願わくば
《サイド:米倉美由紀》
…はあ。
沙織と翔子が行ってしまったわ。
もうすぐ試合の時間だから仕方のないことなんだけど。
取り残された側としては感情のやり場に困るわね。
「それで?あなたはどうするの?」
「…さあ、な。」
最後に残った北条君に問いかけてみたんだけど。
北条君はあやふやな返事だけを残して二人の後を追って歩きだしたわ。
その結果として。
室内には私だけが残されてしまったのよ。
「はあ…。」
ため息が止まらないわね。
疲れを吐き出すかのように、
深いため息を何度も何度も繰り返してしまう。
…どうしようかしら?
私以外に誰もいない室内。
一人きりになってしまった私は、
椅子に腰を下ろしてから頭を抱え込んでしまったわ。
「対策を…」
小さく呟いてみるけれど、
どこから手を付ければいいのかも分からないわね。
…前途が多難すぎるのよ。
天城総魔と学園最上位の翔子達。
彼らに対抗する手駒を用意するとなるとどう考えても手札が足りないからよ。
彼我の戦力に差がありすぎるの。
もはや学園の総力なんて言ってる場合でもないでしょうね。
そもそも学園を二つに割るような抗争でも起きようものなら、
その時点でこの国の未来は迷走してしまうわ。
管理できない力が存在するなんて情報が表沙汰になれば、
これまでの外交の努力が全て水泡に帰すことになってしまうからよ。
…本当の、本当に。
緊急事態にならないことを、
ただただ祈るしかない状況になってしまったわね。
…はぁ。
入学式の時には気楽な態度でいたけれど。
まさかこんなことになるなんて思わなかったわ。
だけど。
今となってはもう。
この学園の命運は天城総魔の気持ちに左右されてしまう状況にまで来てしまったと認めるしかないのよ。
「…願わくば、味方であってほしいわね。」
心の底から願ってしまうけれど。
だけどそんな私の気持ちなんて関係なく。
時計の針は午後6時を示そうとしているわ。
第1検定試験会場において。
天城総魔と沙織の試合が始まろうとしているのよ。




