるのは宗一郎くらいだろう。
あの魔女を相手にするのであれば万全の準備を整える必要がある。
少なくとも今回のような遭遇戦では、
どうあがいても太刀打ちできない。
…とは言え。
今は澤木君の意見を聞き入れるべきだ。
安易に仕方がないなどと口に出すべきではないからな。
「僕達は自惚れていました。自分達の力を過信して、どんな相手がいても勝てると思い込んでいたんです。ですがそれは思い込みでしかなくて、僕達はたった一人の魔術師に敗北してしまいました。」
…自惚れか。
否定はしないが、難しい問題だな。
本来の力を出しきれず。
一太刀さえ届かずに。
手も足も出ないまま敗北した事実を悔やむ気持ちは分かる。
結果的に20対1で敗北したのだ。
それは相手が悪かった等という話ではなく、
敗北してしまった自分達の実力のなさを痛感する結果となったのだろう。
生きていたことを幸運と呼ぶしかない状況だが。
命を賭ける戦場において、
敗北そのものではなく力を過信していたという事実に後悔を感じている様子だな。
相手がウィッチクイーンということを考えれば例え全力で戦っていたとしても結果は変わらなかったと思うが、
それでも最後まで全力を尽くせなかったことを悔やんでいるのだろう。
『上には上がいる』とでも言うべきか。
決定的な事実を突き付けられたことで、
澤木君達は自分達の不甲斐なさに怒りと憎しみを感じているのかもしれない。
今のままでは無力だと感じてしまったために、
絶望すら感じてしまっているのだろう。
だが、そこで立ち止まるつもりはないようだ。
「あの部隊が何者なのかは知りません。ですが、このまま敗北を受け入れたくはないんです!」
はっきりと告げる意志。
そこにあるのは純粋な向上心だ。
「今よりも強くなりたいんです!あの魔術師を相手にしても戦えるだけの強さが欲しいんです!!」
強く願う澤木君がまっすぐに俺と見つめ合う。
「しばらくの間で良いので軍と学園から離れる時間を下さい。僕達はまだ強くなれると思います。何が出来るのかはまだ何も分かりませんが…。ですが、今のままでいることは出来ません!今よりも強くなって、生き残れるだけの力を手に入れたいと思うんです!」
…なるほどな。
生き残るための力か。
「良いだろう。」
澤木君の思いを受けて許可を出すことにする。
「きみ達の好きにすればいい。…だがな。やるからには結果を示せ。中途半端な成長ではなく、今の自分達を乗り越える力を手に入れて戻って来るのだ。」
そのための方針はすでに考えてある。
澤木君達なら必ず動き出すと信じていたからな。
彼らの成長を信じて、
すでに一通の手紙を用意していた。
「これを持ってランベリアの町を目指せ。『魔術師ギルド』でこれを示せば、俺の友人が協力してくれるはずだ。」
「ランベリア…ですか?すでに手紙を用意してるということは、学園長は僕達が来ることを分かっていたのですか?」
…ああ、そうなるな。
だがそれは分かっていたというよりも、
予測していたと言うべきか。
「お前達と同じように考えたエスティアの生徒とカリーナの生徒はすでにそれぞれの目的地に向かって行動している。」
エスティアの生徒も。
カリーナの生徒も。
それぞれの学園に戻って『とある場所』を目指している。
上矢遥が率いるエスティア魔術学園の生徒達は学園の一画に封じられた『立入禁止区画』に向かい。
冬月彩花が率いるカリーナ女学園の生徒達は学園の地下に用意された『実験施設』に向かってそれぞれに旅立った。
彼女達の理由はただ一つ。
今よりも強くなることだ。
ウィッチクイーンに敗北した彼女達も、
自分達の無力さを感じて新たな力を求めて旅立った。
「現状で満足せずに常に高みを目指し続けることだ。それが出来なければ『成長』は有り得ないからな。」
「…はい。」
手紙を受け取った澤木君は、
一度だけ深く頭を下げてから仲間を率いて動き出した。
「行ってきます!」
堂々とした態度で歩き出した澤木君は、
仲間達と共にランベリアへと向かって行ったのだ。




