幸せな結末
《サイド:天城総魔》
優奈が落ち着きを取り戻してきた直後に。
これまで続いていた振動の規模が一気に拡大して施設そのものが崩壊し始めた。
刻一刻と規模を増す地震による大きな揺れ。
その振動によって、
『バキバキバキ!!!!』と
地下室の天井がひび割れ始める。
「こうなると崩壊は時間の問題だな。」
このままでは兵器が発動するよりも先に、
崩落した天井や施設そのものによって押しつぶされてしまうだろう。
…だが。
兵器が潰れたところで兵器の発動は止まらないはずだ。
たとえ施設が崩壊しても兵器の逆流は止まらない。
…あと数分の命だな。
動き出した流れは止められないと思いながら、
光を放ち続ける兵器へと視線を向けてみる。
兵器はまだ稼働している様子だ。
壊れても止まりはしないはずだが、
今ならまだ兵器に干渉できるかも知れない。
…どうする?
…まだ間に合うか?
微かな期待を感じながら、
兵器に手を伸ばしてみる。
そして残り僅かな時間で龍脈の力に干渉してみた。
…いけるか?
『バチバチ!』と、
炸裂音を響かせながらも俺の支配下に落ちた兵器は、
ある程度までなら思い通りに動かせそうな気がした。
…どうだろうか?
この兵器が発動する前に間に合えば良いのだが。
悪あがきかもしれない…とも思う。
…とは言え。
結果がどうなるかは不明だが、
やってみなければわからない。
そして今ならまだ間に合うはずだ。
『とある目的』の為に。
龍脈に干渉して目的のモノを探してみる。
受け継がれる意志は消えはしない。
お前達が残した意志を消させはしない。
願いを込めて龍脈を探る俺の感覚が、
各地に散らばった『希望』を捜し当てた。
…まだ、間に合うか?
今ならまだ希望を残せるはずだ。
守るべき想いまで消させはしない!
その願いを叶えるために。
優奈に協力を求めることにする。
「優奈。最期に一つだけ頼みがある。」
「はい♪私に出来ることでしたら何でも言って下さい。」
優奈は笑顔で頷いてくれていた。
何をするかを確認するまでもなく、
俺の願いの全てを受け入れてくれる様子だった。
「少し難しい願いになるが…。」
笑顔で引き受けてくれる優奈の耳元で囁く。
「………だ。」
最後の願い。
その願いを聞いた瞬間に優奈の表情は驚きに変わっていた。
「そんなことが…出来るんですか?」
…どうだろうな?
やってみなければ分からないとしか答えようがない。
だが、何もしなければ結果も出ない。
例え失敗が見えていたとしても、
実行せずに成功することなど何もないからだ。
「俺が道を開く。優奈はただ願えば良い。『幸せな結末』を…な。」
「そう…ですよね。願うくらいなら、してもいいですよね?」
俺の願いを受け入れて、
優奈も兵器に手を伸ばしてくれた。
「間に合えば良いですね。」
再び微笑みを取り戻した優奈が龍脈への干渉を始める。
「魔力だけは十分にありますから不可能ではないと思いますけど…。成功するかどうかは運次第でしょうか?」
…運か。
正直に言えば、あまり好きな言葉ではないな。
「運に頼るつもりはない。願いを叶える奇跡の力は常に自分でつかみ取るものだ。」
運に頼るようでは願いは叶えられない。
願いを叶えるためには、
常に努力し続けるしかないからだ。
だからこそ俺は優奈に『道』を開く。
「希望があれば人は生きて行ける。これが俺達に残せる最期の『希望』だ。」
「はい!」
しっかりと頷いてから、優奈が力を解放する。
光り輝く優奈の手。
俺の託した『願い』を受け取った優奈は、
自らの力で残された人達の為に『希望』として残してくれた。
「これで…叶うはずです。」
「ああ、そうだな。ギリギリだったが、間に合ったようだ。」
願いと希望を遺した直後に、
『バキバキ!!!』と天井が崩れだした。
…ここで時間切れだ。
降り注ぐ石材を眺めながら最期の時を受け入れる。
「…ここまでだな。」
死を覚悟したことで、
悠理との約束を果たす為に最期の瞬間まで優奈の体を強く…強く抱きしめた。
「共に逝こう。」
「…はい♪」
轟音と共に砕け散る天井の石材が俺と優奈に降り注ぐ。
残り時間はホンの数秒。
石材の破壊は簡単だが、
兵器の爆発は避けられない。
だから俺はそっと瞳を閉じることにした。
「さらばだ、優奈。」
最期に告げる言葉に、
優奈は優しく答えてくれる。
「お疲れ様です。総魔さん。」
その言葉が優奈の最期の言葉だったように思う。
優奈は死を迎える最期の瞬間まで笑顔を残して、
俺と共に…この世を去った。




