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THE WORLD  作者: SEASONS
4月18日
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気付く想い

《サイド:深海優奈》



「すごく…嬉しかったんです。悠理ちゃんが心配してくれたことが…ミルクが鳴いてくれたことが…。すごく、嬉しかったんです。」



総魔さんの温もりを感じながら。


総魔さんの腕に抱きしめられながら。



私は最後の最後で『幸せな気持ち』に包まれました。



「私は幸せです。最期に悠理ちゃんの声が聞けたから…。そしてミルクの声が聞けたから…。それだけで幸せなんです。」



本当に幸せだと思えました。


だから私は涙を流してしまったんです。



もちろんこれは絶望の涙ではなくて喜びの涙です。



例えたどり着く結末が『死』であったとしても、

この気持ちさえあれば十分だと思えるほどでした。



「私は幸せです。みんなの想いに応えることが出来たから…。共和国に住む大切な人達を守ることが出来たから…。だから私は幸せです」



そう思えたから私は涙を拭いました。



「…総魔さん。」


「…どうした?」



私を見つめてくれる総魔さんに、

精一杯の笑顔で感謝の想いを伝えたいと思います。



「最後まで一緒にいられて良かったです。総魔さんと一緒にいられたから、私はみんなの声を聞くことが出来たんです。総魔さんが私を必要としてくれたから、私は最期まで頑張れたんです。だから…だからこれだけは言わせてください。」



この想いだけは知っていて欲しいんです。



「ありがとうございます、総魔さん。総魔さんと出会えたから私は精一杯生きることが出来ました。総魔さんと出会えたから、今もこうして笑うことが出来るんです。総魔さんと出会えたから…私は人を好きになれたんです」



今まで私は吸収という力によって孤独な人生を歩んできました。



だからもしも悠理ちゃんと出会わなければ…?


もしも総魔さんと出会わなければ…?



私は孤独のままだったかもしれません。



…ですが。



悠理ちゃんと出会えたから。


総魔さんと出会えたから。



私は笑顔を取り戻せたんです。



そして心から笑うことが出来るようになったんです。



…と、同時に。



想いや感情を伝える方法を知ったんです。



悲しい時に我慢するのではなくて、

誰かの傍で泣いてもいいことを知りました。



楽しい時に孤独を感じるのではなくて、

共に笑うことの喜びを知りました。



辛い現実から逃げるのではなくて、

現実と向き合って立ち向かう勇気を知りました。



…悠理ちゃんがいてくれたから。


…総魔さんがいてくれたから。



私は強くなれたんです。



人を信じることの喜びを知って、

誰かの為に戦うことの意味を知ったんです。



ただ泣くことしか出来なかった私が、

今はこうして微笑むことが出来る。



…それが成長なんだと思います。



絶望を知った分だけ、

喜びを感じることが出来るんです。



悠理ちゃんが残したくれた最後の想い。


その想いが私の心を幸福で満たしてくれました。



「…ありがとうございます。総魔さん。」


「ああ…良く頑張ったな、優奈。」



繰り返す私の言葉を聞いて、

総魔さんも笑顔で答えてくれました。



そして微笑んでくれる総魔さんの表情を見て、

私はようやく自分の気持ちに気付いたんです。



…たぶん。



そういうことですよね?


きっと、そういうことなんですよね?



それは今となっては叶わない想いかもしれません。



…ですが、それでも。



それでも私は心の中で想いました。



…総魔さん。



私は総魔さんのことが…きっと。



その言葉の先を総魔さんに伝えたいと思ってしまいます。



ですが、それは出来ません。



私も聞いてしまったからです。



総魔さんの気持ちを。


そして翔子先輩の気持ちを聞いてしまいました。



『大好き』だと伝えた翔子先輩の想いに、

『愛』という言葉を返した総魔さん。



二人の想いに私が入ることは出来ません。



翔子先輩のことも。


総魔さんのことも。


私はどちらも大好きです。



だから二人の想いを壊すことは出来ません。



…だから。



だから私は私の想いを心の中にしまうことにしました。



…言葉にはできないから。


…伝えることはできないから。



だから、総魔さん。



『私も総魔さんのことが好きです。』



言葉には出来ない想いで、

決して伝えられない想いですが。



それでも私は、自分の心に気付いてしまったんです。



人との関わりを恐れて、

孤独に生きてきた私が初めて人を『愛した』こと。



この想いだけは、

私のたった一つの『真実』なんです。



だから例え届かない想いだとしても、

この気持ちだけは大切にしたいと願います。



…総魔さん。



例えこの気持ちが伝えられなくても


例え叶わない想いだとしても。



それでも…想い続けても良いですか?



心の中で問い掛ける想い。



決して返って来ない返事を望みながらも想いを込めて、

総魔さんに問い続けたいと思います。



総魔さんと出逢えたこと。


総魔さんと過ごした日々。


総魔さんと迎える最期。



そのどれもが私の大切な思い出です。



だから総魔さんの傍で。


総魔さんに抱きしめられながら迎える最期なら私は幸せです。



…だから。


…だからせめてこのまま。



総魔さんを想い続けても良いですか?



最期を迎えるその時まで、

私も総魔さんを好きでいても良いですか?



言葉にして伝えたい想いですが、

決して口には出さずに最後までこの想いを心にしまいました。



…総魔さん。



いつも泣いてばかりいた私を最後まで見守ってくれたことを私は絶対に忘れません。



いつも戸惑ってばかりいた私を最後まで導いてくれたことを私は絶対に忘れません。



いつも悩んでばかりいた私に優しく微笑んでくれたことを私は絶対に忘れません。



心の中で総魔さんを想う幸せ。



大好きな人の腕に抱きしめられながら、

大好きな人の胸に寄り添いながら、

私は最期の瞬間まで総魔さんを想い続けました。



…総魔さん。







『私は…深海優奈は…世界中の誰よりもあなたのことを…。』







決して言葉に出来ない想いですが、

その想いを心に秘めて総魔さんに呼び掛けてみました。




「…総魔さん。」


「…どうした?」




優しく問い返してくれる総魔さんの笑顔を見つめながら、

生涯で最高の笑顔を浮かべました。




「私は『幸せ』です。」




今の私に伝えられる精一杯の気持ちを言葉にしたことで、

総魔さんも優しく微笑みを返してくれました。



「ああ、そうだな。悪くはない最期だ。」




…はい。




そうですよね。




悪くないと言ってくれた総魔さんの言葉が聞けたことで、

死を迎える最期の瞬間まで微笑み続けていようと思えました。



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