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THE WORLD  作者: SEASONS
4月19日
1119/1230

事実確認

《サイド:桜井由美》



…はあ。



もう正午なのね。



ミッドガルムとの国境に面する共和国軍の拠点に戻ってからしばらく経つわけだけど。



そろそろ目覚めてくれないかしら?



アストリアとの国境付近で救助した生徒達の様子を見る為に救護用のテントの中を覗いてみる。



テントの中には数名の医師達と意識を失って眠る20人の生徒達がいるわ。



だけど。



救助してから今に至るまでまだ誰も目覚めていないみたい。



「様子はどう?」


「もうしばらく様子を見るしかないですね。外傷はありませんので手のほどこしようがありません。時間をおいて目覚めるのを待つしかないと思います。」



…やっぱりそうなるわけよね。



医師の返事を聞いて、ため息を吐いてしまったわ。



「まだまだ時間がかかりそうね。」


「そうですね。今は待つしかありません。…ですが、『大塚義明』に関してだけは限界まで魔力を消費したことによって昏倒しているようですので、数日間は目覚めないと思われます。」


「…そう。」



医師の説明を受けて何度もため息を吐いてしまう。



今はまだ学生とはいえ、

並の魔術師を遥かに上回る実力を持つ20名の生徒が揃って意識不明の状態なのよ?



さすがにこの状況にあって楽観出来るような心境にはなれなかったわ。



「誰でも良いから、目覚めてくれないかしら?」



どんな些細なことでも良いから情報を手に入れたいのよ。


そんなふうに考えていると。



「…ぅ…ぅぅっ…。」



ついに一人の生徒が意識を取り戻してくれたみたい。



一瞬だけ苦しそうな表情を見せていたけれど。


どうにか目覚めてくれたのよ。



「乃絵瑠!」



呼びかけてみたけれど。


意識がまだはっきりとしてないのか、

ぼ~っと天井を見上げているわね。



「私…どうして…?」



目覚めたばかりで混乱してるのかしら?



「乃絵瑠!しっかりして!!」



心配してもう一度呼びかけてみると。



「…え?あれっ?」



今度はゆっくりと視線を向けてくれたわ。



「学園長?どうしてここに?…って、あれ?ここ、どこ…?」



自分がどこにいるのか分からない様子ね。



乃絵瑠はキョロキョロと周囲を見回してから私に視線を戻したわ。



「もしかして…学園長が助けてくれたんですか?」



…うぅ~ん。



助けたと言えるかどうかは疑問ね。



探しに行ったら倒れていたわけだから。


私がしたのは医療用のテントに運んだことだけよ。



「なかなか連絡が来ないから心配して捜索に出た先で、あなた達が揃って倒れているのを発見したのよ。一体、何があったの?」


「…えっと。」



何があったのかを問い掛けてみると、

乃絵瑠は意識を失うまでの出来事を答えてくれたわ。



「ここを出発したあとに東の方向に向かって、すぐに謎の部隊に追い付いたんですけど…。発見と同時に奈々香と彩花が攻撃し始めて…って!?あれ!?」



途中まで答えた乃絵瑠はようやく全てを思い出したのか、

慌てて飛び起きたのよ。



「学園長!!あのっ!彩花は!?あずさは!?奈々香は!?未来は!?みんなは無事なんですかっ!?」



戦闘に敗北して全滅したことを思い出したんでしょうね。



ひどく慌てた様子の乃絵瑠だったけれど。


私から言えることは一つしかないわ。



「落ち着きなさい。みんな無事よ。」



慌てふためく乃絵瑠の肩に手を置いてから優しく諭すように話し掛けてみる。



「今は眠ってるだけだから、すぐに目覚めるはずよ。」


「そう…ですか。」



私の説明で納得してくれたのか、

乃絵瑠は安堵の息を吐いていたわ。



「…良かった~。」



安心しながら周囲を見回す乃絵瑠のすぐ隣では冬月彩花がすやすやと眠りについてる。



実際には睡眠ではなくて意識を失っている状態なんだけど。


乃絵瑠にその違いは分からないようね。



「…本当に良かった。」



もう一度呟いてから私に振り返ってくれたのよ。



「みんな無事なんですか?」



…一応ね。



「ええ、無事よ。幸いなことに死者はいないわ。みんな怪我もないから心配はいらないわよ。」


「…そうですか。」



全員の無事が確認できたことで、

乃絵瑠はもう一度、彩花に視線を向けていたわ。



かすり傷一つない綺麗な顔。


体のどこにも傷痕はなくて、呼吸も安定してる。



そんな彩花の様子を眺めながら、

乃絵瑠が私に質問してきたのよ。



「学園長達が治療してくれたんですか?」



…あ~。



やっぱりそう思うわけね。



どうやら乃絵瑠は自分達に何があったのかを把握してるわけじゃないみたい。



だとすると。


あまり情報は期待できないかもしれないわ。



「えっと…それが…ね。私達が発見した時にはすでに治療が終わっていたのよ。全員無傷の状況だったの。」


「…えっ!?」



私の話を聞いて、

乃絵瑠は困惑してる様子ね。



「無傷…ですか?」


「ええ、そうよ。」


「…そんな…はずは…?」



そんなはずはない、ってことでしょうね。


だけど最後まで言葉にはしなかったわ。



それほどまでに動揺してるということよ。



「やっぱり乃絵瑠達は戦闘に敗北して全滅したのね?」


「…あ、はい…。」



何らかの理由で気を失ったわけではなくて、

謎の部隊に攻撃を仕掛けて敗北した乃絵瑠達は圧倒的な実力差によって全滅したということよ。



その時点での乃絵瑠達は間違いなく重傷だったはず。


少なくとも無傷のはずがないわ。



…なのに。



発見時には治療が終わっていたのよ。



もしも乃絵瑠の発言が事実だとすれば、

謎の部隊に救われたとしか考えられないわね。



「一体、何があったの?」


「それは…」



改めて問い掛けてみたことで、

乃絵瑠は覚えていることを話してくれたのよ。



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