風を纏う槍
《サイド:フェイ・ウォルカ》
「突撃しろーーー!!!」
「「「「「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」
セルビナとの国境に指揮官の声が戦場に響き渡り。
多くの兵士達が共和国の大地を駆け抜ける。
もちろんその間にもセルビナの部隊が怒号と共に共和国軍に攻め寄ってきている。
一進一退の攻防と言うのだろうか?
アストリアとの戦争が始まって以降、
セルビナ軍と共和国軍は国境付近において何度もぶつかり合っていた。
戦場を駆けるセルビナ軍は2000人程度だ。
対抗する共和国は国境警備隊の兵士達のみになる。
前線部隊を率いるのは国境警備隊隊長の鞍馬信彦と、
セルビナ方面の国境警備隊司令官を務める北条辰雄の二人だ。
鞍馬信彦はアストリアとの戦いに向かった鞍馬宗久の息子だそうだ。
そして北条辰雄はアストリアに向かった北条真哉の父親だった。
すでに50近い年齢の北条辰雄と30を過ぎたばかりの鞍馬信彦の二人が指揮をとる国境警備隊。
その中で俺は一人だけ学生として参加している。
…俺の名前はフェイ・ウォルカ。
【特性】一撃必殺
【属性】火、土、風
【ルーン】ファルコン(?)
デルベスタ多国籍学園に所属して学園1位の成績を持っているのだが、
魔術の実力そのものは中の上程度でしかない。
どちらかといえば魔術の撃ちあいよりも白兵戦のほうが得意分野だからな。
槍の扱いに関しては警備隊の兵士達と比べても何の遜色もないと思っている。
だからこそ最前線に参加させてもらえたのだが、
現時点ではまだ他の生徒達や傭兵部隊は後方で待機している。
その理由は戦力の温存という意味もあるが。
そもそも今はまだ全面衝突とは言い難い牽制程度の小競り合いだからな。
不用意に総力戦を挑むことはできない。
もしも全部隊を投入すれば、
セルビナ側も全兵力を投入する可能性が高まってしまうからだ。
そうなればもう互いにあとには退けなくなる。
だから今は無闇にセルビナ軍を刺激しないために、
共和国側も最小限の戦力で応戦している。
そういう事情もあって、
最前線に参加している生徒は俺だけになる。
「容易く共和国を落とせると思うな!!」
槍を大きく振り回して敵をなぎ払う。
鎧ごと敵を叩き潰し。
次々とセルビナの兵士達を撃破していく。
そうこうしている間に、
戦場には両軍の兵士達の死体が積み重なり。
刻一刻と犠牲者が増えてしまう。
それでもこれはまだ両軍にとって小競り合いでしかない。
本格的な戦争に発展すれば数万単位での犠牲者が出ることになるからな。
中規模部隊による牽制。
そんな小競り合いを何度も繰り返している状況だ。
…それでも。
これまでの戦いで倒れた魔術師の数はすでに100人を越えるだろう。
…とは言え。
セルビナ軍の被害はその数倍におよぶはず。
少なく見積もっても500を超える数の犠牲者をだしているはずだ。
負傷者の数は両軍とも数え切れないが、
繰り返される戦闘のたびに増えていく犠牲者。
それでもまだ…戦争は止まらない。
どちらも痛み分けを繰り返しながら、
断続的に戦闘が継続されている。
俺や鞍馬隊長や北条司令官の3人が最前列に立ってセルビナ軍の足止めを行う。
その後方から国境警備隊による魔術攻撃で敵の侵攻をくい止める。
その作戦によって、
いままで全ての小競り合いを戦い抜いてきた。
「「「「「うおおおおおおっ!!!」」」」」
雄叫びをあげながら迫り来るセルビナ軍だが、
その程度の突撃で共和国軍が逃げ出すことはない。
「全て全滅するまでだ!」
セルビナ軍に向けて槍を構える。
そして迫りくる敵を叩き潰す。
俺の手にあるのは『長身の槍』だ。
軽く3メートルは越えるであろう槍。
その先端に輝く刃の左右両側に、
切れ味の良さそうな刃が光を放って煌めいている。
先端の刃だけでも40センチほどはあるだろう。
薄く鋭い刃は直線の刃とは別に
反り返るような幅広い刃が組み合わされている。
種類としてはハルバードだな。
突き刺すことはもちろん、
切り裂くことも可能な槍だ。
そしてこの槍は薄い緑色の光を放っている。
「…良い槍だな。」
素直にそう思う。
一振りごとに風を切り裂く音が響き渡り。
その音が轟くたびに体を切り裂かれて倒れるセルビナ兵の死体が増えていく。
「共に突き進むまでだ!!」
続々と増える死体を踏み越えて戦場を駆け抜ける。
「このルーンの名に賭けて!共和国は俺が守りぬく!!」
全力で槍を振るい。
セルビナの兵士達を倒し続けていく。
「行くぞ!ラングリッサー!!」
『風』を纏う槍を手に、
一歩も怯むことなく戦場を走り続けた。




