現段階で3つ
まあ、あまり詳しい情報は口外できないんだけどね。
だけど。
『とある人物』から希望に関する話を聞いた私達は、
待機していた地点から最も近いマールグリナの町から調査することにしたの。
最初に接触したのは『栗原薫』になるわ。
幸か不幸か、彼女の命が失われる前に何とか救助は間に合ったわ。
まあ、仮に間に合っていなかったとしても、
彼女が死ぬことはおそらくなかったでしょうけどね。
私も全貌を知っているわけじゃないから、
具体的にどういった現象が起きるのかは分からないけれど。
交わされた盟約によって、
彼女の安全は約束されているらしいのよ。
…だからね。
仮に私が全力で攻撃を仕掛けたとしても、
彼女を傷つけることは出来ないかもしれないの。
実際にどうかは試してみないと分からないけれど。
現時点では彼女を保護する立場に居るわけだから、
余計な波風を立てるわけにはいかないわ。
とりあえず今言えるのは、
竜の牙の部暗殺隊によって滅びかけていたマールグリナの防衛に間に合って、
竜の牙の撃退に成功したっていうことよ。
それだけでも十分な成果と言えるでしょうね。
…とは言え。
マールグリナでの戦闘に関しては若干の不満もあったりするわ。
「いくらアストリア王国が滅びたと言っても油断しすぎじゃないかしら?町の防衛すら出来ないほど戦力が足りてないなんて…。」
いくらなんでも弱すぎると思うのよ。
そう思ってしまうからこそ、
牙の考えも推測出来るわけだけど。
「戦力的に最も手薄なマールグリナを制圧して米倉宗一郎と交渉するつもりだったんでしょうね。あの『秘宝』を手に入れるためなら、マールグリナを攻めるのは当然の戦略だと思うわ。」
最も軍事力の低いマールグリナなら、
攻め落とすのは比較的簡単に行えるのよ。
実際ね。
マールグリナに潜入していた50人程度の魔術師によって制圧されかけていたわけだし。
アストリア方面の国境警備隊が全滅したうえに、
魔術師ギルドの戦力まで壊滅。
そのせいで町の防衛能力が失われてしまったんでしょうね。
仕方がない部分でもあるんだけど。
共和国の国内において最も警備が手薄になってしまったのよ。
今回は私達が竜の牙の部隊を発見して撃退したけれど。
もしもあのまま制圧されていたら、
マールグリナは交渉の道具として利用されていたはずよ。
米倉宗一郎が密かに隠し持つ『秘宝』を手に入れる為に。
その為なら竜の牙は手段を選ばないわ。
「3番目の『秘宝』。それがあるから竜の牙も共和国に手出し出来なかったわけだけど…。」
現在の共和国は戦争中で内部の防衛力が低下してる。
そのうえ国内の主力をアストリアで失ってしまったのよ。
さらには軍隊も各方面に足止め状態。
この状況は牙にとって絶好の機会でしょうね。
防衛力の低下した各町を好き勝手に襲えるのよ。
だからこそ余計に面倒なの。
…マールグリナに限らず。
どの町にも牙の暗殺部隊が現れる可能性があるの。
…はぁぁぁ。
ついついため息を吐いてしまうわ。
いつ牙に襲われるか分からない状況で、
その『秘宝』に関しても調べなくてはいけないからよ。
私達の部隊を率いる彼は、
回収しなくても良いって言っていたけれど。
もしも第3の秘宝が竜の牙に渡れば、
私達の立場は今よりも更に危うくなるわ。
アストリア王国の兵器を相殺出来るほどの力を持つ『秘宝』と呼ばれる宝玉。
それらは現段階で『3つ』確認されているけれど。
それぞれを『竜の牙』と『共和国』と『私達』が所持しているのよ。
ただ、ね。
その中でも共和国の秘宝に関してだけはまだ確定していないの。
米倉宗一郎が秘宝の存在を否定しているから。
表向きには『秘宝』が存在していないことになっているのよ。
…だけどね?
米倉宗一郎の経歴を考えれば、
秘宝を所持している可能性が最も高いのよ。
私もまだ生まれていなかった頃に起こった『とある事件』によって、
天城総魔の父である『天城総司』が手に入れた『秘宝』
その行方が分からないわけだけど。
天城総司の死に際に接触した人物は米倉宗一郎だけなのよ。
息子の天城総魔が生きていたことで、
秘宝を所持していた可能性が否定出来ない部分はあるんだけど。
天城総魔はジェノス魔導学園に入学するまで生存が確認されていなかったわ。
魔術師狩りによって死亡したと思われていたから、
天城総魔が『秘宝』を所持している可能性は今まで考慮していなかったのよ。
…だけどね。
おそらく天城総魔は『秘宝』を所持していないはず。
その理由は兵器の大破壊に対して『秘宝』が発動していないからという単純な理由なんだけど。
天城総魔は兵器の大破壊に巻き込まれて死亡したわ。
もしも『秘宝』を所持していたのなら大破壊を防げたはずなのに。
何も出来ないまま死亡したことでアストリアは消滅したのよ。
その理由によって天城総魔が秘宝を所持していないことは明らかになったの。
まあ、結果論だけどね。
今月に入るまで名前を隠して姿を消していた天城総魔がジェノス魔導学園に入学した時点から、
すでに私達は密かに調査を行っていたわ。
『天城』という名前を聞き付けた仲間が学園の内部で調査を行ってくれていたのよ。
だからこそ天城総魔が自らの正体を明かす以前から正体に気付いていた私達は、
天城総魔に関する情報をかき集めて天城総司の息子であるというところまでは調べあげていたの。
でもね。
秘宝に関する情報は見付からなかったのよ。
そういう部分も含めて、
天城総魔が秘宝を所持している可能性はないって判断したわけだけど。
そうなるとね。
やっぱり可能性があるのは米倉宗一郎だけなのよ。
天城総司の親友であり、
共に戦場を駆け抜けた戦友でもある人物。
天城総司が持っていた秘宝は、
米倉宗一郎に託された可能性が最も高いの。
そして、そう思う理由もあるのよ。
かつて竜の牙は天城総司の力を恐れて直接的な戦闘を避けていたわ。
秘宝は欲しいけれど。
天城総司には勝てないって判断していたからよ。
だから竜の牙は『ある作戦』を立てたの。
天城総司を殺して秘宝を手に入れる為に…ね。
アストリア王国そのものを利用する計画を立てたのよ。




