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THE WORLD  作者: SEASONS
4月19日
1111/1212

新たな指令

《サイド:ウィッチクイーン》



…はあぁぁぁぁ。



…疲れるわね~。



…こういう時には何て言えば良いのかしら?



別に不満があるわけじゃないんだけどね。



そこまでは思わないけれど。


少しくらいは休みがほしい感じ?



色々とあって徹夜明けで活動してるから精神的に結構しんどいのよね~。



それなのに。



マールグリナを離脱した私の部隊は、

大急ぎで次の目的地を目指しているところなのよ。



…だから、ね。


…さすがに、ね。



「今回は人使いが荒らすぎじゃない?」



そんなふうに思ってしまったのよ。



「あ…あははは…っ。」



無意識にぼやいていたら、

妹の雪に苦笑されてしまったわ。



「仕方がないよ。今は私達がやらないといけないことだから…」



…まあ、ね。



それは分かってるんだけど。


そうだとしてもよ?



「共和国『全土』を駆け抜けるなんて、普通なら有り得ないでしょ?」



その一点で疲労感が満載なのよ。



通常なら馬車を使っても共和国の端から端まで移動しようとすれば丸々二日はかかるわ。



…にも関わらず。



私の部隊は他の組織からの追跡を振り切ることを考慮して徒歩での移動を行っているのよ。



馬車を使えば車輪のあとが残るから。


馬の蹄の痕跡も無視出来ないの。



そのせいで乗り物の使用を敬遠するしかなかったのよ。



…とは言ってもね〜?



「カリーナの魔女達が復帰したら、追跡を振り切るのは不可能よね?」



いくら戦闘能力に長けた部隊を率いていると言っても。


追跡能力に関して特筆すべき能力を持つカリーナの魔女達を振り切ることは出来なかったからよ。



そのせいで戦闘が発生してしまったの。



本来なら戦うつもりはなかったのに。


彼女達を振り切ることが出来ずに戦闘になってしまったのよ。



隠密活動を心掛けていた矢先での失態だったわ。



それにともなって活動予定が大幅にずれ込んでしまったせいで、

マールグリナの被害を未然に防ぐことが出来なかったのよ。



…って、言っても。



マールグリナの襲撃に関しては割とどうでも良かったから、

過ぎたことを歎くつもりはないけどね。



最終的に栗原薫さえ生きていればそれでいいの。


出来ることなら身柄を確保して手元に置いておきたいんだけど。


あまり過保護になるのもどうかと思うし。


自分自身の意思で行動してもらわないことには意味がないわ。



それに。



そもそもの前提として、

あの子が死ぬことはないはずだから無理に同行させる必要もないのよ。



別の理由で問題はあるとしても、

あの子自身は自由にさせておいたほうが色々と都合がいいの。



…だからマールグリナに残してきたわけだけど。



極論すればね。


他は何人死んでも気にする必要なんてないのよ。



私達にとってはささいな問題でしかないわ。



…ひとまずマールグリナでの任務は終えたわけだから。



あとのことなんてどうでも良いの。



それよりも今は移動が最優先よ。



できる限り急ぎながら共和国を駆け抜ける。


今は共和国の最北東に位置するマールグリナから真逆方向の南西付近にあるセルビナの国境を目指している道中になるわ。



その国境にね。



私達が捜すもう一人の『希望』がいるはずだからよ。



「いっそのこと、一カ所に集まってくれていたら話が早いのにね〜。」



言っても仕方がない不満をぼやいてみると。



「あっ!?お姉ちゃん!!」



雪が慌てた様子で話しかけてきたわ。



「お兄ちゃんからの通信だよ!!」



…はあ?



「またなの!?今度は何なのよ!」



次はどんな面倒事を言われるのかと思いながらも足を止めて雪に振り返ってみる。



部隊の仲間達も足を止めて状況を見守る中で、

ポケットから『精霊』を取り出した雪は手の平の上にちょこんと乗せたわ。



手の平に収まる小さな精霊。



それは『リス』の形を持つ通信系の精霊よ。



雪は補助系の魔術が得意で、

精霊に与えた能力によって遠距離との会話を行うことができるの。



「お兄ちゃん。」



周囲の仲間達にも分かるように通信を行う雪は、

本拠地に置いてきたもう一体の精霊を通じて、

とある人物の声を私達に届けてくれたわ。



『雪。聞こえるか?』


「うん!聞こえてるよ♪」



精霊から聞こえてくる声に雪が笑顔で応えてる。



「話って何?」


『あ…ああ。作戦行動中に申し訳ないんだけど、今から話すことをクイーンに伝えてほしいんだ。』



すでに聞こえてるけどね。



通信できるのは声だけだから。


向こうからこっちの状況まではわからないから、

伝言を頼む形で話は進んでいるのよ。



『計画の修正を行うことにした。クイーンにはジェノスを目指してほしい。常盤成美と接触して千里の瞳を渡してもらいたいんだ。』





…………………………………。





…………………は?




………瞳を渡す?




…冗談でしょ!?



話を聞いた瞬間に疑問を感じてしまったわ。



「どういうことなの!?千里の瞳は唯一無二の貴重な物なのよ!?」


『ん…?ああ、そこにいたのか。聞こえてるなら話が早い。今回の指示は彼女の信用を得るためだ。瞳を常盤成美に預けることで、彼女を説得出来る可能性が格段に高まることになる。』



…可能性って。



「何よそれ?説得に難航しているの?」



…それだと、立場が逆じゃない?



「向こうがお願いしてる立場じゃないの?」


『…すまない。出来る限りのことはしているつもりなんだけど。まだ信用を得られていないんだ。疑心…と言うよりは他のことを考える余裕がないのかもしれないけどね。』



…ああ、まあ、そうね。


…気持ちは分からなくもないけど。



「だけど…それと千里の瞳に何の関係があるのよ?」


『理由はすでに言っただろう?彼女の信用を得る為だ。常盤成美の無事が確認出来れば交渉が上手く行くかもしれない。』



…交渉ね。



栗原薫の救助の時も思ったけれど。



「そこまでする必要なんてあるの?」



どうでも良くない?



そもそも共和国で誰が死のうと私達には何の関係もないのよ。



「千里の瞳よりも重要だとは思えないわ。」


『いや、重要度を考えるのなら彼女のほうが上だ。千里の瞳よりも彼女の能力の方が効果的だからね。牙との戦いを考慮するなら、彼女の能力は他の何よりも重要な価値がある。』



…それはまあ、確かにそうだけど。


…言葉に迷ってしまうわね。



確かに彼女の能力は、

対『牙』戦を考慮すれば重要度が高いわ。



ありとあらゆる攻撃を無効化出来るうえに、

牙が持つ宝玉の効果さえ封じられるからよ。



…だけど。



総合的に考えれば千里の瞳に勝るものはないはずなのよ。



…これがあるから。



今まで牙からも共和国軍からも潜伏することが出来ていたのよ。



それなのに。


切り札を手放すなんて正気じゃないわ。



「そもそもセルビナはどうするのよ?」



今ならまだセルビナに向かうよりもジェノスに向かうほうが近いとは思うわ。



だけど寄り道してる暇はないはずなのよ。



「ジェノスに寄り道した結果として、彼が倒れたら意味がないんでしょ?」


『そうなる前に駆けつけてもらいたいところだけど。どちらにしても常盤成美には接触する必要があるんだ。セルビナの動きも心配だけど、今はジェノスに向かってくれないか?』



…うぅ~ん。



判断に迷うところよね。



距離を考えたらジェノスが先で良いのよ。



北西のマールグリナから南西のセルビナに向かって南東のジェノスに向かうよりは、

時計周りに移動する方が効率は良いの。



…まあ、ジェノスに向かうのはいいんだけどね〜。



「そうなると『あいつ』にも会うの?」


『その辺りの判断に関しては任せるよ。現段階では御堂龍馬と共にジェノスに向かって海を南下しているらしいからね。上手く行けば御堂龍馬とも接触出来るかもしれない。』



…ああ、なるほどね。



「常盤成美と御堂龍馬の両方に話をしてこいっていうことね。そのついでにあいつの面倒まで見なきゃいけないなんて、仕事が多くて泣けてくるわね。」


『…ははっ。本当に忙しくなるのはこれからだよ。』



わざとらしく嘆いてみたんだけど。


向こうは向こうで苦笑している様子だったわ。



『5人の希望を導くこと。それが出来なければ交渉は失敗することになるんだ。』



…はあ。


…交渉ね。



「そっちはそっちで難航してるわけね。」


『…現時点では会話が出来ないからね。』



まあ、そうでしょうね。



仮に私が『その立場』だとしてもどうにもならないと思うわ。



『…だからこそ、栗原薫にしてもセルビナやミッドガルム方面にいる彼らにしても、そうそう簡単には死ねないはずだからね。』



…まあ、それもそうね。



残された希望によって守られているから、

多少順番が前後しても大丈夫なはずなのよ。



「ったく…分かったわよ。とりあえず、ジェノスに向かえば良いんでしょ?」


『ああ、お願いするよ。そして常盤成美に千里の瞳を預けてから御堂龍馬を導くこと。それが最優先事項になる。』


「ついでにもう一つの課題も調べて来るけど。回収はしなくても良いのよね?」


『いずれ協力しあうことになるんだ。今はそっとしておけばいい。』


「その前に『牙』にやられても知らないわよ?」


『そうさせない為に護衛をつけているんだ。』


「正直、不安だけどね。」



…でも、まあ、何もかもが今更かしら?



今回に限らず、牙はずっと活動していたのよ。


だからその気になればいつでも暗殺はできたはず。


そうしなかった以上、

ここで焦っていても仕方がないわ。



今は計画の修正を受け入れるしかないということよ。



「とりあえずジェノスに向かうわ。行くのは私一人でも良いんでしょ?」


『ああ、頼む。』



…はいはい。



「それじゃあ、行ってくるけど。そっちもちゃんとやりなさいよ?」


『努力はしてるよ。』



…だとは思うけどね。



結局、進展がないまま通信は終了してしまったのよ。



…う~ん。



「まさかジェノスにまで行くことになるとはね~。」



南の方角に視線を向けてから雪に視線を戻してみる。



「ここからしばらくは別行動みたいね。私はジェノスで仕事を終えてからセルビナを目指すわ。」


「うん。」


「みんな聞いてたわね?私はジェノスに向かうわ!みんなは雪と一緒にセルビナへ行軍!いいわね?」


「「「「「了解ですっ!!!」」」」」



私の問い掛けに不満を訴えるような不届き者は一人もいなかったわ。



…ふう。



分かってはいるけど。


頼もしい限りよね。



とりあえず全員の意思を確認してから、

雪にあとを託すことにしたのよ。



「それじゃあ、よろしくね。」


「うん♪お姉ちゃんも気を付けてね♪」


「大丈夫よ。安心して任せなさい!」



部隊から離脱して、南に向かって走り出す。



目指す目的地はジェノスよ。



出会うべきは『常盤成美』と『御堂龍馬』



…そして。



『あいつ』になるわ。




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