反転
共和国を襲うはずだった龍脈の力がついに逆流した。
そして反転した龍脈の力によって、
施設の周辺地域一帯が激しい地震に襲われることになった。
今回の地震は王都や砦とは比べものにならない振動だ。
だからだろうか?
その振動に耐え切れなかったのだろう。
「…っ…ぁ…っ!?」
優奈の声にならない悲鳴が地下室に小さく響いた。
立っていられないほどの振動によってふらついてしまう優奈だが、
それでもこの振動はまだ『兵器の暴走』による力の予兆にすぎない。
本来の目標を強制的に変更された兵器が、
共和国ではなくて俺と優奈がいる施設そのものを崩壊させようとしているからだ。
32の兵器が一斉に活動を始めたことで発生した強大な振動が施設を襲う。
そして急激に拡大する振動が大地震となってアストリア全土へと広がって行く。
震源地となる施設の揺れは王都や砦の被害とは比べものにならないほどの揺れとなり。
俺と優奈は振動に耐え切れずに、
共にその場に倒れ込んでしまうほどだった。
「くっ!優奈、大丈夫か…っ?」
問い掛けながらも優奈の小柄な体を抱き寄せる。
悠理との約束を果たすために強く抱きしめたのだが、
優奈はゆっくりと小さく頷いてくれていた。
「…はい…。何とか…。大丈夫…です…。」
言葉を詰まらせながら答える優奈だが。
優奈は地震の影響など気にしていないかのように必死に涙を堪えながら俺の体に抱き着いてくる。
何も言わず。
何も語らず。
力一杯に抱き着いている。
そしてただ静かに。
涙を流しながら、
何らかの悲しみを堪えている様子だった。
「…どうした?」
問い掛けてはみたが、
答えを聞く前に可能性に気付いた。
「まさか…?優奈…お前にも聞こえていたのか?」
「…は…い…。」
確信をもって問い掛けてみたことで、
優奈は掠れるような声で答えてくれた。
「全部聞こえていました…。翔子先輩の声も…みんなの声も…悠理ちゃんの声も…そしてミルクの声も…全て聞こえました。」
失ってしまった命が残してくれた最後の想い。
その想いは優奈にも届いていたらしい。
「…悠理ちゃんは最後まで私のことを心配してくれていたんです。ミルクも…私のせいで死んでしまったミルクも…っ。」
悠理が残した想いとミルクが届けた声。
それは優奈の心にも届いていたようだ。
この地に遺された優しい想いは、
優奈の心にも届いていた。
「…私…っ。何も、してあげられなかったのに…なのに…っ。悠理ちゃんも…ミルクも…私のことを…想ってくれて…っ…!!」
あふれる涙。
込み上げる想い。
優奈は悠理とミルクの想いを感じ取ったことで、
心からの幸福を感じている様子だった。




