商店街
《サイド:常磐成美》
そろそろ午前11時になるそうです。
随分長くお散歩をしているような気がするんですけど。
それでもまだお昼にはなっていませんでした。
…何かもが不思議だよ〜!!
ジェノスの港で初めて海を目にしたあとも、
お母さんと二人で散歩を続けていました。
町の景色と風景。
あらゆる『モノ』全てが初めて目にする世界です。
どこまでも続く広い世界と果てしなく広がる青空。
照り付ける太陽の日差しは眩しくて暖かくて、
瞳に映る景色のどれもが綺麗で、
町中の騒音や賑わいさえも心を弾ませてくれました。
こういう状況を笑顔が溢れる幸せな日常というのでしょうか?
すれ違って通り過ぎて行く人達。
男性も女性もいて、
子供もお年寄りもいて、
あらゆる人々が通りを行き交っています。
のんびりと買い物を楽しむ人達や先を急ぐ人達もいて、
目にする全ての人々を楽しく思いながら眺めていました。
そうしているだけで、
平穏な時間が過ぎてしまいます。
「うわぁ~!凄いね、お母さん♪人が沢山いるよ♪」
楽しくて楽しくて、
無邪気にはしゃいでしまいました。
本当に沢山の人がいるからです。
今日一日の間に見てきた中でも、
一番に思えるくらい人が多いような気がします。
「ここから先は商業区域になるのよ。」
「しょ~ぎょ~?」
聞いたことがあるような気はします。
でも、それが何なのか、
はっきりとは分かりません。
「何をするところなの?」
「う~ん。何かをするというよりも、沢山のお店が並ぶ地域ということよ。」
…へ~。
…そうなんだ?
港を離れてから向かったこの場所は、
ジェノスの商業区画だそうです。
「ここからまっすぐに行くとジェノスの北部まで行けるのよ。」
「北側には何があるの?」
「そうね~。基本的には学園しかないから他に何かがあるということはないわ。住宅街が広がっているくらいだけど、他の町に向かう時には通ることになるでしょうね。」
…他の町?
「町の北側に行かないと、町から出られないの?」
「そういうわけじゃないけれど。他の町に向かう馬車に乗るためには、北門か西門のどちらかに向かうのが一般的なのよ。」
「ふ~ん。そうなんだ~?」
他の町に行きたい時には、
北門か西門のどちらかで馬車に乗ればいいそうです。
「南は海だよね?」
「ええ、そうよ。」
「東は?」
「東も海よ。ジェノスの東側から南側までは全部海に面しているから。」
…なるほど〜。
だから北と西からしか町の外に出られないそうです。
「町の外が気になるの?」
「ん〜?」
どうなのかな?
…見てみたいような。
…見ても分からないような。
どちらにしても一人で行きたいとは思いません。
そもそも行きたいところなんてありませんし。
一人では絶対に遠出なんて出来ないと思います。
せめてお父さんかお母さんがいてくれれば、
出かけることが出来るとは思いますけど。
無理を言ってまで行かなければいけない場所なんてありません。
「分からないから今はまだいいかな?」
「そう。とりあえず、この大通りはジェノスで一番大きな商店街だから、覚えておくと色々と便利なはずよ。」
…そうなんだ?
「ここでお買い物ができるの?」
「ええ、そうよ。何か欲しい物はある?」
「ん~?」
考えてみても何も思い浮かびません。
そもそも何が売られていて、
何が買えるのかも分からないからです。
「分からないから、見るだけでいいよ~」
「ふふっ。そうね」
何故かお母さんに笑われてしまいました。
でも、本当に欲しい物が何もないので、
今はこうしてお母さんと一緒にお出かけ出来るだけで十分だと思います。
「行こ~」
「ええ」
どこまでも続く商店街をお母さんと歩きました。
細かい抜け道や通りは幾つもあるそうなのですが。
東側の『サンライズ(日の出)ロード』と
西側の『サンセット(夕焼け)ロード』。
南北に続く2つの道が大通りと呼ばれていて、
二本の大通りに挟まれる中央と左右両側に建ち並ぶ幾つものお店の数は300を越えるそうです。
道に沿ってまっすぐに並ぶお店の数だけでも100を超えていて、
3列に並ぶお店の全てを見て回るだけで一日を費やしてしまうくらいに大きな商店街だと
お母さんは言っていました。
「すごい!すご~い!!」
あまりの混雑に驚いてしまいます。
今日は平日の木曜日で、お昼前の時間です。
それでも商店街にはジェノス中から買い物に来る人がいるみたいで、
驚くほど多くの人々が集まっていました。
もちろんここ以外にも商店街は幾つもあって、
お父さんとお母さんがお店を出しているケーキ屋さんは別の商店街にあるそうです。
…なので。
ここでお父さんに会うことは出来ないんですけど。
それでもお母さんは私の為にと考えて、
ジェノスで一番大きな商店街に案内してくれたそうです。
「迷子にならないように気を付けるのよ。」
「うん♪気を付けるよ〜♪」
もしもはぐれてしまったら絶対にお家に帰れないので、
お母さんの手をぎゅっと握り締めて頷きました。
「お母さんも手を離さないでね。」
「ええ」
笑顔でお願いしてみた私を見て、
お母さんも微笑んでくれました。
「ちゃんと傍にいるわ。」
「うん。行こう!お母さん♪」
お母さんの手を引きながら足早に歩き出します。
早く色々なお店を見てみたかったからです。
「ここには何があるのかな~?」
初めて訪れた商店街で、
お母さんと一緒にお店を見て回ることにしました。




