迫る時間
《サイド:美袋翔子》
…はあ、良かったぁ。
これで総魔と敵対する理由がなくなったのよ。
総魔と全力で戦って。
総魔という人物を知って。
総魔に救われた命だから。
これ以上、総魔に迷惑をかけるようなことだけはしたくなかったの。
まあ、調査から手を引いたからといっても、
私に出来ることがあるかどうかはわからないけどね。
だけど。
これまでのことに負い目を感じながら総魔に接する事はしたくなかったの。
次に会う時は正々堂々と会いたいって思ったのよ。
そんな私の気持ちを知らない理事長は思いっきり頭を悩ませてるみたいだけど。
この気持ちは変えられない。
もちろん理事長に対してちょっぴり少し申し訳ない気持ちもあるけどね。
それでも私は私の立場を守るよりも、
総魔に恩返しがしたいって思ったのよ。
…何ができるかはわからないけれど。
そもそも必要としてもらえるかどうかすら疑問だけど。
それでも何かしたいって思ったの。
だから私はみんなから離れる道を選んだの。
…ごめんね、沙織。
沙織には心配させてしまうと思う。
…というか。
すでに不安にさせてる実感はあるけど、ね。
だけど離れていこうとする私を引き止めようとはしなかったわ。
ただそっと見守ってくれているような、
そんな感じに思えたの。
…でも、どうなのかな?
沙織も総魔と話をしたんだよね?
その会話の内容を聞きたいと思うけれど。
ゆっくり話を聞く暇はないわ。
こうしている間にも刻一刻と過ぎていく時間は止まらないから。
気が付けば残り時間があとわずかに迫っているのよ。
「ねえ、沙織?」
呼び掛けてみると沙織の視線が自然と時計に向いたわ。
そして沙織の表情が再び緊張の色に染まってしまったのよ。
「そろそろ行かないと…ね。」
礼儀正しい沙織にしては珍しいことに、
理事長への挨拶も忘れて退室してしまったわ。
…う~ん。
相当、緊張してるみたいね。
このまま沙織を一人にはさせられないし。
「私も行くわ!」
沙織の後ろ姿をすぐに追いかけることにしたのよ。
その結果として。
急いで沙織を追った私も理事長室を出たことで、
室内には理事長と真哉だけが残ったの。




