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THE WORLD  作者: SEASONS
4月4日
110/189

どちらが勝っても

《サイド:美袋翔子》



今回の試合場はCー1番みたい。



私と総魔の試合で使った試合場は今も崩壊したままだから使えないのは当然なんだけど。


なるべくそちらには視線を向けないようにしているわ。



まあ、死にかけたからという理由もあるし。


思い出すのが怖いという理由もあるんだけどね。



でも今はそういう個人的な気持ちがどうこうよりも、

総魔と敵対していたっていう過去があの場所にはあるから見たくないって思ってしまったのよ。



…だけど今は、それよりも、ね。



かつての戦場とは別の試合場になるDー4番。


少し離れた場所にある試合場も無残に崩壊しているのが見えてしまったわ。



私がここにいた時からまだそんなに時間が過ぎてないはずなのに。


別の試合場がボロボロに崩壊しているのよ。


床が砕けて大きな穴が空いてる。


地面の下がどうなってるのかは見えないけれど。


試合場があったはずの場所に『試合場が存在してない』のよ。


試合場を包み込む結界まで吹き飛ばしてしまったのか、

試合場の周辺まで崩れかけているのが見えるの。



その理由はもう、考えるまでもないわよね。



あの場所で由香里が敗北したのはすぐに分かったわ。



…私達が知らない間に。



あの場所で総魔は戦っていたのよ。



私に次ぐ成績だった由香里と戦っていたの。



そして当然のように勝ったんでしょうね。



その結果があの場所にはあるのよ。



正直に言ってすごいと思うわ。


私には真似できないことだから。



…はぁ。



崩壊した試合場を見てしまったことで、

ため息を吐いてしまう。



って、別に不満があるわけじゃないわよ。


由香里の容態は気になるけどね。



だけど生死に関わるほどの状態じゃないことは間違いないと思ってる。


もしもそこまでの大事になっていたらさすがに報告が来てるはずだし、

命に関わるほどの問題が起きていたのなら学園としても総魔の試合は認められないでしょうしね。



私もそうだけど、

由香里も死んではいないはず。



まあ、死ななければそれでいいっていう問題でもないけどね。


ひとまず私はすでに健康そのものだけど、

由香里はどうなのかしら?



総魔は治療してあげたのかな?


でも、それだとまた魔力が減っちゃうから治療はしてないのかな?



どちらが正解かはわからないけど、

由香里はたぶん無事だと思うわ。



だから今はまだ総魔の行為が咎められてないんじゃないかな。


まだ誰も総魔に危険性を感じてないみたいだし。


由香里が無事なのは間違いないはずよ。



そう思えるから総魔の行動に不満を感じたりなんてしないわ。


そもそもそんな理由で溜息を吐いたわけでもないしね。



そうじゃなくて、もっと別の理由があるのよ。



どうすれば総魔と仲直りできるのかな?っていう部分で悩んでいるの。



…総魔はどう思ってるのかな?



私としては総魔と仲良くしたいし、

もう二度と戦う事はないと思ってる。



お互いに競い合うための試合ならしてもいいと思うけど、

これまでのように立場の違いで対立するような戦いなんてもう二度としないって決めたのよ。



少なくとも私から総魔に戦いを挑むつもりは全くないし、

総魔に嫌われるようなことなんて絶対にしたくない。



…でも、それはね。



別に総魔が怖いとか、

そんなつまらない理由じゃないわ。



この気持ちは何て言えば良いのかな?



自分でもよく分からないけれど。



…たぶん。



『憧れ』って言っても良いと思う。



総魔の強さとか、優しさに、惹かれたのかな?



なんだかんだ言っても、

私の話を聞いてくれるしね。


ちゃんと私と向き合ってくれる人だから、

絶対に傷つけたくないって思うのよ。


義務とか役目とかじゃなくて、

仲良くなりたいって思えたの。


心から、思えたのよ。



…だからもう。



総魔とは対立しないって心に誓ったの。



私を遥かに上回る総魔の実力は魔術師として理想的な存在でもあるしね。


勝てないと分かっていても、

追いつきたいって願う自分がいるの。



そんなふうに思えたから。


私は私の道を選んだのよ。



ただただ総魔に近づきたくて。


みんなや理事長と決別する道を選んだの。



…だから、ね。



今の私に負い目はないわ。


理事長と決別したことで堂々と向き合えるから。


今の私が望むことは一つだけ。



総魔に私自身を認めてもらう事。



ただそれだけなのよ。



もちろんそれは単純な恋愛感情とは違うと思う。


そういうことじゃなくて。


魔術師としての目標であって、

一つの到達点に思えるの。



私が目指しているのは総魔だって思えたのよ。



そんなふうになりたいって思えたの。



だけど沙織は…どう思うのかな?



私の視線が総魔と沙織に交互に泳ぐ。


これからどんな試合が始まるのかな?


その考えだけで頭の中が一杯になってしまうけれど。


どちらが勝っても喜べないと思う。



沙織は親友で、総魔は命の恩人だから。



どちらが勝っても嬉しいけれど。


どちらが負けても悲しいから。


どちらを応援するとも言えない心境だったわ。



でも、ね。


それでも。


もしも何かを願うとしたら。



沙織が無事に助かる結末が理想、かな?



私のように苦しむ姿なんて見たくないわ。


勝つにしても負けるにしても、

沙織には無事でいて欲しいと思うの。



そんな複雑な心境で見守る今回の試合だけど。


今回は前もって公表されていた私の試合とは少し状況が違うみたい。



沙織との試合は会場側からすれば突発的に行われるものだから観客が少ないのよ。



係員や審判の人数はそれほど変わらないんだけど。


見物の生徒は一人もいないようね。



今この会場には総魔と沙織と私と真哉のたった4人の生徒しかいないわ。


普段ならまだ他にも何人かの生徒が会場にいる時間なんだけど、

今日は珍しく他の生徒は一人もいなかった。



まあ、一部の生徒は総魔が戦闘不能に追い込んでるから来たくても来られないっていうのが実情かもしれないけどね。



他に行われる試合がないせいか、

しんと静まり返る会場。


試合開始が近づくとともに沙織の顔からは笑顔が消えていく。



気持ちを切り替えてるのかな?


一変して真剣な顔つきに変わったのよ。



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